真実を抱きしめる 6   @AB CDF GHI JKL MN




「「イルカ先生っ!!」」
「あ、カカシさん、テンゾウさん。 お疲れ様です!」
「正直に話して! 結婚式の後受付に座ったでショ? 依頼人が来たよネ?! 盗撮希望の!!」
「ええ。 ついこの前だからハッキリ覚えてますよ。 それが何か?」

「・・・・その時、考え事していましたね? 三色クナイの刺青の事とか!!」
「だって嬉しかったんですもん。 今も幸せ継続中ですよ、ふふふ。」
「「・・・・・・・。 (やっぱり・・・・) 」」

なんて事だ! そうやってボク達に気を取られていたから、イルカ先生はミスをしてしまったのか・・・・。
病める時も健やかなる時も、ですから。 奥さんの罪も・・・・ 旦那の責任って事になるんですよね?
間違いは誰にだってある。 中忍で世話焼きでお人好しで、ボク達に惚れまくっている受付の看板でも。
現にボク達だって・・・・ ヤバ! 余分に殺しちゃったよ・・・・ とか、ほんのたまにだけどある。

だからイルカ先生のミスも分からなくはないんだよ。 ボク達を好き過ぎて・・・ 上の空だったんだから。
でもやっぱり、そこは里の任務受付所に座っている受付忍として。 同じ間違いは繰り返しちゃいけない。
だからこれはイルカ先生の為に言うんだ。 ボク達へのスキスキオーラは、控えめにしなきゃ、って。



「・・・・・ダメじゃないの、先生。 もっと受付業務に集中しなくちゃ。」
「・・・・・そうです。 例え幸せ一杯でも、公私混同は駄目なんですよ?」
「公私混同? ・・・・ああ、あれですか?!  大丈夫ですよ、ちゃんと釘をさしましたから。」

「釘をさしたって・・・・?? え? イルカ先生が??」
「って事は・・・・ イルカ先生じゃなくて・・・・・ 他の人??」
「はい他の人ですよ。 もうあの話はあれでお終いです、安心して下さいね。 ふふ!」
「「イルカ先生じゃなきゃ別に・・・・・ うん。」」

なんと、イルカ先生がミスした訳じゃなかった。 しかも誰かの間違いを指摘して修正してあげたみたい。
ボク達は、てっきりイルカ先生が記入ミスをしてそのままなのかも・・・ って。 まあ、当然か。
先生は、三代目がとっても信用している受付忍の一人だし。 ならスキスキオーラを控える必要はないね。
イルカ先生がしっかりと仕事に集中できるなら、ボク達への愛を振りまく事を禁止しちゃ可哀想だ。

・・・・・?? だったら、受付忍が記入ミスした可能性は消える。 ちゃんと訂正したんだから。
カカシ先輩、ならもう一つの可能性が濃厚ですね。 ウチの結界札が使用されていない場合の。
それもまた二つ考えられます。 木の葉の里を信用していない、又は、里に知られたくない、のどちらか。

「この前の盗撮依頼の話ですか?? 妹さんの写真が欲しいと言った女性の・・・・・??」
「ンー 多分ソレ。 今さっきシカクさんが来て、中忍が結界札に弾かれた、って。」
「だからボク達、受付に・・・・ 幸せ一杯のイルカ先生に注意しにきたんです。」
「ウチの結界札じゃなかったんですか? そう言えば・・・ ちょっとだけ不思議だと思いました。」
「「不思議? ・・・・・不思議って??」」

イルカ先生が不思議に思ったのは、血液センターの中での生活が快適過ぎる事。 至れり尽くせりだとか。
これはその依頼人が妹さんと面会した時、本人の口から聞いたらしい。 ここから出たくない、と。
一年ごとに契約更新するところを、当人の希望で五年に伸ばしてもらったと、嬉しそうに言ったそうだ。

依頼人が言うには、電話で話せて、ガラス越しに面会もできる、それなのに本人に直接会えないそうだ。
その血液センターと個人契約をした妹さんに。 センター側の話だと、必要な時に血液提供が出来ないとか。
外界に出て、もし何かに感染して安全で健全な血液が採取出来なくなったら、契約違反となるらしい。
期限付きでそういう契約を交わしているのなら、なんら不思議はない。 それは家族も了承済みだろう。


「家族にはその分の料金が振り込まれていて、書類上も何の問題もないそうです。」
「・・・・・5年分。 そりゃまた。 太っ腹ですね、さすが大企業です。」
「センターにいれば使う必要がないから全額家族に振り込んだ、って・・・・。」
「・・・・・ちょっと聞いただけじゃ、とっても家族思いの妹さんの話だネ?」

確かに。 書類もあって本人の同意もあるなら、誰が何を言っても無駄。 全て筋が通っているから。
でもイルカ先生はそこを不思議がった。 お金を無意味だと思うほど、そこでの生活は保障されている。
言い方は悪いが監禁生活、普通なら耐えられない。 どんなに待遇が良くても。 一部例外を除いて。
家族が壮絶な覚悟をもって挑む時、だ。 麻薬を抜く時、とか。 アルコールを抜く時、とか。

その妹さんの家庭は裕福ではないにしても、そこまでの壮絶な覚悟があるとは思えない。
小さい会社勤めの夫婦の次女。 キャリアウーマンの姉と嫁いで行った妹がいる。 ごく普通の一般人だ。
一年ごとの任意契約というのは、だからだ。 普通は外の世界に戻りたくなるだろうから。


「戻りたくないほど、至れり尽くせりな環境って、ちょっと想像つきませんよ俺、ははは!」
「イルカ先生・・・・・ それ多分・・・・・ 洗脳・・・ だヨ。」
「?! 彼女の妹は・・・・ 今では命を救う使命感に燃えてて・・・・」
「それはすり込みですよ、自分の存在を意義のあるものにする為の。」

両親の会社の都合で転勤を余儀なくされ、自分は残るが、引っ越す両親の為にと写真を欲しがった姉。
センターに相談したら、送ってくれたが、いつも同じ表情で笑っている写真ばかりだったらしい。
ちょっとブーたれた顔でおどけて写る癖があったそうだ。 なのにおしとやかに笑っている顔ばかり。

自分で撮らせてくれと、面会に行った時に撮ろうとしたら、中は撮影禁止なのだと断られたそうだ。
それで仕方なく妹の隠し撮りを・・・・ 自然な姿の娘の写真を両親に送ろうと、ウチに依頼した。
できれば妹に話を通してほしい、よくやっていたブーたれ顔の写真が希望なんです、そういう依頼。

受付忍はランク別に任務依頼書を作成する。 その時に機密書類の記入ミスに気付いたのかもしれないね。



「依頼人の話からBランク扱いで受理して・・・・ その後里を案内したんですよ、俺が。」
「その時に家庭内の事情やいろんな話を聞いたり・・・・ 依頼人と雑談したんですね?」
「本人が希望する写真ぐらい撮らせてあげたっていいじゃないか・・・・ そう思ったり・・・・。」
「・・・・部外者が自由に対象を撮影すると困ることがある ・・・・ってコト?」

結界札を定期購入してるなら種類・数に変化は無いはず。 世話焼きのイルカ先生はとことん調べたのかも。
中忍に頼むBランク任務だ、事前準備の為の付属情報として、結界札の詳細情報は記載しておくだろうから。
ウチの結界札じゃないとすると、他里の結界札が使用されている。 その企業か、センターの管理者か。
どちらの意向か判断はまだ出来ないが、公に出来ない何かをその中で行っている・・・・ という事だ。

「なんだか・・・・ 怪しい雲行きなんです・・・・・・・ か?!」
「「先生、ご褒美vv ちゅv ちゅv」」
「・・・・・・・・あー ラブスイッチ入った??」
「「上手い事言うねー イルカ先生vv」」

ふふ、嬉しそう! ボク達への愛を溢れさせつつも、ちゃんと仕事をしていたイルカ先生にご褒美です。
ラブスイッチか! うん、イルカ先生、エロチャクラとかラブラブオーラとかカッコいい自慢とか。
突然スイッチ入っちゃうもんね! 今も、俺って重要な事に気付いたでしょう、褒めて褒めて? みたいな!
おねだりのネーミングが決まった。 では今後、ラブスイッチが入ったら、ボク達はキスしてあげますね?