時の歯車 9
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「ワシも考えた末、その結論に達した。 ミナトが生前、仕掛けておいたんじゃろう。」
「でも、発動の要因は、まだわかっていないんですね?」
「・・・・・いや、おおよその見当はついておる。」
「!!! じゃあ・・・・ イルカ先生を未来に帰してあげることが出来るんですか?」
「・・・・・・うむ・・・・・ じゃが、確かな情報がない事にはな・・・・・。」
翌日、オレ達の考えを三代目に伝えた。 三代目は、発動の要因まで見当がついていると言う。
プロフェッサーとまで呼ばれる三代目なら、すぐに術の仕組みを解明し、応用が出来るはずだ。
どの情報が足りないんだろう。 まさかソレがないと、イルカ先生の命に関わる負担があるとか?
もしそうなら、無理に戻らなくてもイイんじゃないか? 来たコトだって、必然性があったんだし。
「もしイルカ先生に、危険があるなら、無理に帰さなくても・・・・・」
「そ、そうですよ、このままボク達と暮らせば・・・・」
「だめじゃっ! 今おるイルカに異変が起きる。 同じ時代に同じ人間がいるのは、摂理に反する事。」
「そんな・・・・ まだオレ達、恋人として出会ってもいないのに・・・・」
「それじゃボク達は、恋人になれないじゃないですか・・・・」
「恋人? それはどういう事じゃ? 未来ではお主たちの恋人が、イルカだと申すのか?!」
しまった。 確信があるとはいえ、イルカ先生がそう言った訳じゃない。 あくまでオレ達の憶測だ。
三代目の顔が険しくなった。 あー 先生ココに来るの楽しみにしてるのに、出禁くらうカモ。
仕方がない、オレ達がそう感じた理由を三代目に話そう。 先生は約束を破ってないと証明しなきゃ。
オレ達はこの一ヶ月間の態度や表情で、イルカ先生の大切な人間だと実感した、と三代目に話す。
一番始め、先生が無意識で耳にキスしたコト、オレの実家や忍犬の名前を知っていたコト。
目が合うと微笑み、“大好きだ” と語っている瞳。 優しく触れてくる、手のひらや指先。
目が覚めてすぐ、面をつけた暗部に”カカシさん”“テンゾウさん”と、名前を親しげに呼んだ。
オレ達の素顔を見ても、驚きもしなかった。 終始、全部知っているよ、という態度をとってる。
食べ物の好き嫌いも教えてない。 何もかもオレ達自身より、オレ達ふたりを知っている。
「一番簡単なのは、摂理をまげない為に、どちらかのイルカを始末すればよい。」
「「!!!!!」」
「じゃが、そんな事は絶対にできんから、ミナトの術を解明しょうとしておった。」
「・・・・・・脅かさないで下さい。」
「見当はついたが、確実ではなかった。 なるほどの、イルカがお主たちの恋人なのか。」
「やっぱり、それが何か関係しているんですか?」
オレ達の恋人だというコトが、先生をこの時代に呼んだ要因?? 一体どういうコト??
三代目はオレ達に、あれからあの場所へ行ってみたか、と聞いた。 四代目夫妻が眠る、慰霊碑に。
イルカ先生が落ちて来た所。 テンゾウが愚痴をこぼしてたそこ。 そういえば、あれから行ってない。
あそこに行けば、確実な要因がわかるの? イルカ先生が・・・・ 元の時軸に帰っちゃう・・・の?
「ワシひとりが行っても、何も起こらんかった。 お主たち三人が行ってみれば、あるいは・・・・」
「イルカ先生を連れて、あそこに行けば、先生は未来に戻れるんですか?」
「まあ、その場で戻れるかどうかは、まだ何とも言えん。 じゃが術の発動要因が明らかになる。」
「・・・・・わかりました。 イルカ先生に伝えます。 明日で・・・ イイですか?」
「うむ。 ワシも立ち会おう。 要因がわかれば、もう一度術を発動させる事は可能じゃからの。」
三代目の前では、なんとか平静を保っていたけど、家に帰ったら駄目だった。 テンゾウもオレも。
どうしてイイかわからない。 オレ達は座っている先生の膝にすがって、ポロポロ泣いた。
明日の予定を伝えた途端、涙がこみ上げてくる。 胸が苦しい、心が痛い、助けて、イルカ先生!!
イルカ先生は何も言わず、オレ達のしたいようにさせてくれた。 優しい手でゆっくりと頭を撫でる。
「イルカ先生、 明日・・・・ 未来のボク達の所へ、帰っちゃうんですか? 淋しいです・・・・」
「ん? 三代目がまだ何とも言えない、とおっしゃったんだろ? じゃあ、まだ何とも言えないな。」
「・・・・・でも三代目は、近々術を解明するヨ。 イルカ先生が・・・・ ココからいなくなる。」
「この時代の俺は、いなくならないぞ? 今、頑張って下忍やってるはずだから。 ・・・・だろ?」
『苦しいよ、知ってて何も出来ないなんて』本当にそうだネ、先生。 今この時代のイルカ先生は下忍。
下忍のイルカがアカデミーの先生になるまで、ただ見守っているコトしか出来ないなんて。