首輪を握る者 11
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トキワの登場でいつもより長くかかっちゃったけど。 やっと帰れるよ、二人の待つ木の葉の里に。
でも他国なら汚してもいい、なんて木の葉が思われちゃ困る、汚した部屋は綺麗にしとかなくちゃね。
後であの首は、小鳩の里との交渉の場で使われるんだから。 ふふ、あの下忍達の顔、驚いてたなぁ!
発つ鳥後を濁さず、これも暗殺工作員の任務の一環。 ・・・・・よーし、これで元通りだ、完璧!
現役暗部を出し抜き、生き残れた事が嬉しかった。 生きて再び会える喜びで胸が一杯だった。
カカシさんとテンゾウさんの肌の温かさを恋しく思いながら荷造りをしている、まさにその時。
トキワが現れたんだよ。 こんな事、あり得ない・・・・・ 嘘だろ? なんでこの男が。
ここで出方を間違えたら、俺はもう二人に会えないんだぞ? 焦りは禁物だ、よく考えろ、俺。
一体何をしに来たのか。 落ち着け、大丈夫、俺を殺す気ならとっくに殺しているはずだから。
生きてカカシさんとテンゾウさんの元に帰る、あの温かい優しい腕の中に。 その為なら何でもする。
使役獣が書簡を届けた、だって? まさか忍亀さん? ・・・・いや、そうとしか考えられない。
俺の任務に同行してくれていた忍亀さんは、伝令チームを呼んでくれただけじゃなく・・・・・
里で任務完了、帰還間近の報告までしたって事か。 で、更にこの土地に詳しいからと書簡配達を。
彼は自分の出来る仕事をしただけ、任務成功の報告をいち早く三代目に伝えたかっただけだ。
・・・あれだな、マイト上忍の誕生会。 忍亀仲間がたくさん集まると言っていたっけ・・・・。
“僕の大仕事”を忍亀仲間に披露したいんだ。 どんだけ楽しみにしてんだよ、あの忍亀さん!
確かに言ったよ? 後は好きにしていいと。 今回、時間ばっか食ったから。 でも早すぎ。
ずっと蓮池の中で待機だったから、活躍したかったんだと思う。 仕事出来すぎだろう、それ。
まったく。 マイト上忍、意味もなく亀に懐かれ過ぎですよ、もう! と、心で愚痴っておく。
あんな仕事の出来る忍亀さんを紹介してくれたマイト上忍に、文句を言っても始まらない・・・・
例え木の葉からの書簡が恐ろしい速さで小鳩の里へ届いたとしても、トキワは喜んでいいはずだ。
時間のかかる任務が減ったんだから。 自分が仕掛けたのに手柄を横取りされたとでも思ったのかもな。
カカシさんやテンゾウさんもそうだけど、現役の暗部は読めない。 どう出るか、相手の出方を探ろう。
トキワの当初の目的が“説得”だったなんて。 俺と同じく、隙を作るのが目的だとばかり・・・・
小鳩の里はサクヤとセンを殺すのではなく、捕えるつもりだったのか。 無難といえば無難だな。
でも説得役でもあるトキワにイレギュラーな感情が芽生えてしまったんだ。 センに情が湧いた。
だからか。 あんなに忍耐強く待っていたのは。 サクヤから言い出させる為に、わざと・・・・。
うー さすがは現役の暗部だよ、してやられた。 そんな感情、欠片も見せなかったじゃないか。
真昼間から白粉の匂いをさせて来て女好きをアピールしてた。 義理堅い唯一の友を演じながら。
ほんと、参った。 そうと分かってれば、トキワに強姦されたイメージをサクヤに伝えたのに。
そうしたら、逆上したサクヤがトキワを殺すだろ? すぐにでも邪魔者を排除できた。 くそっ!
はぁ・・・ あんた、嘘が上手すぎ。 もっと熱のこもった目で見てくれてたら気づけたよ、俺も!
こうなった以上、駆け引きは続行だ。 なんとかトキワを納得させて、この町から出なければ。
トキワが望んだのはセンとの時間。 俺がセンではないと知っていながら、抱きたいと言った。
要は、夢の実現だ。 自分が手に入れたかった時間を体感したいんだよ、このセンの体で。
・・・・暗殺工作員としての俺のキャリアを舐めんなよ? あんたのその思い、吹っ切らせてやる。
今の俺は、あんたの望みどおりのセンだよ。 センの時と同じく、言葉を話さない事にした。
トキワに聞いたセンを忠実に再現してやる。 サクヤなど関係ない、センが愛してるのはトキワ。
SMクラブの店の前で発見したのもトキワ、このマンションに囲ったのもトキワ。 そうだろ?
木の葉の刺客がセンを演じてくれてる、と思っているが、実際はトキワの知ってるセンなんだけどね。
「ぁう・・・・・ ん・・・・ はぁ、はぁ・・・・・」
「っ、気持ち良さそうだな、セン。 ・・・ん。 おれも気持ちがいい・・・・」
「んう、んう・・・・・ ぅふぅ、ぅ・・・・・・ んっ、・・・・ はぁ・・・・」
「お前の・・・・ 体・・・・ おれの為に・・・・ ある・・・ ん、最高・・・・・・」
体の感覚まで写せる術? そんなもんある訳ない。 でも体の反応はセンと同じ。 俺だからね。
サクヤにつけられた縛りの痕がくっきりと残ってるけど、それはセンの全部を複製したから。
声や顔だけじゃなく、どこもかしこもセンと同じ。 ・・・・そう思ってくれているよ、トキワは。
百年の恋も一時に冷める、って言うだろ? 三日もあれば十分だ、センのいない現実を受け入れるには。
今も辛い業から逃げないで戦い続けている、現役の暗部。 あんたなら・・・・ きっと吹っ切れるよ。
この男は強い、現実を必ず受け止める。 そして今度こそ、俺は二人の待つ木の葉の里に帰るんだ。