時の歯車 5   @AB CEF GHI JKL MN




三代目は、先生を元の時軸に戻す方法を模索するらしい。 約束を守れば、自由にしてイイそうだ。
中忍だし、そう邪魔にはならないだろう、というコトで、イルカ先生はオレ達と同行してもらう。
面をつけて暗部に紛れ込ませれば、 “使えない新人” ぐらいな感じで溶け込めるだろう。
オレ達がフォローすれば、中忍一人なんていないのと同じ。 そう言ったら、先生は撃沈していた。

「・・・・俺が暗部にまぎれても、狙われるだけだろ? どう考えても足手まといだ・・・・」
「その辺は心配しなくて大丈夫、オレの傍にいればイイから。 これでも一応、部隊長補佐だし。」
「・・・・・・先輩の傍だと、部隊長に詮索されるかも知れませんよ? あのヒト鋭いから。」
「はははは・・・・ なんちゃって暗部か・・・・ うっ!! ・・・・そうかコレ着るんだっけ。」

火影様に暗部装備一式を頼んでおいた。 面で顔を隠せるし、監視できるし、一石二鳥。
撃沈してたイルカ先生は、やっとのことで浮上して、にわか暗部入りを受け入れたようだ。
装備品を渡したら、イルカ先生の顔色が変わった。 そんなひきつった様な顔して・・・・ 傷つくなぁ。
攻撃しやすいように開発された、軽量型のモデルなのに。 まあ、防御面は重視されていないケド。

うわぁぁぁっぁ!! だ、だめだっ!! 断固拒否!
「心配? 敵の攻撃を、くらわなければイイだけだヨ?」
「そ、そういう事じゃなくて・・・・ と、とにかく俺は、暗部服を拒絶します、スミマセンッ!!」
「忍服に面じゃ、それこそ狙われますよ? 悪目立ちし過ぎますから。」

「これに着替えなきゃ、連れていけない。 里の忍びが、任務拒否するつもり?」
「うっ・・・・。 そ、それは・・・・。 俺がいなくても一緒なんだから、家にいます!」
「でもそれじゃ、何かあった時に対処できません。 ボクらが火影様に怒られます。」
「そ、そうだ! 忍犬を口寄せして下さい。 忍犬と一緒にお留守番してます。 出歩きません!」

確かにその方が、こっちとしては動きやすい。 暗部内でいらないフォローをしなくて済む。
忍犬を付けておけば、何かあっても、すぐオレに情報が伝わる。 それはいい考えかも。
むやみに出歩かないなら、人に未知の出来事を詮索されたりは、しないだろう。 うん、それがいい。
イルカ先生自身は話さなくても、表情にでるから推測されちゃう、今みたいに。 コレは何か隠してる。

「・・・・それでいいヨ。 外に行かないなら安心。 イルカ先生バレバレだから。」
「いや、あの・・・ あと何日かしたら大丈夫なんだ。 そうしたら同行して任務に貢献するっ!」
「同行は嫌じゃなくて、暗部服を着たくないだけですか? ・・・・しかも今だけ??」
「ははははは・・・・ あー・・・・ 大人の事情ってやつだ。 ゴメン。」

温厚な忍犬 パックンを口寄せした。 オレ達は任務へ行き、先生とパックンはお留守番だ。
ここでもイルカ先生はボロを出した。 未来のオレは、かなりイルカ先生と親しいみたい。
オレが教えてないのに“パックン”と忍犬を呼んだ。 ・・・・オレの忍犬の名前を知っている。
イルカ先生が、なぜ暗部服着用を拒絶したのか、その夜に判明した。 確かに大人の事情だ。


「こんなとこに、ヘンなキスマークつけるなんて・・・・ 先生の恋人、馬鹿じゃないですか?」
「型を作って吸ったとしか思えないヨ。 ヒマなヤツだねぇ。 間違いない、これは男だネ。」

暗部服着用が嫌ということは、暗部服で隠せないところに、見られたくない何かがあるという事だ。
もの凄い怪我をして治りきってないとか、実は暗部の刺青があったりだとか、気になって仕方がない。
テンゾウもやっぱり気になったらしい。 イルカ先生の部屋の前で、夜中にバッタリと会った。
オレ達は部屋に忍びこみ、イルカ先生が熟睡してるのを確認して、そっと袖をまくってみた。
そこにあったのはキスマーク。 両腕の内側に唇の形そのままの、青赤い鬱血だった。

「・・・・・悪趣味でしょうか。 ボク、今、無性にひん剥きたいんですが。」
「いや、実はオレも見たかったりする。 体中についてんじゃないの? キスマーク。」
「・・・・・・始めて先輩と意見が一致しましたね。」
「そういえばそうだネ。 しかし・・・・ 全然起きないよネ、イルカ先生。」

オレ達は怖いもの見たさ(?)で、浴衣を少しはだけさせてみた。 首筋から、鎖骨、胸の上部が見える。
そこにもやっぱり、キスマークがポツポツついていた。 こっちは普通のよくあるヤツだ。
“う”と発音した時の唇の形の鬱血、ヘンなキスマークは両腕だけ。 少しは常識があるネ。