優しい獣達 14   @AB CDE FGH IJK LN




イルカ先生が戻って来た。 いつもならココで泣いてるオレ達を、先生はギュッて抱きしめてくれる。
『大丈夫、なにがあっても、俺がふたりを嫌う事はありません』 そう言って。 覚えてないクセに。
でも今日はオレ達泣いてないでショ? でもやっぱり先生の体は、アザだらけで汁だく。

「俺・・・・ 馬鹿ヤローだ・・・・。」
「「イ、イルカ先生?!」」
「ゴメ・・・・ ゴメンナサ、イ。 俺・・・・ ナニやってたんだ、今まで! こんなに傷つけて!!」
「「!!!!!」」

イルカ先生はオレ達をいつものように抱きしめてくれた。 いや、いつも以上に強く。 泣きながら。
まさか全部思い出したの? 今までの悪夢を全部?! オレ達の自作自演の性拷問も、壊れてた自分も?!
アザだらけなのはイルカ先生。 なのにオレ達に、傷つけて、弱くてゴメンナサイ、と泣いてる。
オレ達は泣かなかった。 今日は泣いてなかったんだヨ? なのに・・・・・



「イルカ先生は・・・・・・ 絶対、元に戻るって信じてたヨ。」
「うぅ。 はい・・・・ ありがとう、ございま・・・す、お待たせしました。」
「先生に一杯アザ作って・・・・ ボク達こそ、ごめんなさ、い。」
「大丈夫です、なにがあっても・・・・ 俺がふたりを、 ぐすっ・・・ 嫌う事はありませんっ!」
「「イルカ先生っっっ!!!」」

お帰り、先生。 イルカ先生の中に、心の欠片が吸収された。 もうあの日が繰り返されるコトはない。
コレが・・・・ この強さがオレ達のイルカ先生。 あの日魅せられた、強烈な・・・・ 強い光り。



三人で抱き合ってバカみたいに泣いて。 拷問部がギャーギャー泣いてるオレ達の横を素通りして。
邪魔だ、と毛布をかけられ隔離されたオレ達。 頭からかぶせられた毛布の中で、ずっとキスをしていた。
応えてくれる舌が嬉しくて。 何度も何度も舌を伸ばして絡めあった。 イルカ先生との四年ぶりのキス。
五代目に、死体回収と証拠隠滅の指示を受けた拷問部が、オレ達の部屋をきれいに掃除してってくれた。


「残念ながら、今日はもう何も出ません。 それでも、しますか? 俺は平気ですよ?」
「「・・・・・・・・ううん、いい。」」
「じゃぁ、手を繋いで寝ますか。 仲良く。 三人で。」
「「うん!!」」

イルカ先生を抱くのは、今のこのアザが消えてから。 忌々しい過去の幻影が消えるまで、我慢するヨ。
それまでは、この満たされたキスで十分。 相手が応えてくれるコトの喜びを実感。 最高に気持ちイイ。
止まってた時が動きだして、これで全てが元通り。 あの日をやっと過去に出来た、オレ達三人。

手を繋いだまま体を寄せ合って、代わる代わるキスを。 もう誰が誰の唾液なんだかわかんない。
指先にキュッて力を入れたら、親指でナデナデされた。 おかしくなって笑ったら、先生もヤマトも笑ってた。
トントンと、互いの指先でモールス信号ごっこ。 笑いながらキスして、指先で気持ちを伝えあう。



【そういうプレイOKなの】 【ソフトでお願いします】 【同意の上ですもんね】 【うん、たまにね】
【ボク達は優しい獣】 【そう、俺にとっては】 【獰猛な肉食獣なのに】 【毛並みの良い獣です】
【飼い慣らされちゃった】 【俺が飼い主】 【責任持って面倒みてね】 【迷子になったら探します】



うん。 迷子になって帰り道がわからなくなっても、絶対迎えに来てネ? 信じて待ってるから。
オレ達も。 何があっても飼い主を忘れないから。 オレ達の飼い主はイルカ先生だけだから。
指先で会話しながらキスし合った。 伝言ゲームみたいに順番に伝えあって、笑って、またキスして。

こんなに他人を必要としてるなんて、オレ達自身、初めてだった。 先生といると初めてが一杯。
キスで充実するのは初めて。 嬉しくて泣いたのも初めて。 幸せな時間はホントにあっという間なんだネ。





【好き】 【もっと好き】 【大好き】
【愛してる】 【いつまでも】 【愛してる】 【死ぬまでずっと】 【愛してる】