時の歯車 8
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イルカ先生が来てから、まる一ヶ月。 その間に先生の態度から、いろんなコトが読み取れた。
実際、かなりボロを出してるし。 まあ、知ったところで、何か行動を起こすというコトはしないケド。
内心は不安だろうに、そんなことは欠片だって出さない。 反動で、好奇心を押さえられないみたいだ。
先生は三代目を、全面的に信頼しているから、戻れないかもしれないとは、全然考えていない。
「イルカ先生さ、絶対戻れるって信じてるよね、三代目に無言の、プレッシャーかけてる・・・」
「ですね。 実を言うと、あんまり出歩かないで欲しいんですが・・・・ バレバレだし・・・」
「あの屋台のラーメン、持って帰ってあげたら、大喜びしそうだよネ。」
「任務帰りに、ラーメンのお持ち帰り? あははは、いいですね。 おいしかったし。」
イルカ先生がどうしても行きたいと言った場所には、屋台のラーメン屋があった。
将来店を出すのが夢だと語った、屋台の親父さんに“あなたの作るラーメンは神です”と言ってみたり。
三代目の屋敷の地下に隠されている、四代目の遺児ナルトの様子を、やたらと知りたがった時は、
心配でどうしようもないと、目が言ってた。 きっと将来、大きくかかわるんだろうな、と想像できる。
「・・・・・・あのさ、イルカ先生の恋人って・・・・」
「先輩も、そう思いましたか? ・・・実はボクもです・・・・」
「うん。 オレ言ってなかったけど、無意識でキスされたんだよね、耳に・・・・」
「は?! え?? ボクが将来の恋人じゃないんですか?!」
「ハァ? ナニ言ってんの、オレでショ、それ。 先生の恋人はオレだヨ!!」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
チョッと待ったっ! イルカ先生のあのとろける様な視線も、優しい微笑みも、オレに向かってるんだヨ?
オレに無意識でセクハラしたのだって、きっとオレのチャクラを感じたからだ、そうデショ?!
なんでテンゾウがそう思ったの?? テンゾウに微笑んでた・・・・ テンゾウもあの視線を・・・・
今、凄くあり得ないコトを想像しちゃったんだけど・・・・。 ひょっとしてオレ達・・・・・。
「「うそーーーーっっっ!!!」」
どっちかが元彼とか、どっちかが死んでいるなら、イルカ先生は絶対態度に出る。 その表情にも。
だからこの推測は多分、っていうか、ほぼ確実な未来。 そう、きっとオレ達ふたりが先生の恋人。
オレ達はイルカ先生を仲良く共有していると考えて間違いない。 三人で調和がとれてるなんて・・・・
そうか、それで。 “こんなに互いを信頼し合ってる人達は、いない”あのセリフはだからなんだ。
「あーー、なんかスゴイね、オレ達・・・・ 一か月前は、ケンカばっかしてたのにネ?」
「ははは、ホントですね、ボクは先輩のように強くはないですから・・・・」
「お前がオレになる必要はないっ!! お前は、お前だ。 自分の力でのし上がって来たんだろ?!」
「・・・・カカシ先輩・・・・・ はい・・・・ そうです。 ありがとう、ございます。」
ほら、簡単なコトだった。 テンゾウ自身を見たら、こんなにすんなりオレの言葉が届く。
未来の恋人がオレ達の前に現れたのは、それこそをオレに、気付かせる為だったのかも知れない。
“何が起ころうとも、全ては先に繋がる伏線、決して変えてはいけない摂理がある” と三代目は言った。
なら、イルカ先生がオレ達の前に現れたコトは、 “先に繋がる伏線” の、ひとつなんじゃないか?
オレ達がイルカ先生の存在で変わったのなら、そうなるように仕組まれていたんだ。 ・・・・誰に?
「テンゾウ、イルカ先生が落ちて来た時、時空間忍術だと思ったよネ?」
「はい。 あの空間の歪み方は、四代目のソレと似てるなと思いました。」
「・・・・・・四代目の術と似てるんじゃない。 四代目の術そのモノなんだっ!!」
「どういう事ですか? 時空間忍術を使える四代目は、もう亡くなっていますよ?!」
そうなんだ。 ミナト先生の術だと確信したけど、なんでそれが発動したかは、まったくのナゾだ。
術者が死んでも解けない、そんな効果がある忍術なんて、聞いたコトも見たコトもないヨ。
三代目に聞いてみよう、もしかしたらソレについて、何かつかめているかもしれない。
でも・・・・ 術の発動のキッカケがわかれば、イルカ先生は未来に帰っちゃうんだよネ・・・・・。