真実を抱きしめる 11   @AB CDE FGH IKL MN




まさかオレ達の方が速かったなんて、思ってもみなかったらしい。 施設の警備員の服を着た偽警備員達。
あの姿でセンターを訪ねて、関係者を全員殺し証拠隠滅。 ・・・・・の予定だったんだろうケド。
ふふ、そんな服着てるから遠慮なく狩れたヨ。 だって“根”だと証明する物がナニひとつないからネ。
どこから見ても他里の忍びでショ? オレ達は同胞だと知らない、他里の忍びだから殺しただけだモーン。

何人かはヤバいと思って引き上げたかもネ。 きっと今頃、ダンゾウに証拠隠滅任務の失敗を告げてるヨ。
でも三代目がちゃんと逃げ道を作ってくれたから、それに乗っかるはず。 アイツはそういう男だし。
それでももしナン癖つけてきたら“オレ達の狩りの間合いに入ったヤツが悪い”こう言ってやろう。



雑魚は光太郎の餌だ、ってアズサが言ったケド。 デザートは別腹なんでショ? だから腕だけ落とした。
忍びは美味いらしいヨ? チャクラが美味なんだってサ。 転げ回ってるヤツらと腕は光太郎が全部食った。
オレ達には不味そうとか言っといて、クソ不味そうなヤツらは美味いの? 失礼しちゃうよネ、まったく!





オレ達が偽警備員を狩り終わり光太郎にプレゼントしてやった、丁度その時。 アズサが戻ってきた。
なんと、トルネが潜っていたらしいヨ? いけしゃあしゃあと援護に来たとほざいて撤収したらしい。
ま、光太郎の眼をかいくぐり、あの時点で始末してないヤツを消す、なんてコト出来るのはヤツぐらいだ。



「ヤー 上手いコト、アズサが保護に行ってよかったヨ。」
「ですね。 カオルさんじゃなくて良かったです。」
「・・・アズサが即動けたんだから、当然だろう。」
「バカだねカオル。 アンタじゃ殺してた、ってことさ。」

「ああ、それか。 ・・・・・殺してやった方がいいだろう。」
「ホーラ、言った通り。 完結型だからネ、お前。」
「間違いなく、根と摩擦が起きましたね。 依頼人とも。」
「「うん、うん。」」

そうそう。 トルネは里でも有名な蟲使いの油女一族。 一族から追放されたとはいえ、一応木の葉の上忍だ。
根は志村ダンゾウが統括していた、暗部隊員の養成組織。 解体された組織だが、まだコソコソと動いてる。
根の解体にあたって、一族の懇願があり助命された上忍。 事実上存在しない組織、それを理由に殺せない。
しかも自主的に援護に来たとか言ったんでショ? なら、暗部の援護に来ただけのお節介な上忍ってコト。


ダンゾウの側近だからと、それだけで殺せないんだ。 一族嘆願で助命した三代目の顔を潰すコトにもなる。
ダンゾウも根を再組織化している証拠を残してない。 仮に、一人でも生き残りがいて証明できたとしても。
今回は火の国の民を使って国内で行われていた。 里は火の国を守る忍びの里、その里の信用問題に繋がる。

ダンゾウはそこまで計算してるんだーヨ。 見つかっても公表できない理由をちゃんと用意してネ。
黙認せざるを得ない状況を、キッチリとはじき出してる。 その頭を他で使えばいいのに、宝の持ち腐れだ。
ダンゾウの夢は火影になるコト、それだけ。 里の為なら何をしても許されると、本気で思っている男。
このセンターでの実験も、アズサに聞いてハッキリわかった。 単純に血液の実験なんかじゃなかった。


根なら証拠隠滅の為に、関係者も被験者も始末する。 オレ達の優先すべきは、その被験者の人命救助。
アズサは血液提供者 保護の為、探しまわったがどこにもいない。 つまり、一般人の姿をした人間を。
そもそもそれが間違いだった。 血液提供していると思い込まされていたのは、オレ達もそうだったんだ。

忍びの気配を感じて、前に素通りした部屋に戻ってみたら、トルネがそれらを切り刻んでいたらしい。
アズサは最初、そいつらはどう見ても血液提供者じゃないから、と無視した。 でもそうじゃなかったんだ。
無視した理由は分かる。 その情報はなかったから、部屋を素通りしたアズサを誰も責められない。
被験者本人たちだけでなく、オレ達皆が血液提供者だと思っていたから。 彼らは人の形をしていなかった。



液状の者もいれば霧状の者やゼリー状の者もいる。 様々な異種生物。 人間の形をしていない化け物達。
そんな姿を見れば、殺してやりたくもなる。 このまま生かしておいても、ただ残酷なだけだろうから。
でも依頼人は? 木の葉の医療班に診せても戻せる確率は皆無に近いけど、依頼人の望みは妹の写真だ。
その判断は、指示がない限りオレ達暗部がしちゃいけない。 火影様にゆだねるのが一番イイ。

確かにそんな外見なら、写真に撮らせるはずないもん。 人命の為の血液提供じゃないのは一目瞭然。
幻術や暗示、念写などで、本人や家族にも、普通の人間の姿に見えるようにしていたんだろうネ・・・・
だからアズサは息絶えてる者も含め、その場にいた異生物を全て封印の巻物に入れて保護したんだーヨ。

「・・・・・・・迅速かつ確実に、だろ。 問題ない。」
「それが問題だっつーの!」
「それが問題なんですっ!」
「たまには里以外の事に、関心を持ったらどうだい?」

「・・・・・お前らのように、おふくろさんみたいな存在を側に置けって事か?」
「「イルカ先生は、自分から側に来たんだからっ! 一緒にいたくて仕方なかったのっっ!!」」


「・・・はっ! イルカ先生、オレ達にカッコイイを連発するケド・・・・・・」
「まさかボク達の外観に惚れただけ・・・・・ とか言いませんよね、先輩?!」
「「面喰いイルカ?! エロイルカの癖に?!」」

「顔が超カッコイイから?! 確かにそうだケド、それだけ?!」
「あとは・・・・ テクニックですか?! 気持ち良いから??」
「「エロイルカめっ!! なんて生意気なっっ!!」」


「いつも戌猫面をつけてたんだから、面喰いもクソもないって教えてやれ、アズサ。」
「アハハハ! あのお子チャマ具合がいいんだろうね。 上手く話を変えたねぇ、カオル?」
「・・・・ふっ。 まあな。 確かに保護は、おれが行かなくて正解だったかもしれん。」
「実はアタシもね、少し迷ったんだ。 誰も何も知らずに、今ここで殺してやった方がいいのかも、ってさ。」