真実を抱きしめる 13
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てっきり死後の世界に来たのかと思ったわ。 だって真っ暗だし、ヒンヤリしてたし、音も聞こえなかった。
封印の巻物という道具の中に入っていたんですって。 本物の木の葉隠れの忍びが助けてくれたの。
あの鳥のお面をつけた人が、そうだったのよ。 凄いなぁ、女性で、しかも火の国を守る忍びだなんて!
うふふ。 私も及ばずながら、人の為に役立っていたのよね、少し前までは。 でももうお役御免かな。
「皆、死んじゃったのね・・・・。 助かったのは私だけだって。 火影様が教えてくれたの。」
「ええ。 燕はラッキーだったのよ? 皆の分も、頑張って生きなきゃ・・・・・ ね?」
「・・・・・くす! 不思議。 雲雀姉さん、会社でも重役に就いているのに嘘が下手ね。」
「燕・・・・・。 うん。 だから私達が一緒にいるわ。 最後まで。 燕が淋しくないように。」
木の葉隠れの里の人達もね。 私を見る目が“哀れみの目”なの。 可哀想に・・・・ そんな同情の視線。
忍びじゃなくても、それぐらい私にも分かるわ。 だって体がヘンなんだもの。 重くて・・・ 食欲もない。
施設で感じたことのない体調の異変を感じるから。 私の死期が近いのに、隠そうとしているのがバレバレ。
それに。 忙しい雲雀姉さんや、身重の雀ちゃん、転勤になったはずの両親が、入れ替わり立ち替わりだもん。
これで気付かない方がおかしいでしょう? 本当はね、凄く怖かった。 一人で死んじゃうのが。
なんでこうなっちゃったのかな、もっと人の役に立てたはずなのに、助かっても死んじゃうなら意味がない。
ずっとそんなことばっかり考えてた。 私が考えて行動したのに人のせいにしちゃう、そんな自分が嫌。
「・・・・燕はずっと設備完備された所にいたでしょう? 健康管理の為に。 大切な血を保てるように。」
「そっか。 私、過保護な環境にいたから・・・・ 何かに感染しちゃったのね・・・・?」
「ええ。 医療忍者さんから、そう説明をうけたの。 自己の免疫力が低下し過ぎていたんだって。」
「あーあ。 やっぱり世の中には・・・・ オイシイ話しはなかった、って事か。」
「くすくす! 楽して稼ごうとするからよ。 燕は楽観的過ぎるのよ、世の中そんなに甘くは無いのよ?」
「う〜〜〜 ツケが大きすぎっ! うら若き乙女がたかだかそこらヘンにある病気で死んじゃうなんて!」
「・・・・でも、たくさんの人を救ったんでしょう? 燕の血液が。 ・・・世の中の人を。」
「そうね! なんかこの一年間、もの凄く充実してたもの。 我が人生にクイナシ! ・・・・てか?」
そうよ。 私が選んで決めた道じゃない。 それにたった一年だったけど、自分の名前が好きになった。
姉さんのように頼りにされてる、妹のように感謝されてる、私も羽ばたいてるって・・・・ 実感してたもの。
せっかく鳥の名前をつけてもらった三姉妹なのに、私だけ飛べなかった。 でも最後は飛んだでしょう?
日高さんはたくさんの、って言ってたけど・・・・ 一体どれぐらいの人の命を救えたのかなぁ。 うふふ。
「・・・・ぷっ! くすくす! あははは! 全く調子いいんだから、燕は!」
「・・・・えへへ。 ・・・・・ねえ、雲雀姉さん。 最後は手を握っていてくれる?」
「もちろん。 父さん、母さん、雀。 皆一緒にいるからね。 手は私と雀が握っていてあげる。」
「・・・ありがとう。 なんだか全然怖くないの、これも不思議。 本当に死ぬのかしら? なんて!」
そうなの。 全然怖くない。 やっぱり血液センターには感謝だわ。 私、今凄く充実してるもの。
雲雀姉さんが言った様に、本当なら日高さんや皆の分まで生きたかったけど。 もう私には無理みたい。
日高さん・・・・ 本当に良い人だったのに。 あのヘンな忍びに殺されちゃった。 皆も・・・・
怪鳥が人間を食べた・・・・ あんなに死ぬほど怖い思いをしたのに・・・・ 今は死ぬのが怖くない。
雲雀姉さんがずっと手を握っていてくれたからかな。 本当の事を言ってくれたからかな。
何も食べてないのに。 体は相変わらず溶けて無くなりそうに重いのに。 気分が良いの、もの凄く。
ねえ、姉さん。 私、少しはマシな妹でいられた? 会社の人に聞かれても、恥ずかしくない家族だった?
だって姉さんは重役だもん。 え? ・・・・・ありがとう。 なんだか一生分の賛辞を貰ったみたい。
あー 凄く気分が良い、本当よ? 今死んでも、きっと痛くないし怖くない・・・ 本当に・・・・・・
「!!! 雲雀さん、離れて下さいっ! 妹さんが・・・・・ !!! これは・・・・・・」
「約束しましたから。 ずっと手を握っているって。 妹に今さっき、約束しましたから。」
「・・・・・・・。 残念ですが、我々の力ではもう・・・・。 すみません。」
「そんな! こんな姿の妹をここまで診て下さった。 ・・・・・ありがとう・・・ ございました。」
「では、お気持ちの整理がつきましたら、病室から出て来て下さい。 我々は外で待機しています。」
「・・・・はい。 最後まで気遣って頂いて・・・・・ ではもう少し、ご厚意に甘えさせて下さい。」
「我々木の葉の忍びは皆、出来る限り依頼人のお力になりたい、そう思っています。 ・・・・では。」
「 ・・・・・・・燕。 だから言ったじゃないっ! そんな上手い話は世の中にないのよっっ!!
バカッ!! お姉ちゃんより先に死ぬなんて! なんてバカなのっ!! うぅぅううぅ・・・・・
アンタが素のままで甘えてくれるだけでよかった。 ゴマすりの機嫌取りばかりのくだらない連中。
家に帰って来て・・・・ アンタだけが変わらないで、いつもふざけたことばっかり言って・・・・
私はそんなお調子者の燕が大好きだったのよっっ!! 自慢の妹なんて、いらなかったのよっ!!!
・・・ごめん、ね・・気付いてあげられなくて・・・ ごめん!! わぁあゎわぁぁああぁっっ!!!」
「三代目に報告を。 18時09分、家族の立ち会いの元、被験者死亡。 しばし猶予を、と。」
「はい、班長!」