命の代償 17
@AB
CDE
FGH
IJK
LMN
O
俺達 里の忍びの父親だと慕われている三代目。 一般人よりは遥かに死に近い忍びの父。
いつもその知らせを聞くのは里の執務室、子を看取れないつらさを誰よりも知っているからこそ。
・・・だから。 だから、あえてお二人に若君との別れの時間を作ってあげたんだと思う。
「三代目の書簡に目を通したご夫婦は喜んでおられました。 とても。」
「ふむ。 虎丸様を看取って後、里での人工授精を勧めてみたんじゃ。 お二人のお子をな。」
「看取った後で、か。 だからお二人は“仁徳の御仁”だとおっしゃったんですね・・・。」
錦麹家のたった一人の跡取りは短命、主筋の血を残す為の行動をすぐにでも起こすことができたのに。
例え火の国の有名な大名家であろうと、残された時間を家族で過ごすぐらいの権利はあってもいい。
あの時。 三代目が淋しそうだったのは、失う辛さに直面するだろうお二人を思っての事だったんだな。
「あの贄の印を見た時、要らぬ情けのせいでワシが道を誤らせた様な気になっての。」
「そんな・・・・。」
「我が子の死を受け止められず禁術に手を染めたか、公になる前に引導を渡さねばならん、とな。」
「ご立派な最期だったと・・・ 聞きましたよ。 暗部の部隊長の皆さんから。」
「ワシがもっと早く説得できておればと・・・・ 悔やまれてならん。」
「親父様のせいじゃないよ、大名の主家が軽々しく弱みをみせるからつけ込まれたのさ。」
「いい人が必ずいい指導者になれるとは限らない、残念ですけどボクもそう思いますよ。」
「粛清は中止になり家名は残るんだから分家の誰かが城主に納まるヨ。 ・・・でショ?」
「ああ。 火の国の大名家がまるまる他里の手に堕ちる前に手を打てたんだ、最悪は免れた。」
うん、そうだ。 それに責任感の塊のような弥平さんもいる。 一番悔いているだろう忠臣が。
後を追う事は認めない、生きて償えと。 お二人は最期に弥平さんにそう言ったそうだ。
分家の誰が錦麹家の当主に納まろうが尽くすだろう。 忠誠を誓った主君と奪った命の償いの為に。
「なにはともあれ。 人気の大名家を粛清せずにすんだ。 お主らの判断に救われたの。」
「そをれをいうなら俺もです、三代目があのスタンプに気づいてくれなければ・・・・」
「おい、黙れ。」
「ちょいと。 あんた何を言うつもりだい?」
「おお、なんじゃ? なんぞ他にも報告があるのか?」
「ヤ、別に。 他にはナニも。 ネ? 海野中忍?」
「何でもないですよ、三代目。 ね? 海野中忍?」
あ。 やべ。 くれぐれも三代目を心配させるなと言われてたんだった・・・ う! どうしょう・・・。
ひー まるで針のむしろだ! しゃべったら殺す、的なアズサさんとカオルさんの鋭い視線が痛い・・・
更に必要以上に俺を庇ってくれてるカカシさんとテンゾウさんの行動も・・・ ちょっとどうかと思う。
そして一番困るのは三代目の・・・・ ワシに隠し事か? みたいな悲しげな表情・・・ うぅ!
危うく俺まで死にそうでした、なんて。 そんな事言えるはずないだろ、三代目に! どうすれば・・・
なんとか・・・・ なんとかしないと・・・・ というかヘンな間をあけても怪しまれるぞ、ひぇ〜
「・・・・さ・・・・ 三代目にご報告が・・・ あの、俺・・・・」
「ふむ、深刻そうじゃの、イルカ。 何があった?」
「俺、ここにいるカカシさんとテンゾウさんの恋人になりましたっ!!」
「なんとっ!」
よ・・・・ よしっ! これだっ! これなら不自然さも補えるし、哀しいかな嘘は言ってない。
ふー セーフ! ニコリともしてないけど、アズサさんとカオルさんからの冷たい視線はなくなった。
そのかわり、目を合わせるのも怖いぐらいの、ものっすごい熱視線が、これでもかと突き刺さる。
「・・・フフ、バレちゃったネーv」
「・・・呪印の事も知ってますよv」
「アタシら、親父様のお気に入りの忍びだと思ってたからさ・・・・」
「・・・・怒鳴られるかと。 おれ達がいたのに止めなかったので。」
「ほほほ、そんな訳はなかろう。 お主らの誰かとくっついたなら安心じゃ。」
「で・・・・ ですよねー 俺、ランダム発動する呪印持ちだし! ははは・・・!」
「カカシ、テンゾウ。 イルカは心根の優しい子じゃ。 大切にの?」
「「はい、三代目、もちろんっww」」
「「「・・・・・・・・・・。」」」
こらこら。 どさくさまぎれに尻をもむな、尻を。 てか、着物の合わせから手を入れるな、手を!
二人の恋人らしく手の甲をつねってポイッとやって、それぞれのほっぺにチューなんぞをしてみた。
おお、効いてるぞ! 俺がチューしたほっぺをサスサスしてるよ。 そういう仕草は可愛いな、おい。
・・・・・・・・が。 さっきよりも熱視線が増した。 とことん墓穴掘りまくりだな、俺・・・・。
「残念な報告の後は嬉しい報告じゃった。 ・・・皆、今回はご苦労であったの。」
「「はっ!」」
「で、では三代目・・・・ 失礼します。」
「「失礼しまぁーーーーすww」」
「ほほほ、仲良き事、よきかなよきかな。 ほほほ!」
今にもクラッカーを取り出して祝ってくれそうな雰囲気の、そんな三代目のいる執務室を後にした。
酉部隊長と猿部隊長は予想通り執務室を出るとすぐ、じゃあな、と我関せずで去ってしまった。
いい年して電車ごっこをしてる訳じゃない。 カカシさんとテンゾウさんが俺の前後にくっついてるだけ。
ちょっと! くっつき過ぎですってば! はいはい、はなれて! そんなにくっついたら歩けません!
「ケチ! さっきはチューしてくれたのに!」
「さっきはさっき! 今は今! もう執務室を出・・・・・」
「あんまりつれないと拉致っちゃいますよ?」
「・・・・・・・・・・。」
前向きに考えよう。 命の代償は尻ですみ、瞳術の代償にしても万年発情期の恋人が出来るにとどまる。
それが男二人だとか、里から介入を受けるほどの特殊遺伝子保持者だとかは、この際無視だ。
三代目と俺の前後にいる二人は凄く喜んでる。 二つの呪印の代償で人を三人も幸せに出来た。
±でいくと、いっこプラスだぞ? 母ちゃん、俺もう、無理やりにでもそう思う事にするっ!
「冗談に聞こえないんでやめてもらえます?」
「「結構、本気だったv」」
「・・・・まじでか。」
「「くすくすww」」
恋愛成就・縁結びの街、と民に人気の錦麹の城下町は、男の俺にも恐ろしいほどのご利益があった。
「綱手様、誰からの便りですか??」
「・・・・・・・・猿飛先生からだ。」
「まさか召集ですか? だってまだ発作は・・・・」
「いや。 【同封の羽織を着て、大陸の賭場で負けまくれ】 だとさ。」
「・・・・・・・・・・・・・・は?」
「隠れんぼはお終いだよ、シズネ。 明日から賭場巡りをするっ!」
「賭場巡りって・・・・ そんなお金・・・・」
「ふ! 心配するな、経費は木の葉隠れ持ちだそうだ。」
「あひー! 太っ腹ですー! 綱手様、賭け事大好きですから嬉しいでしょう?」
「ああ。 だが・・・ 負け続けろとは。 何かデカい作戦の一部なのかもな。」
「ですね! 三代目火影からの密書ですもん、そうに決まってますよ!」
「よし、ならカモネギと呼ばれるぐらい負けまくってやろうじゃないか!」
「あはは! “伝説の三忍”ならぬ、目指せ“伝説のカモ”ですね?! くすくす!」
「ぁ、可愛いv この羽織、【賭】って背中に入ってます!」
「相変わらず猿飛先生のセンスは・・・・」
「トントンに御揃いのミニ羽織つくってあーげよぉっと! トントン〜 おいで〜v」
「シズネ、お前のセンスも・・・・ 謎だな。」
えっと・・・・ なんてったってアイドル三代目?(古い:苦笑) ははは、いつもかv(爆) 聖