優しい獣達 10
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目隠しされ、手首を頭の上で十字に縛られ柱に繋がれてた。 座布団の上に、膝を立てたまま座らされて。
木の棒を膝下から固定し、その棒の先端は、やはり柱に巻かれていた。 足を閉じられないように。
尻のなかに入れられたモノ、口に入れられたモノ、胸を這うモノが、休むことなく彼を責め立てている。
どれだけ射精したのだろうか。 彼の中心からは、色もついてない透明な精液が、断続的に出ているだけ。
ただ無言で性拷問具をはずしていく。 仲間が屈辱を受けた状況なのに、色欲に支配されそうになる。
血生臭い任務の後ならいざ知らず、ひとりで潜入して無血解決しようとしていた、優秀な潜入部隊の忍びに。
オレ達は互いに、自分の欲を抑えるのに必死で。 “ありがとうございます”の声に、我に返った。
サギリは、霧隠れの里に連れていかれるところでした、とオレ達をしっかり見返してお礼を言った。
「城にいたヤツに頼まれた。 アンタの今の記憶を消して、雷の国に帰してやって欲しい、って。」
「・・・・祖国の事を話したのは、味見係のコチさんだけです。 コチさんが・・・・・。」
「自分の事も忘れるだろうけどそれが一番いいって、言ってましたよ。 故郷で幸せに、って。」
「はい・・・・ 菊千代様もお救い出来たし。 俺はもう、この国には居たくありません。」
この襖の向こうで死んでるヤツが、その味見係なのかどうかは、わからない。 城では変化してたろうから。
約束は果たした。 サギリの人格は、アンタの提案を素直に受け入れたヨ。 間違っても化けて出ないでネ?
暗示で作られた人物“サギリ”は、芯がしっかりと通った青年のようだ。 性格は本人そのままなのかも。
ちゃんと助け出されたコトもわかっていたし、自分の置かれている立場も理解していた。 驚かされる。
オレ達木の葉の忍びを信じ、記憶を消してもらって、一から祖国 雷の国でやり直すそうだ。
快楽の責め苦にさらされながら、まだ正気を保っていたとは。 サギリを欲した霧忍の気持ちがわかった。
サギリ、潜入員のうみの中忍を、色宿から連れ帰って火影様に見てもらった。 記憶を消す、と言って。
三代目の屋敷の一室で、今、うみの中忍の意識に火影様が入っている。 本人を覚醒させる為だ。
火影様か、血を分けた誰かか。 他人の精神に入れるのは、本人が本当に心を許している人間だけ。
彼の覚醒を確認してから、帰ろうと思っていた。 いくらなんでもオレ達には会いたくないだろうからネ。
「三代目! サギリの自己暗示は解けましたか?! うみの中忍の意識は・・・・」
「イルカの奴め、頑丈に沈めおってからに。 ワシでないと、すくい上げられんかったかもしれん。」
「じゃあ覚醒したんですネ? フフフ、よかった・・・・ ではオレ達はこれで・・・・」
「・・・・イルカがの。 お主らにどうしてもお礼を言いたいと、待っておるぞ?」
「「!!!」」
オレ達に・・・・ 会いたいか? あんな、目に合って? それを見ただろうオレ達に??
オレは嫌な予感がした。 会っちゃいけない、もし本来の“うみのイルカ”に会えばオレは・・・・・
ははは、コイツもきっと同じ事を予感したな? オロオロした気が漏れて来た。 バーカ、未熟者めっ!
「ありがとうございました!! 絶対連れて帰ってくれると、信じてましたっ!」
「「あ、いや、任務だから・・・・」」
「まさか敵がサギリに惚れちゃうなんて、考えもしませんでしたよ! へへ、さすが暗部ですね!!」
「「・・・・・・・。」」
子供ひとりの為にナニ無茶なコトしてんの、とか。 オレ達が行かなかったら霧に拉致されてたよ、とか。
言いたいコトがイッパイあったはずなのに。 気まずいだろうな、なんて、珍しく相手に気を使ったり。
こんな眩しい笑顔、見たコトない。 だから嫌な予感がしたんだ。 オレ達も彼が絶対欲しくなる、って。
「「火影様、お願いがあります。」」
「おお、珍しいの、お主たちがおねだりとは。 なんじゃ?」
「「彼を・・・・ うみの中忍をください!!」」
「・・・・・ワシは気にせんが・・・・ バカ息子がの、可愛がっておったしのぉ。」
「アスマは自分のワガママで火の寺にいるんです。 文句は言わせません!」
「アスマ先輩が戻って来た時、幸せそうなうみの中忍を見てもらいます!」
「うむ。 よかろう。 ところで、本人には承諾を得たのか?」
「「あ・・・・・ 忘れてた・・・・。」」
それからオレ達の猛アタックが開始。 あらゆる手を使ってネ。 相手は潜入部隊、一筋縄じゃいかない。
あの手この手で暇があれば探して口説いたヨ。 そしてついに、オレ達は誰より強い光を手に入れた。
・・・・・はず、だった。 4年前、あの話がイルカ先生の耳に入るまでは。 オレ達の光に影が差す。
あの時。 サギリが忍びだと知っていた大名 陽公 本人には、その記憶だけを抜かせてもらった。
城にいた人間すべてに、サギリはこの城での記憶を消し、新しい名で生活を送っている、と説明した。
子息誘拐の失敗で、霧隠れの忍びに目をつけられ、殺されかけたサギリは、このままでは危険だから、と。
今は成人名を与えられた陽公の息子、あの時の菊千代が、わざわざ三代目に任務依頼をして来たんだ。
昔、命賭けで自分を助けてくれた料理人“サギリ”の身を案じた、それは純粋な少年の願いだった。
“火の国の飲食店でサギリを探してる者がいる。 どうか僕の命の恩人を、雷の国にいる彼を守って欲しい”と。