命の代償 8
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火影に忠誠を誓うコトは、火影を神聖視するコトじゃない。 火影だってオレ達だって人間。
ただのお爺ちゃんとして接する忍びは必要だヨ。 自分も人だと思い出させてくれる存在だもん。
前に三代目が言ったっけ。 『過ぎた権力を持つと、己が初心を忘れ傲慢になり易い』って。
これはナニも要人に限ったコトじゃない。 力と直結してるオレ達忍びは特にそう。
だから海野中忍からの書簡で贄の印をみつけた時、三代目もこう思ったんだろうネ。
錦麹の城主は我が子の死を受け止められず、民の命を犠牲にして禁術にすがったか、って。
オレ達だってつい今さっきまで、海野中忍からお家バカの話を聞くまでは、そう思ってたし。
暗部は三代目の近くにいるじゃない、だから考えも近い。 火影の私兵、当然なんだけどサ。
でもそれだけじゃなく、様々な視点からの見解が必要なんだよネ。 こうして現状を捉える忍びが。
若の遊び相手だかナンだか知らないケド、城の中のガキんちょなんて、普通気にしないでショ?
海野中忍は暗部の観点では感じなかっただろうコトを感じてくれた。 ホント、貴重な存在だーヨ。
三代目のコトだからオレ達を城へ手引きしたら帰って来る様に言ってるんだろうケド。 絶対ダメ。
海野中忍が贄の刻印をつけられてるコト、そんなの三代目にわざわざ知らせる必要ないヨ。
自分の為に動いてくれた中忍を犠牲にしてたかも・・・ なんて思い、させたくないでショ?
・・・・・ン? ビシッと・・・・ ナーニ?? 話、続けてもイイ? あ、そう。 ンじゃ。
まずは術者の抹殺が優先事項。 海野中忍に贄の印がついてるコトをヤツが知ればおびき出せる。
ホラ、さっきも言ったケド、偶然でもナンでも忍びに贄の印がついたなら、そりゃ欲しいって。
早老病っていう不治の病を進行形で食い止めてるなら、若の為にはもってこいの贄でショ。
そこいらの子どもより長持ちするだろうし、ナニより強い生命力の源 チャクラ質を持ってんだもん。
「海野中忍を囮と言ったのは、そのマンマの意味。 術者を特定できるでショ?」
「贈命呪印を発動させる為には、術者が必ず贄の印に触れる必要があるんですよ。」
「アンタの生命力を若様に与えるパイプ役なんだ、術者は。 必ず姿を現すさ。」
「・・・・心配するな、魂を吸い取られる前におれ達が始末してやる。」
「少しぐらい生気を吸われても平気・・・・ ですよね?」
「「「「・・・・・・・・・・・・。」」」」
あのネ? オレ達変装してて面つけてないから、普通の隊員だと思ってるみたいだケド。
獲物が大名だから、少人数でも任務を迅速に遂行する為に戌・猫・猿・酉の頭が呼ばれたの。
生気の欠片だって術者に与える気はないから。 だてに四天王なんて呼ばれてるワケじゃないヨ。
錦麹のお家ぐるみで忍びを雇い、禁術を使わせていたなら楽だったけどネ。 ・・・・ナニが楽か?
楽っていうのは、道を外れてたら全て弥平 小太郎のせいにして皆殺しだったのに、って意味。
城内の者を一掃すればイイだけ、表向きの理由は“家臣の乱心”に決定だもん。 ネ、楽でショ?
「ヤツにはちゃんと役目がある。 ヤツの大好きなお家の為になる役目がネ。」
城にいる若様の遊び相手には同じく贄の刻印があるんだよネ? で、不治の病が回復してる。
お家崇拝と名高い生真面目な家臣が、贄の印の意味をはき違えて木の葉の忍びに教えるワケがない。
錦麹の殿と奥方も同じだヨ。 禁術を行使してるとしたら、火影の使いに声なんてかけやしない。
つまりそう思い込まされてる、ってコト。 どう考えても他里の忍びの仕業だヨ、間違いなくネ。
ウチに気づかれずに火の国の大名家中枢に入り込む為、長期に渡る綿密な計画が練られたはずだヨ。
オレ達の任務は城に入り込んでるヤツの始末に変更。 で“おしどり夫婦も狩る”コレは決定事項。
「え?! だってお二人も知らない事で・・・・」
「知らなかったとはいえ、この現状を招いたのは自分たちだーヨ。」
「死にゆく我が子の事を考え過ぎて、目が曇っちまったのさ。」
「国の一部を預かるという事は、そこに住む民の命を預かる、という事です。」
「知らぬ存ぜぬが通るのは家臣まで。 要人に関しては無知が何よりの大罪だ。」
恋愛成就の街だの恋人の街だの言われる様になって、錦麹の城下が人気なのは知ってるよネ?
ケド残す血がなかったら人気のお家も断絶しちゃう、もちろん城下町も廃れて、民は路頭に迷う。
簡単だヨ。 純愛ごっこしたきゃ、身分もその肩に背負ってる責任も全部捨てればイイ。
一夫一婦が悪いとは言ってない、根本的に要人が一般人と同じモノを求めちゃいけないダケ。
だって頑張って日々働いてくれてる民や、慕ってくれる民がいるからこその自分たちなのに。
だったらその民の期待を裏切らない様にナンとかするのが要人の勤めでしょーが。
あえてその選択をしたのは自分たち。 自分らだけが不幸? 跡取りが不治の病だからってナニ?
世の中には同じ病の子や子を失くす親が他にいないとでも? ま、どーでもイイけどネ、そんなコト。
国から託された城下の民を守るコト、それ以上に大切な要人の仕事ってあんの?
錦麹の城主はそれに見合う仕事を今迄ちゃんとこなしてた。 だから皆、黙認してるんだヨ。
本当なら国主の強制や里が介入したっておかしくはないよネ? 有名どころのお家柄ならサ。
でも黙認される条件の“城下の民を守るコト”をしてないなら、それはもう懲罰モノでショ、違う?
「そんな・・・・。 殿も奥方も、それはお優しい方々で・・・・」
「はっきり言うとさ、アンタの言う“優しい”だけの大名なんざ、必要ないね。」
「要人連中はどいつもこいつも曲者ぞろいだ。 おれ達 忍びとは別の意味でな。」
「跡取りに起こった不幸を受け止めるべきだったんだヨ、錦麹の城主は。」
「この先何人の子を犠牲にしてたと思いますか? 我が子の死をくい止める為に。」
「・・・・それは・・・・。」
・・・・プッ! 海野中忍、あんた分かり易いってよく言われるでショ? 納得いかないって顔。
こう考えればいいヨ。 さっきもチラッと言ったケド、錦麹家は国主をも黙認させてたんだヨ?
国主 時宗様が信頼してる大名の一人なの。 海野中忍も言ったよネ? 優しい人たちだ、って。
優しくて民にも人気、国主の信頼が厚い大名、バカがつくぐらいの忠臣もいる。 ・・・もしも。
もしそんな大名夫妻に城下の子を犠牲にしてると教えたら。 即、自害して果てるんじゃないの?
「ぁ・・・・・・。」
「「「「・・・・・・・はい、よくできました。」」」
例え今、オレ達が手を下さなくても。 いつか誰かが気づき、必ず城主はその責任を問われるヨ。
コトが明るみに出て、民から恨まれ非難された挙句、首が門前にさらされるよりもマシ。
要人の懺悔を子守唄に聞きながら死を確実にお届け、ってネ。 ま、こういうのもオレ達の仕事なワケ。
フフフ、まったく。 優しいのはどっちヨ、中忍のくせに道を外れた要人の心配なんてしちゃってサ?