真実を抱きしめる 9
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血液提供者の精神的安定の為、とかなんとか理由づけしてるんだろうね、その施設は山の奥深くにある。
なるべく人目につきたくないから山奥にあるだけの話。 でもね、狩りにはおあつらえ向きなんだよ。
そこで何が起きてても、悲鳴は町まで届かないから。 長所は短所にもなり得る、っていう良い例だね。
家族には自由に面会を許可していたらしいけど。 そんな山の奥じゃ、そう頻繁に訪れる事は出来ない。
だから依頼人は写真を欲しがったのかもしれないね。 引っ越す両親が会いに来れるか分からないから。
本当に上手く隠れていた。 もし公になったとしても、全て本人の承諾があるから手の打ちようがない。
・・・・三代目が言った通り“他里の忍びの仕業だと思ったから奇襲をかけた” それなら別だけどね。
火の国の民を犠牲にしていた他里の忍び、木の葉隠れの庭で喧嘩を売ったも同然。 三代目はご立腹。
すぐさま直轄部隊に敵忍の討伐命令と火の国の民の救出命令を出した。 で、ボク達四人が迅速に動く。
こういう筋書きなら、例えあのダンゾウでも口を挟めない。 ・・・・・もしくは先に動いているか、だ。
根と施設の繋がりを絶つため、同胞殺しの刺客を放っているかもしれない。 まあ、厳密に言うと・・・・
ボク達も立派な同胞殺しだけどね。 だって考えの違う組織 根の奴らでも、木の葉隠れの忍びだから。
先にダンゾウが動いているかもしれない、そう心配したけど。 どうやらボク達の方が速かったらしい。
・・・・・・ボク達というか・・・・ 光太郎が。 確かに高速だ、飛ぶのも急降下するのもハンパない。
「アー たんま。 クラクラする・・・・」
「アズサさん、よく平気ですね・・・・・・」
「なんだいそのザマは! 情けないねっ!」
「・・・・アズサは自分も飛ぶからだろう。」
「じゃあアタシが先に救出に動くよ。 巻物保護係はアタシだね。 それ、かしな。」
「・・・・封印の巻物です、どうぞ。 保護はお任せしますね、よろしく。」
「・・・・ならおれ達は、刺客狩りだな。 そろそろ到着するだろう。」
「了解、割り振り決定。 ンー まだジンジンしてるヨ、鼓膜がサ。」
「「同感・・・・・。」」
「雑魚は光太郎の餌だよ、思う存分食わせてやっておくれ! じゃあな!」
「「・・・・・・・・餌?? 光太郎・・・・ 野放し?!」」
「おれ達は食わんだろう。 不味そうだとヤツも言ったぞ。」
「「・・・・・・・そういう問題??」」
・・・・・急降下の速度は、飛んでいた速度の比じゃなかった。 地に足がつかないとは、まさにこの事。
自分の足なら感覚は掴めるが、それ以外だとこうなるのか・・・・・。 結構、キツイ。 耳鳴りも。
二三度頭を振って、視界も思考も感覚も、全てを整えたボク達の目に映ったのは、散々たる光景だった。
さっきアズサさんが光太郎に、ボク達以外の忍びや施設関係者は食っていい、と言ったせいで。
「・・・・・・猛禽類ってサ。 無表情で食うよネ・・・・・。」
「ん? ・・・・・美味そうに食ってる様に見えるが。」
「・・・・・・まあ、カオルさんも無表情ですからね。」
「・・・・そうか?」
「「同類相憐れむ・・・・・・。」」
「・・・・猛禽類と一緒にするな。」
根の施設なら、施設関係者は使い捨ての駒、利用されてるに過ぎない。 そこに潜らせる忍びも同様。
いつでも切り捨ててしまえるような輩だ、そんな程度の忍びの忍術など、あのデカイ隼に効く訳がない。
口寄せ獣、それも高位の獣になればなるほど、通常レベルの忍術では歯が立たない。 光太郎もそうだ。
メリメリと建物の屋根を剥がした巨大隼は、中から外に飛び出した奴らから“首なし”に変えていった。
鳥はまず獲物の目を狙う、獲物が小さければ当然それは頭だ。 ボトボトと首なしの体が落下する。
実物大のドールハウスの様だ。 光太郎にしてみたら、その箱に入っているのは与えられた自分の餌。
そこから逃げ出そうとする餌を動けない様にしているだけ。 モズのように早餌を作っている訳じゃない。
その光景を目の当たりにした彼らは、我先にと逃げ出す事は諦めた。 無意味な攻撃は全くの逆効果だし。
だって光太郎の眼には“元気で美味そうな餌”として映る。 美味しそうなモノから食べるのは王者の証。
野生動物は、強い奴から順に美味い部位を食べる。 光太郎は野生動物じゃないけどそれよりタチが悪い。
関係者に紛れて潜っていた根の奴らは、自ら光太郎の注意を引いて自滅していった。 光太郎は口寄せ獣。
忍びの食べ方を心得ている。 だから丸飲みはしない。 腹の中で暴れられると困るからね。
ブチブチ、ゴキゴキと。 まるでスルメを裂くように、腕をもぎ取る音と悲鳴が辺りに響き渡る。
まず、印を組めない様に。 餌が忍びの時は、必ず腕を引きちぎる。 ちゃんとそれから食べるんだよ。
断末魔が聞こえなくなったところで、今度はさっきの首のない人体を片っ端から食い始めた。
まだまだ光太郎のお食事タイムは続行中だ。 さあ、ボク達は根から来るだろう刺客を迎え撃とう。
・・・・今更だけど。 ボクにも懐いてくれているカカシ先輩の忍犬が、もの凄くラブリーに思えてきた。