優しい獣達 12   @AB CDE FGH IJL MN




オレ達は、あの時のイルカ先生に欲情した負い目もあり、本当のコトなんて言えるはずもなく。
縛り痕でアザだらけの自分の体と、もう出ないほど絞り出された精液。 泣いているオレ達を見て、
イルカ先生は“暗部の任務で飛び出した獣が、まだ暴れたりないみたいだ”と思ってるらしい。
少しだけ壊れたイルカ先生も言ってたよネ。 ・・・・・そう、こんなコトぐらいなんでもないって。

イルカ先生に極力触れない様にした。 だってキスでもしようものなら、すぐサギリに戻ってしまうから。
オレ達が先生を性的に欲すると、イルカ先生の中であの日がまた再現される。 オレ達も同じ事を繰り返す。
ずっと我慢してた。 『遠慮するな! 俺は女じゃない、頑丈なんだ!』そうイルカ先生に怒られるまで。



だから。 先生に触れたくて触れたくて、我慢できなくなった時、イルカ先生を抱く。 あのサギリを。
体は悦び、悶え、射精する。 口からは霧忍をあざ笑う言葉を吐き続ける・・・ そんなイルカ先生を。
オレ達は最後にいつも泣いてしまう。 元に戻った何も覚えていない先生が、泣いてるオレ達を抱きしめる。
この悪循環を断ち切れないかと、三代目に打ち明けた。 何度もあの日が繰り返されているんです、と。

「潜在意識の中におるイルカに、心底助かったと思わせるには、元凶を絶つ事じゃ。」
「では、その霧忍本人をイルカ先生の目の前で殺す、というコトですか?」
「そうじゃ。 潜在意識に、そ奴の死を確認させる。 イルカの中で今度こそ、あの出来事の終焉じゃ。」

「誰もヤツの顔を知りません。 イルカ先生も目隠しされてました。 城では変化していましたから。」
「・・・・・・長い時間がかかるやもしれん。 負担も大きい。 それでも・・・・ やるか?」
「当然。」「もちろんです。」
「よかろう。 影分身の持続を維持する忍具を作ってやる。 ・・・・・イルカを助けてやってくれ。」
「「はいっっ!!!」」

表向きは、穏やかで理想の恋人達に見えただろう。 実際イルカ先生といると、オレ達は安らぐ。
でもやっぱり人間だから。 心底惚れた相手が傍にいるのに、触れずにいるのは不可能だ。
死の瞬間まで、イルカ先生の温もりを思い出していたい。 例えそれが、サギリになったイルカ先生でも。
多岐が言った通りなのかもしれない。 何を言ったところで。 オレ達は所詮、血に飢えた獣だ。

これは火影様とオレ達だけの秘密。 三代目が亡くなった後も、事情を知った五代目が協力してくれた。
誰も知らない。 アスマも・・・・・ あのナルトだって知らない、イルカ先生の壊れた心の欠片。
オレ達は、先生が失くした心の欠片を見つけて元に戻すと誓った。 そしてめいっぱい抱き合うんだ。




・・・・・喜び勇んで里に戻って来たオレ達を待っていたのは、アスマと多岐。 この・・・・裏切り者っ!
“火影は皆を守る為にある”ではなく“火影を守る為に皆がいる”と父親に反発し、里を飛び出したアスマ。
お前、また間違いをゴリ押しする気?! イルカ先生はオレ達といて幸せそうだ、って言ってたよネ?!
まさか・・・・ くのいちの言葉に絆されて、多岐に協力するなんてバカなコト、考えてないでショ?!



「チョット!! 自分の女がくのいちだからって・・・・・」
「よう、ソイツか? イルカを苦しめてる元凶ってヤツはよ。」
「アスマ先輩・・・・。」

「猿飛上忍に、ウチの暗部を他里と一緒にするなって怒られました。 ・・・前言撤回です。」
「「・・・・・・・。」」

アスマは裏切った訳じゃなかった。 オレ達を信じて、あの多岐を・・・・ 説得してくれたんだ。
ははは、三代目。 あなたの実の息子は、あなたと同じです。 オレ達を、イルカ先生をちゃんと見てる。
大きな古木。 たくさんの実をつけてその生涯を終えた。 そしてその実から、また新たに木ノ葉は芽吹く。
“信じるコト”あなたの教えは、アスマにも、多岐にも。 オレ達みんなに、しみ込んでいるんですネ・・・・。

「な、多岐。 言った通りだろ?」
「はい、悔しいけど・・・・ て言うか。 理想通りでいてくれて、ありがとうございます?」
「・・・・やっぱオメー、イイ女だわ。 よし、頭なでてやる。」
「ちょ、ヤメテ下さい! 紅上忍に殺されます!!」
「はははは、アイツはそんなセメー女じゃねーよ、ははは、照れるな、照れるな!」

「「・・・・・くす!」」



ふたりとも。 ・・・・何も聞かないでいてくれて。 オレ達を信じてくれて。  ・・・・ありがとネ?