優しい獣達 4   @AB DEF GHI JKL MN




「頭の中でイメージしてみろナルト。 風が吹く瞬間を。」
「う〜ん、風が吹く、風が吹く・・・・・ ピューッとか、ゴーッとか?」
「いや、空気の鋭さをよ・・・・って言っても分かんねーか。  ・・・・・見てろ?」

「!!!!! スッゲーーーーーッッ!! こんな細い武器で岩が真っ二つだ!!」
「今のは、道具に風遁チャクラを込めただけだ。 お前と同じチャクラ質のな。」

「なぁなぁ、ヒゲ先生! 俺もこんなの出来るようになるってばよ?」
「まあな。 お前は考えるより、見せた方が早いだろ? 何でもイイから真似してやってみろ。」
「うん、わかったってばよっ! 武器に俺の気を込める、風のチャクラか・・・・ おりゃっ!!」

おうおう、ああだこうだとよく粘る。 お前にゃ理屈はいらねーな、体で覚えるんだ、ナルト。

ん? この気配は・・・・ さっそくお出ましか。 まいったな、昨日の今日だぜ、おい。
イルカの隠れファンだとかなんとか。 イルカのどこをみて、アイツが苦しそうだと思うんだ?
くのいち心理を紅に聞いとけばよかったな。 でも今のアイツにゃ、よけいな心配かけたくないしよ。

今紅の腹ン中に、おれの玉がいる。 消宮しなかったくのいち。 自分の膣に毒を仕込んでやがった女。
捕縛された時の為に、自決する毒を膣の入り口に仕込んだツワモノ。 潔く、恐ろしく強い、おれの女。
こんなことに首を突っ込むなんざ、馬鹿としか言いようがないが。 強いくのいちは皆、聡明なはずだ。



「ナルト、昼までには頑張って感覚つかめよ? おれは、客人と話があるからよ。」
「こうかっ! わ、わかったってばよ、どりゃっっ! 昼までに!!  うりゃっ! はっ、だぁっ!!」
「はははは、イイ感じだ、頑張れな?」
「おうっ! ・・・っりゃっ!」



「・・・・・またせたな、昨日の話か?」
「朝からすみません。 ふたりがそろって里にいないチャンスを、逃したくはないですから。」

「・・・・なあ。 なんでそんなお節介なマネする? お前みたいな優秀なくのいちがよ。」
「?? 聞いてませんかおふたりから。 ははは、ほんと優しいですね。 でもソレとコレとは別物。」
「やっぱり、なんか事情があるんだな? お前さんが嫌じゃないなら、話してみろ。」



“紅上忍が羨ましい、理想の忍びを手に入れて”そう前置きして、くのいち多岐は話しだした。

イルカの体につけられたたくさんのアザを見た事、自分も体験したから、一目で性拷問だとわかった事、
男に抱かれる事を知ってるイルカには、女が近付いても意味がない事。 そうか、そうだったんだな。
だからもうひとり別の恋人を見つけてやろうと。 確かにコイツにとって恩人だからな、イルカは。

「昨日私がプッシュした男を、猿飛上忍がけん制した、って聞いたんで。 直接話そうかな、と。」
「・・・・・おれはカカシとヤマトに頼まれたんだ、いない間のフォローをよ。」
「あのふたりと私。 最高のくのいちを手にしたあなたは、どちらを信じますか?」
「正直わかんなくなった。 おれにとってイルカは弟も同然、里では心から笑っていて欲しい。」



おれ達忍びは、皆獰猛な獣をその身に飼っている。 その内なる獣を里の中で野放しには絶対しない。
そのコントロールができなきゃ、中忍、上忍になる・・・・つまり、木の葉のベストを着る資格はない。
まさかアイツらが・・・・・。 それがもし本当なら、おれはアイツらの頼みなんか聞く義理はねぇ。

木の葉の中忍くのいちふたりが、赤土の暗部に拉致されて自力で帰って来た。 里の誇りだと思った。
その優秀なくのいちのひとりが、この多岐ミコト。 コイツの目も言う事にも、嘘は感じねぇ。
なあ、紅。 おれはおまえらくのいちを、里の忍びとして尊敬してる。 おれはどうすればいい?

『ぐだぐだ考えてないで、直感を信じなさい、お父様の事も!』 ははは。 今、紅の声が聞こえた気がした。



「多岐、とにかく、もうイルカに男を世話するのはやめろ。 おれもめんどくせぇ。」
「・・・・・結局猿飛上忍も、エリート暗部の言う事を信じるんですね。」
「そうじゃねぇ。 おれはお前ら全員を信じることにした。」
「は? そのまま見てみぬフリをしろ、そういう事ですか??」

ふたりが里を空けた経緯を話した。 直感で薄々感じた事は、きっと当たってる。 そうだろ、紅。
里に住む者は皆家族だと公言していた親父。 一度失望させたおれは、今度こそ頭から親父を信じる。

イルカが苦しんでるなら原因は他にある。 それがどう性的拷問に繋がるのかは、わからねぇがな。
その原因となるモノをふたりはみつけた。 “逃がさない”と言った時の目は獲物に対峙した時の目だ。

「だからよ、ふたりが帰ってくるまで、休戦といこうや。」
「・・・・・またあのアザを見つけたら。 とびきりのイイ男を紹介してやるっ!」
「おお任しとけ、それはおれも協力するぜ。 何人か心当たりがある。」
「ホントですか?! 猿飛上忍のお墨付きなら、イルカ先生も幸せですね!」

おれが里を飛び出してた間に、イルカとデキてたふたり。 アイツが幸せそうだからまあいいか、ってな。
超人的な精神力で生き残った女。 コイツの心にゃあ、肉体派のおれは、とても太刀打ちできねぇよ。
多分、イルカが一番傍にいて欲しい時に、いてやれなかった。 おれがダントツ馬鹿ヤローだ。

だからおれは、お前ら三人を信じる。 お前らが心底、イルカを思ってる事に変わりはねぇ。 だろ?

「・・・・あのよ。 “そういうプレイ”って、どんな顔して言ったんだ、アイツ。」
「あはははは、今時、どもってましたよ。 くす! 目も泳いでたなぁ・・・。」
「はははは、バレバレな嘘つきやがって。 ・・・・・多岐、お前は強いな。」
「・・・・・・・・・ありがとうございます。(紅上忍、目利きだなぁ・・・・)」