真実を抱きしめる 12   @AB CDE FGH IJL MN




ここには、他里の忍びが異生物実験をしていた施設があった。 火の国の何の罪もない一般人を使って。
木の葉の結界札に似せた札を用意して、木の葉隠れの忍びの目を欺いていた・・・・・・ そう公表される。

センターは火遁で燃やし尽くして跡形もない。 手足を落とされモゾモゾ動いていただけの偽警備員も。
腕一本、足一本残す事なく、光太郎が全て平らげた。 山の中には何事もなかったかのように静寂が戻る。
お腹が一杯になって満足げに毛づくろいしていた光太郎は、ボク達を乗せて大空を旋回、木の葉に帰還した。

・・・・・お腹一杯で嬉しいのは分かるけど。 出来れば普通に飛んで欲しかったな。 はははは・・・・・。



「助かったよ、光太郎。 ・・・・・謎の怪鳥に仕立てて悪かったね?」
「問題ない。 生きた忍びが食えたのは久しぶりだ。 また呼んでくれ。 じゃあな。」
「お疲れさん!   フフ、アイツに頼めば敵忍の死体処理は・・・・・  なんだい??」
「「「・・・・・・・・・。」」」

「・・・・回転急降下や垂直上昇は・・・・ 必要はないのでは?」
「・・・・悪いが。 最終的に選択の余地がない限り、勘弁だ。」
「・・・・光太郎はサ、上機嫌だとアクロバット飛行するの?」
「なんだいなんだい! 意外とだらしないね、慣れたと思ったのにさ?」

アズサさんは慣れてるだろうけど。 空を飛ぶ肉食の口寄せ獣に乗るのは、基本的に間違いだと思う。
でもこれで酉部隊の、とりわけ酉部隊長のいる隊が、なぜ死体処理班より速く現場に到着するのか分かった。
カオルさんも言ってたけど、光太郎に乗って飛ぶのは極力避けたい。 腸が口から飛び出るかと思ったよ。



三代目はボク達の報告を黙って聞いた後、封印の巻物から異性物の死骸を一つずつ出して灰にした。
その元の体がどんな姿であったとしても、灰にしてしまえば分からない。 真っ白な灰だった。
シカクさんが呼ばれ、それぞれを小さい壺に入れて持って行った。 その灰を遺族に返してあげるそうだ。
情報分析部の名にかけて、総力を挙げて被験者の家族を探し出し一つ残らず家族の手元に、って。

例え息絶えた異生物であっても、やっぱり持って帰って来て正解だったんだ。 でも一人助かった女性がいる。
女性と言ってもその姿からは判別がつかない。 自分は人だと思っているからね。 本人が言ったんだよ。
三代目が話しかけたら、燕さんという名前の23歳の女性。 幸か不幸か、依頼人の妹その人だった。


巻物から出てきたのは、ブヨブヨとしたゼリー状の異生物。 目や口があるところが顔なんだろう。
ショック状態にある為、検査も兼ねてしばしの入院生活をお勧めする。 三代目は彼女にそう言った。
本物の木の葉隠れの忍びが施設にやって来て、自分を助けてくれたのだと思っているらしい燕さん。
あの怪鳥と恐ろしい忍びを倒してくれたんですねと、ボク達に感謝をしてくれた。 特にアズサさんに。

三代目から通達がいってたのにも関わらず、彼女を迎えに来た医療班の班長も、その姿を見て吃驚してた。
でもちゃんと車椅子に乗せ、人として扱っていた。 あれこれ話しかけ、彼女をリラックスさせながら。
あのセンターの研究員の管理下にない異生物、どうがんばっても、もって一週間だろうという話だった。


「三代目、入ります!」
「「あ。 イルカ先生!!」」
「「????」」

「おお、待っとたぞ、イルカ。 お主の率直な意見を聞かせてくれ。」
「はい。 家族に会わせるか否か、ですよね。  ・・・・・・会わせるべきだと思います。」
「・・・・・そうか。 そうじゃな、依頼人と一番長く接したお主がそう言うなら、そうじゃろう。」

なんと三代目はイルカ先生も呼んでたらしい。 なんで?? あ、そうか。 依頼人を知ってるからか。
仕事とはいえ、里を案内してあげた受付の忍び。 依頼人にしてみれば顔見知りの忍び、って事になる。
そういう顔見知りの忍びからの方が、真実を伝えるにしても受け止めやすい。 根の存在は知らせないけどね。

そして、依頼人本人の人となりを少しでも知っているイルカ先生が、会わせてあげた方がいいと判断した。
それはつまり“この人なら真実を受け止める強さがある”と、あの時の会話から先生がそう感じたから。
さすがの三代目も迷ったんだろう。 他の人達と同じで、灰にして返してあげた方がいいのかどうか。
あの姿でも最後を看取りたいと願う家族なのか、何も知らないでいた方がよかったと思う家族なのか。

ここでイルカ先生が、会わせるべきではないと言ったら、迷うことなく安楽死を選択したに違いない。
妹を見殺しにした、と里を逆恨みしそうな人なら、イルカ先生は会わすべきじゃないと言っただろうね。
どのみち実験生物が長くは生きられない事は分かっている。 遅かれ早かれ彼女に待っているのは死だ。



「結構重大な決断をしたね、イルカ先生? もし里が恨まれでもしたら・・・・・」
「いえ、アズサさん。 あのお姉さんは・・・・ 俺、強い人だと思いました。」
「・・・・おれは殺してやった方がよかったと思っていたぞ。」
「火の国の町中から、話に聞いただけの里を訪ねてくれたんです、写真一枚の為に。」

「そういう依頼だって言ってたネ。 ブーたれた顔の、素のままの妹の写真が欲しい、って。」
「ええ、だから。 そんな依頼人だからこそ、どんな姿の妹でも、受け止めると思うんです。」
「どんな姿になっていても、家族は家族。 自分の妹には変わりない、そういうことですか?」
「はい。 見かけがどうあれ、依頼人にとっては彼女こそが燕さんなんです。」

「うむ。 ワシもそう思う。 道を間違えようとも、見失おうとも。 家族は家族なんじゃよ。」
「「「「・・・・・・。」」」」

・・・・・?? あれ?? じゃぁ、イルカ先生は?? ボク達の見た目とテクが好きなんでしょう??
カッコよくて気持ち良いのが好きなんですよね? なんか言ってる事とやってる事が違うんですけど?!
これ以上、どうやってカッコよくなれと?! 更にエロテクを磨けとでも言うつもりですか?!
ちょっと、イルカ先生どうなの、はっきりして下さいっ! 一体ボク達のどこに惚れてるんです?!


「・・・・・・あの。 カオルさん、聞いていいですか? なんでこんなにカリカリしてるんですか?」
「ん?  ああ、カカシとテンゾウか。 ・・・・あー 実はな・・・・・。」
「ぶっ!! アハハハ! バカだ! バカが二人ここにいる!! アハハハ!!」

「チョット、バカってナニ?! 喧嘩売ってんのアズサッ!! ナニ内緒話してんの、カオルッ!!」
「ボク達はあなた達と違って、殺した方がいいなんて思いませんでしたよ?! 馬鹿はどっちですかっ!」

「ひー おかしいっ! こんなに洞察力があるのに、それかいっ! アハハハハ!」
「な? 不思議だろ。 なぜかおふくろさん関係はこうなんだ、こいつら。」
「「 どういう意味?! イルカ先生がなに?! 」」




「ふむ。 お主が手一杯じゃと言うておった意味が、わかるのう。 ほほほほ。」
「でしょう? ほんと、どうやったらあんなに可愛く、かつカッコよく育つんでしょうか??」
「そんなもん、知らんわい! ・・・・骨抜きにされても、とことん嬉しそうじゃの、イルカ。」
「世話焼くの大好きですからね、俺。 特に子供の。 もう可愛くって可愛くって。 くすくす!」