時の歯車 1
ABC
DEF
GHI
JKL
MN
今日はオレ達、里内待機。 お呼びがかかったら、いつでも出られるようにはしているケド!
イルカ先生の作る、おみそ汁と炊きたての白ご飯の匂い。 だけどまだ起きる訳にはいかない。
オレ達の狸寝入りは、もちろんバレてるヨ? だから・・・・ そろそろ先生が起こしに来てくれる。
「おはよう、いるかせんせー、デコちゅーしてー。」
「ん・・・ ボクもー、デコちゅー、プリーズ。」
「はいはい、まったく・・・・ どこの甘えんぼさんですか、いつまでたっても・・・・」
オレ達の朝は、イルカ先生からの、優しいオデコキスで、スタートすると決めている。
ナルトが自来也様と修行の旅に出てから、それはそれは甘い生活を、満喫している。
イルカ先生に甘え放題で、先生も甘やかし放題。 ヒマがあったらイルカ先生とスキンシップ。
オレ達は先生が大好きだから。 ベッタリ甘えて、甘やかす。 そんな幸せな充実した毎日。
「あ、そうだ、今日遅くなります。 新入生の受け入れで、打ち合わせがありますから。」
「わかった。 イイ子でお留守番してるから、ちょっとでも早く帰ってきてネー。」
「アフターの飲み会は、禁止です。 あんまり遅いと、迎えに行っちゃいますよ?」
「ぷっ! あははは、この姿をみんなに見せてあげたいですよ! じゃ、行ってきます!」
冗談。 こんな姿、イルカ先生にしか見せないヨーダ、ね、テンゾウ? くすくす。
ずっとナルト達に、イルカ先生を取られてた。 ・・・・てか、オレ達が貸してあげてたダケ!
今はお邪魔ムシ達はいなくなったから、思う存分、あの優しい手を独占中。 オレ達だけの先生。
実はずーと前に、甘えたコトがあるんだ。 だから先生の手が、どれだけ優しいか知ってたのヨ。
「ボク、いつも今日かも、もしかしたら、明日かもって、気が気じゃないです・・・・。」
「うん・・・・ だんだんあの時の、イルカ先生になって来た気がするヨ。」
「・・・・・やっぱりそう思いますか? 昨日ボク達がつけたキスマーク・・・・。」
「オレもハッとした。 先生の体洗ってる時、この散らばり方見覚えある、って思ったヨ。」
いつかその日が来る事は、予想している。 だってオレ達の体験したコトだから、間違いない。
でも、頭に心が追いつかない。 イルカ先生が、オレ達の前からいなくなるなんて、激痛だ。
あの時と同じくらい、胸が苦しい。 今回は、恐ろしい不安もプラスされている・・・・
「あ・・・・ ボク、お呼びがかかりました、暗部の式です。」
「ん。 まあ、お前なら心配してないけど、気を付けて行って来い。」
「はい。 じゃ、行ってきます。 ・・・・・何かあったら、すぐに呼んで下さいね?」
「了解。 約束する。」
来るべき日に備え、オレ達は口寄せの巻物を、任務に持って行く。 互いを呼び出せるように。
覚悟は出来てても、すぐに知っておきたいし、ひとりで耐えるなんて・・・・ 絶対、無理だ。
そう、近々イルカ先生は、ここからいなくなる。 わかるんだ、もうすぐだって。
だから今の内に、メイッパイ甘える。 ココにいるオレ達への愛情が、強ければ強いほどイイ。
あのセリフを言ってもらう為に。 オレ達が泣いて諦めたあの言葉を、先生の口から言わす為に。
「カカシッ!! 今すぐ火影室へ行けっ!! なにがあっても取り乱すんじゃねーぞっ?!」
「?! ・・・・・・今日なのか・・・・・。 わかった、その前に・・・・ 口寄せの術っ!!」
「今、忍犬呼び出してる場合かっ! なにやって・・・・?! ・・・・・テンゾウ??」
「・・・・・ふう、グッドタイミングです先輩。 帰還し始めたところでした。」
「おいおい、どうなってるんだ? まぁ、ちょうどいい、ふたりとも火影室へ行け、はやくっ!」
「・・・・アスマさん、知らせてくれてありがとうございます。」
「行くよ、テンゾウ。 ありがとネ、 アスマ。」
「お、おう・・・。 ・・・・妙に落ち着いてやがんな、アイツら・・・・。」
オレは、ちょこっと里内の揉め事を解決して、上忍待機所でイチャパラを読んでた。 いつものように。
そこへアスマが血相変えて飛びこんできた。 今、オレ達が取り乱すコトといったら、ひとつだけ。
イルカ先生だ。 愛弟子が里を抜けようが、一時七班を解散しようが、そんなの大したコトじゃない。
イルカ先生に何か起きたら、オレとテンゾウは傍目にわかるぐらい動揺すると、アスマは知ってる。
だからピンときた。 約束通りテンゾウを口寄せする。 とうとう、この日が来たんだ。
「カカシ、テンゾウ、覚悟して聞け。 ・・・・イルカが消息を絶った。」
「・・・・・綱手様、いつ戻ってくるかは断言できませんが、里抜けではありません。」
「?! どういうことだっ?! 何か心当たりがあるのかっ?!」
「・・・・はい。 この日が来る事は、ボク達にはわかってましたから。」