時の歯車 2   @BC DEF GHI JKL MN




「新人っ!! オレの前に出んなっ! 下がっていろっ!!」
「あなたこそ。 ボクの獲物を横取りしないでくれます?」
「お前ネ・・・。 そんな点数稼ぎしてなんになる。 あ、そっか、三代目の色小姓だっけ?」
「・・・・自分だって、その綺麗な顔で、四代目に可愛がられてたそうじゃないですか。」
「ミナト先生を侮辱するなっ!!」
「その言葉、そのままお返ししますっ!」

お前らっ!! いいかげんにしろっっ!!!

部隊長に怒鳴られて我に返る。 補佐という立場のオレが、それを忘れて絡むなんて・・・・。
・・・・・わかっている、同類嫌悪ってやつだ。 姿かたちじゃなく、考え方やその生き方が。
おまけにくだらない噂まで同じ。 “火影の稚児” 妬みからくる中傷だ。 そんなの知ってる。
オレだってさんざん言われてきた。 実力がない頭の悪い奴に限って、根も葉もないコトを広めたがる。

「いつもの冷静なお前らしくないぞ?  カカシ・・・・ そんなに心配か?」
「・・・・・・テンゾウは、オレと似過ぎています。」
「そうだな。 お前が暗部に入りたての頃を思い出した。 確かにお前達は似ているな。」
「だから余計に腹が立つんですよ。 焦ってた自分をみせられてるみたいで・・・・。」

今でこそ、暗殺戦術特殊部隊の部隊長補佐を任されているが、オレも始めはテンゾウと同じだった。
自分さえ強くなれば、里の力になれると思っていた。 全ては、力がない自分のせいだと悲観して。
九尾が里を襲ったコトも、たくさんの忍びが命を落としたことも、四代目を失ったコトも。
誰にもどうする事も出来なかったのに、自分を責めてばかりいた。 自分さえもっと強ければと。
オレ達より悔しい思いをしている忍びは、もっとたくさんいたのに、悲劇の主人公を演じていた。

「まあ、あいつだって馬鹿じゃない。 お前も。 おれ達忍びは、チームなんだから。」
「・・・・・はい。 オレももう少し、青かった自分を直視できる様になります。」
「おいおい、青かったって・・・・ やめてくれ、カカシは16才だろ? 最高に青いじゃないかっ!」
「確かに。 今年30才を迎える部隊長に比べたら、ピチピチの若人ですね。」
「はははは、お前から軽口が出たら安心だ。 テンゾウを助けてやれ、カカシ。」
「・・・・・努力はしてみます。 ・・・・死なせたくはないですから。」

そう、このまま単独プレーに走る忍びになってしまったら、テンゾウは近い将来、必ず死ぬ。
オレは、もうずっと前にそのせいで死にかけた。 オレの代わりに、かけがえのない親友が死んだ。
一人で出来るコトなんて、たかが知れてる。 どんな強い忍びだろうと、チームワークには勝てない。
どんな事があっても仲間は見捨てない。 ゆるぎない信頼があってこその、木の葉隠れの忍びだ。


「・・・・あんな・・・・ 生まれついてのエリートに、ボクの気持ちなんかわからない・・・」
「ああ、わからないネ。 六歳で中忍になったオレには、何かを考えてる余裕はなかったから。」
「!!! カ、カカシ先輩・・・・。 人の背中をとるのが、そんなに楽しいですか?」
「・・・・・・お前もサラッと背後取られてんじゃないヨ。 敵だったら死んでたネ。」

違う、こんな言い方じゃ、こいつには伝わらない・・・・。 それに、このテンゾウの態度も良くない。
どうしてこうケンカ腰になってしまうのか。 それは、恥ずかしい過去の自分と対面しているからだ。
わかってるのに、コレだ。 なんでもっと違う言い方が出来ない? オレの方が年上のくせに。
さっきからテンゾウは、下を向いて黙ったままだ。 どうすんだよ、この沈黙を・・・・ え?!

!!! テンゾウ、伏せろっ!!!
「?! 先輩っ!!」
「ぐえっ!! あでででで・・・・ 重い・・・・ テンゾー、大丈夫か?」
「う・・・・ はい・・・ ちょっと潰れそうですが・・・・。」

もの凄いエネルギーを感じたと思ったら、テンゾウの頭の真上の空間が歪んで、大きく亀裂が入った。
とっさにテンゾウをかばったけど、まさかその裂け目から、人が落ちてくるなんて・・・・。
今はテンゾウ・オレ・謎の男で、サンドイッチ状態だ。 空間の裂け目は既に閉じている。
よいしょっと・・・・・。 どうやら謎の男は、同じ木の葉の忍びのようだ。 部隊長よりは年下かも。

「・・・・この人、時空間忍術を使ったんでしょうか・・・・ 気を失ってますが。」
「見たことない顔だね・・・・。 とりあえず、火影様に報告しよう。」