真実を抱きしめる 10   @AB CDE FGH JKL MN




もの凄い衝撃と音の後、施設の天井が無くなった。 突如現れた巨大な鳥が、センターの職員を食べている。
なぜかセンターの職員が壁を上ってジャンプして反撃したり。 なんだろう・・・・木の葉隠れの忍び?!
クナイが飛び交ったり、火柱や水柱が敷地内から噴き上がったり。 あの鳥から守ってくれているの? 
夢を見ているのかな。 ここにきてから怖い夢なんて一度も見なかったのに。 でも目の前のこれは現実。



「なんだあのデカイ鳥はっ!! 主事さんが食われてるぞっ?!」
「給仕長もだ。 でもなんで給仕長が忍者みたいな術を?!」
「知らないわよっ! 警備の為に雇ってたんじゃないの?!」
「日高さんっ! 何がどうなっているんですか?!」

「皆さん、落ち着いて下さいっ、慌てないでっ! どうやら外に出ない限り大丈夫の様です!」
「・・・・あんな大きな鳥、世の中にいるのね。 きっともの凄く高く飛ぶわね・・・・。」
「燕ちゃん。 さ、あなたもこっちへ。 ここでひと塊になっていましょう。」
「はい、日高さん。 みんなも! 別行動は危険だと思うわ。 一緒にいましょう?」

「そ、そうだな・・・ 外に逃げ出したヤツや、攻撃してたヤツから食ってるみたいだし・・・・」
「大人しくしていれば・・・・・・ !!!! ひぃいっぃぃいいっっ!!!」
「「!!!!!!!」」

個別に行動するのは危険よ? と、いつも私達を気にかけてくれる施設長の日高さんが、皆を集めた。
部屋の隅に寄りかたまって大人しくしていましょう? 混乱しかけた皆は、その言葉に素直に従った。
するとあの鳥がこちらを見た。 怖いのに。 私達をジッと見つめる冷たい眼から目が反らせない。
私もだけど、皆震えあがってゴクリと息をのんだ。 逃げようにも・・・・・ 体が動かない・・・・。

しばらく眺めた後、巨大な鳥は隣の部屋の人達を襲い始めた。 そしてその次は、また違う部屋の。
骨の砕ける鈍い音と、耳をつくもの凄い悲鳴がその度に聞こえてくる。 日高さんが言った通りだった。
じっとして動かなければ安全みたい。 だって襲う気なら、さっき目が合った時に襲われていたもの。



「ひ、日高さん、あの食べられちゃった職員さん達は、木の葉隠れの里の・・・・ 忍び?」
「・・・・・・ええ。 万が一に備え、警護を要請していたのよ? ウチは大企業だから。」

「でも・・・・ 食われちゃったな、皆。 俺達と同じで、命懸けの仕事なんだな・・・・。」
「怪我をしただけなら、私達の誰かの血を提供して助けられたかもしれないのに・・・・・。」
「・・・・・・そうだな。 全種類の血液型が揃っていても、体がなければ無理だよ・・・。」

「あなた達は本当に心優しくて立派な人達だわ。 こんな怖い思いをさせてごめんなさいね?」
「日高さんのせいじゃないわ。 それに職員の大半が食べられちゃったし。」
「ふふ、実はね、さっき木の葉隠れに応援を要請したの。 きっとすぐにあの鳥を退治してくれるわ?」
「「わ! ほんとですか!! スゴイ!! さすが施設長!!」」

どこまでも冷静で頼りがいがある施設長。 火の国を守る木の葉隠れの里に、忍びを要請してくれてた。
私達の万一に備え、滞在していた忍びが死んじゃったんだもの、もっと強い忍びが助けにきてくれるのね?
施設長の日高さんこそ、心優しくて立派な人間だ。 こんな状況でも非力な私達を見捨てなかった。
パニックを起こし、我先にと逃げ出した他の職員達と違って。 ここにいる皆も、きっとそう思ってる。



「・・・・だからね? 今は木の葉の忍びを信じて待ちましょう。」
「「日高さん・・・・ はい!」」
「「もう少しのがまんですね?」」
「「まだ・・・・ 俺達の血は、人の役に立てるのかな・・・・・」」

「ふふ、火の製薬グループの大きさは知ってるでしょう? 土地と建物ならいくらでも・・・・ ?!」
「・・・・・これで全員か? センターの被験者は。」
「トルネさんっ!! はい、全員ここにいます、私と一緒に。 あの鳥は妖獣の一種ですか??」
「そうだ。 ・・・・・・・ここにいるのが・・・・ 全員そうなんだな?」

誰?? さっき日高さんが言っていた木の葉の忍び?! 人を食べてるあの大きな鳥は妖なの?!
でも・・・ なんだろう・・・・ この人・・・ 木の葉隠れの忍びのマークがどこにもない・・・・・
私も火の国の民。 行った事はないけど、国を守っている里がどこで、どんなマークかぐらいは知ってる。
それに。 サングラスのせいで目が見えないけど・・・・・ なんだかとっても得体が知れない・・・・

日高さんは木の葉の忍びだと思って親しげに話しかけてるけど・・・・ 凄く嫌な感じがする・・・・。
人情に厚い火影様が治める忍びの里・・・・ 申し訳ないけど、そこの忍びとはとても思えないわ。
だってこの人・・・・ 突然出て来たもの、不気味よ。 もしかして最初からこの部屋に・・・ いたの?



「どこに移しますか? 家族にはなんと・・・・・ あぐぅっ!! どう・・・・ し、て・・・・」
「・・・・俺の蟲は、足がつく。 これも組織の為だ、悪く思うな?」

「「日高さんっっ!!!」」
「「施設長っっ!!!」」
「次はお前らだ。 ・・・すまんな。」
「「!!!!!!!」」

どういう事?! 日高さんが、あの得体のしれない忍びに殺されてしまった。 なんでこんな事・・・・
日高さんの胴体を刀で真っ二つにした忍びが、今度は私達の番だと言って近づいて来た。
外に出れば人食い鳥がいる。 目の前には恐ろしい忍びが。 日高さん、私達どうすればいいの?!
部屋の隅にかたまっていた私達に、何処にも逃げ場なんてない。 ただ殺される順番を・・・・ 待つだけ。

一人づつ殺されて行った。 首や胴体が切り離されて。 同志ともいえる提供者達の血を頭からかぶる。
斬られた断面から、人の命を救って来たはずの尊い血が噴き出す。 もう何も見たくない、聞きたくない!
私は一番隅にいるから、最後に殺されるのを待つだけ。 耳をふさぎ目を閉じ、芋虫のように丸くなった。





「トルネ上忍。 なんでアンタがここにいるのか。 一応聞いてやるよ。」
「!!! ・・・・酉部隊長。 及ばずながらこのトルネ、自主的援護にはせ参じた。」
「アタシらの援護だって? ハン! 笑わせるよ。 でもまあ・・・・ 筋は通るね。」
「・・・・四部隊長が同時に動くなど、よほどの緊急事態だと。 ダンゾウ様が案じられたのだ。」

「アタシらの殲滅命令のヘルプって訳かい? そうか。 ・・・・・ならこれは・・・ マズイね?」
「出過ぎた真似をして申し訳ないがそう言う事だ。 だから・・・ 首の後ろの暗器をのけてもらえるか?」
「のけてもいいが。 いいかい、忘れるんじゃないよ? 今アンタは、アタシに殺されてたんだ。」
「・・・・・・・承知。  ・・・・・ふぅ、では俺はこれにて速やかに撤収する。 御免っ!」

「・・・・・アイツら。 ・・・くだらない死に方しか出来ないだろうね。」


・・・・・・?? あれ? 私・・・ まだ生きてるの?? 目を開けたらさっきの忍びはいなくて。
代わりに白塗りのお面をつけた女の人が立っていた。 ・・・・あ。 あのお面・・・ 鳥??
ぼーっと そのお面を見てたら、何かに掴まれた感じがした。 真っ暗なここは・・・・ なに??
なんだかひんやりして・・・・ 周りには何もない。 ああ、そうか。 これが死後の世界ってヤツね?

「・・・・・・・アタシの役目は被験者の保護だ。 ・・・・これでいいかい、親父様?」