首輪を握る者 12   @AB CDE FGH IJL MN




狩り専門の忍びか、確かに。 ここまで対象を取り込める奴なら、弱みを持つ相手の隙をつける。
おれがサクヤを追い詰めたおかげだぞ? と恩着せがましく言ってみた。 無事に交渉が成立。
木の葉の刺客はおれにセンとの思い出をくれるらしい。 やっぱり情に厚いんだな、木の葉は。

もし、は考えてはいけないが。 この刺客が動くより早く、おれがサクヤを狩っていたら・・・・。
サクヤの首と交換に、センを殺した事にしてもらえたのに。 この手柄を譲ってやるから、と。
甘かったな。 元賞金首のサクヤが生存してると知った時点で、他里の干渉も考えるべきだったよ。


どんな人物だったんですか? と聞かれたから、おれの知ってるセンと、サクヤとの出会いも話した。
それから少し考え込んで、自分の頭の中を覗いてみろ、と偽物のセンが言ったんだ。 驚いたよ。
おれは心潜術があまり得意ではないから、完全には読めなかったが。 記憶の中におれがいたんだ。
センの記憶として頭にセットしておけるらしい。 こんなことも出来るのか・・・・ 凄いな。あんた。

サクヤが店の前でみつけて連れ帰ってきたセン。 そのサクヤとの思い出が、全部おれになってたんだ。
そして極めつけは。 今後三日間、俺は言葉を発しません、たまに頭を覗いて下さいね? と言った。
センそのものだ、一人称も“俺”と。 ああ・・・・ おれが欲しかったセンが・・・ 目の前にいる。




嬉し涙が出そうだ。 どこの土地の誰の為だか分からない殺しを請け負っている、忍びのおれが。
センの前では隠し事をしなくていい。 センが傍に居れば、自分の中の全部が許される気がする。

心から欲しいと願った人はすでに他人のもので、更に失った。 今までのおれに対する報いだ。
里と里に住む民の為に、どんな罵声も恨みも全部受け止めてきた。 その外道が許しを請う。
どうか今、この時だけは。 人殺しの自分にも、少しの安らぎを与えてはもらえないだろうかと。


「ぅ・・・・ ぁ・・・・・ う。」
「 “トキワさん、俺、幸せです。 あなたに拾ってもらえた” ・・・・・おれもだ。」
「んー ん。 ・・・・・・ぅぉぁ? ん?」
「・・・ああ、たっぷり縛ってやる。 お前の好きな亀甲縛りをしてやるからな?」
「んっ!」
「ははは! ・・・・・・セン。 お前を愛してる。 こんなに安らげる場所はない。」
「・・・・・・ちゅ! ・・・・ん。」

トキワさん愛してる、俺を愛してくれてありがとう。 ・・・木の葉の刺客は、まさにセンだった。
あたなに何かあったら必ず後を追います、一人にはしない。  そんな心を全身で伝えてくれる。
体の相性も抜群だった。 センの感覚を写したらしく、敏感で、縛り馴らされたしなやかな体。

ベッドに縛りつけたり、天井から吊るしたり。 よく馴らされたセンの中を何度も激しく貫いた。
縛る度にセンは恍惚として、とろける様な瞳で喜ぶ。 この体はあなたの為にあるのだという様に。
どんなに荒々しく抱いてもセンの体は応えてくれるんだ。 恐ろしく気持ちがよかった。

センが気に入っているからだ、と町を出なかったサクヤ。 あいつの気持ちが痛いほどわかった。
どこの誰に恨まれても罵られれもいいが、センには嫌われたくない、そう思ったんだろう?
亀を見て無邪気に喜んでいるセンの顔、亀甲縛りが好きな淫乱なセンの体、嘘のいらない場所。
この全部がそろってなけりゃ、この安らぎの空間は作れない。 おれもそう思うよ、サクヤ。


おれだけのセンが、おれを見て楽しそうに笑う。 おれだけのセンが、おれの愛撫に身悶えて喜ぶ。
こんな幸福な時間を体感できるなんて。 危険だ、三日間をこの男と過ごしたら、おれは堕ちる。
ずっとこのままの姿でいろと監禁してしまうかもしれない。 邪魔な言葉も意思も全部奪って。
異様なまでにセンに固執し言葉まで奪い、こんな性癖を植え付けた忍びの気持ちも分かる。


センを囲うつもりだった。 飼い主を失くした傷心のペットに、新しい首輪を買ってやろうと。
だがおれは小鳩の里の暗部だ。 この忍びを帰さなければ、その瞬間からウチの里を危険にさらす。
サクヤみたいに里も里に住む民も全て捨てて、己の為だけに行動する敗者にはなりたくない。

外道のおれには偽物がお似合いだ、という自分も確かにいる。 けれどおれが欲しいのは本物。
本物のセンは死んだんだ、この世にいない。 サクヤの胸に抱かれながら喜んで死んだ、それが現実。
・・・・・明日、発ってもらおう。 おれは自分からこの満たされた空間を後には出来ない。

おれが期限前に音を上げたと言ったら、この刺客はどんな間抜けな反応をするか、見ものだな。


「んっ、んっ・・・・・ ぁ、ぁ・・・・・・ ぅ・・・・・」
「ふふふ、セン、お前のここ、柔かいな? 絡みついてくる・・・・」
「ん。 ぅふっ、ふっ・・・・ んぁ・・・・・ぁ・・・・」
「・・・手足の健を切って喉を潰して。 ずっと閉じ込めておきたいよ・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・ん。 はぁ、ぅ・・・・・ ぅん・・・・・」

ついポロリと出た本心に、センの偽物は動じなかった。 それどころか、こんな事を口に乗せた。
“トキワさんにならそうされたい 嬉しい” ・・・・・。 あんた、肝っ玉座り過ぎだぞ。
もしおれが実行したらどうするんだよ。 まあ、今は夢の時間だから、つい言葉に出しただけだが。

・・・・・まいったよ。 この刺客は心理戦を戦い抜いてきてるんだ。 降参だ、あんたには適わない。