優しい獣達 1
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おれたちゃ忍びだ。 どうやったって死ぬ事はさけられねぇ。 命の懸けどころは人それぞれだがな。
“愛する者を守る為”ってのが、おれらを奮い立たせるモンだ。 それはつまり“里を守る”になる。
玉の為、惚れた相手の為、民や友の為、自分の為。 理由は何であっても、皆そこに住んでるから、だ。
その思いが一番強いヤツが“火影”なんじゃねーかって気付くのに、時間がかかり過ぎた。
だから親父がコイツらの事を黙認してたのは、絶対、何か理由があるってな、思ってる訳だ、おれはよ。
おれが里を飛び出して、火の寺の駐屯護衛任務に行ってた時に、なんかあったんだろーな、程度。
めんどくせーから、はっきりした理由を聞いた事がない。 イルカが幸せそうだから、特にこだわらねぇ。
「よお。 ヤマト、カカシ。 ふたりそろって上忍待機所にいるのも珍しいな?」
「うん。 綱手様にワガママお願いして、返事待ってるトコ。」
「あ、先輩!! アスマ先輩に協力してもらえばいいじゃないですかっ!」
「あん? 協力?? めんどくせー、やっぱ話しかけるんじゃなかったぜ。」
確か・・・・・ 今コイツらは、尾獣チャクラのコントロール修行に専念してるんじゃなかったか?
人柱力のチャクラコントロールは、里の力が低下してる今、最優先事項でもある。 ナルト本人の為にも。
暁が他里の尾獣狩りを始めた。 この前も砂の国の人柱力 風影が、尾獣を抜かれれ死にかけたところだ。
一体何人ぐらい狩られたのか、真相を確かめに単独で自来也様が諜報活動を続けているらしいが・・・・。
「いやー ナルトのヤツ、チャクラ質の話から始めなきゃダメなんだヨ、まいった。」
「まったく、アカデミーで何を教わってたんでしょうね?」
「はははは。 アイツは悪戯とラーメンだけだろ。 ・・・・・あと、イルカ先生な?」
「あ、それは先生にも言った! 甘やかしてばかりだったんでショ、って。」
「あははは。 卒業させた手前、先生はあさっての方向見て、ごまかしてましたけどね。」
「そうか? 怒ったら、こえー先生だったって、ウチのベビー猪鹿蝶トリオが言ってたぜ?」
「あ、シズネさんだ。 どうでした? 何日かもらえましたか?」
「カカシさん、ヤマトさん、綱手様からです。 “勝手は許さん”だそうです。」
「あー やっぱりね。 でもさ、もう一回確認して来てくれる? アスマがプチ師匠になるから、って。」
「アスマさんが? ・・・わかりました、聞いてみます。 もうちょっと待ってて下さいね。」
コレだ。 何勝手に決めてやがんだか。 まあ、ベビー猪鹿蝶トリオは全員中忍に合格して、暇だしな。
おれが一緒に行動しなくても、アイツらは大丈夫だ。 アスマ班で指名が入ったら、おれも同行するがな。
察するところその我儘の為に、おれにナルトの修行をつけろ、ってコトだわな。 めんどくせ―な、おい。
「・・・・・何日ぐらい、里を空けるんだ?」
「んーと、多分三日ぐらい? そんぐらいで大丈夫だよネ、ヤマト。」
「はい。 ぜったい逃がしませんから。」
「・・・・・・・そうか。 ナルトか、結構手間かかりそうだな、おい。」
「ナルト、風遁チャクラ質なんだよネ。 アスマの方が、教えるの短縮出来るでショ?」
「まだ風遁チャクラも、コントロール出来ませんから。 アスマ先輩なら手本になりますよ、きっと。」
ナルト・・・・ アカデミーで一番最初に教わる事だぞ? 自分のチャクラの性質を知る、ナンてのはな。
親父はナルトを早くにアカデミーに入れた。 三回留年してやっと卒業。 最初の担任が教えなかったんだ。
イルカが教えなかった訳じゃねぇ。 が、その後の責任は、やっぱりイルカにある。 しかたねーな。
弟の尻ぬぐいは、兄貴がしてやるか。 おれのチャクラ質は風遁だ、アイツは体で覚える方が早いだろう。
「あと、もいっこ頼みたいコトがあるんだケド。 アスマの大事な弟分のコト。」
「そのボク達のイルカ先生に、いらないお節介やいてる奴がいるんですよ。」
「あ? お前らの色がイルカだって、木の葉のヤツはみんな知ってるぜ? そんな馬鹿は・・・・」
「いるんですよ、よけいなお世話を焼く輩が。 本人の為だと思ってるみたいなんで。」
「赤土の暗部6人殺った根性あるくのいちいるでしょ? アレ。 先生の隠れファン。」
「なんだそりゃ。 イルカ本人をみてれば、相思相愛なのはわかるだろーが。」
「ネー?」「まったくです。」
イルカはおれの弟みたいなもんだ。 両親を九尾襲来で亡くしたイルカを、親父は度々ウチに連れて来た。
猿飛家はおれ以外、女ばっかの姉妹だったから、必然的にアイツの悪戯の犠牲は、親父とおれだった。
三代目火影はもういねぇ。 もしイルカが無理強いされてたら、その親父が黙っちゃいなかっただろう。
まあ、暗部にずっと身を置いてるコイツらと、アカデミーの教師とじゃ、不思議に思うだろうがな。
イルカだって、一歩アカデミーを出れば中忍だ。 しかも教師になるまでは、敵の懐に入る潜入員だった。
鬼の居ぬ間になんとやら。 コイツらはおれが木の葉にいない間に、イルカをかっさらっていきやがった。
「カカシさん、ヤマトさん! 二日なら里を空けてもいいそうですよ!」
「あー、 じゃぁ今すぐ行かなきゃ。 じゃ、アスマ、ナルトとイルカ先生のコト、頼んだよ?」
「シズネさん、今から里を立ちますって綱手様に伝言をお願いしますね。 アスマ先輩、二日間よろしく。」
「おう。 めんどくせーが、弟の尻ぬぐいは兄貴の仕事だ、まかしとけ。」
里を空けてはならない大事な時に、何処に行くんだ、何しに行くんだ、とか聞かなくても想像はつく。
イルカ絡みだな? 『絶対逃がさない』と言った時のこいつらの目。 正直寒気がしたぜ、このおれがよ。
親父、おれが木の葉にいない間に、コイツらに何があったんだ? まだ生きてたら、聞けたのにな?