命の代償 9
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海野中忍がボク達の到着を知らされていたので、すんなりと城内へ入る事が出来た。
少しばかり寄り道してきた事も、全てが無駄にならずに済んだしね。 現状もバッチリ把握できた。
運よくと言うか運悪くと言うか、海野中忍に贄の印がついてるから、難なく術者もおびき出せる。
禁術を使用してる他里の忍びの仕業、この際だから全部そいつに罪をかぶってもらう事にしよう。
どのみち有名どころの大名家一掃を予定してたから、手間ひまかかるのは覚悟の上だったしね。
「・・・・・ふっ。 顛末を考えるのが楽しそうだな、アズサ。」
「当り前さ、悲劇には美談がつきものだろ? さーて、どんな話にしようかねえ。」
「そういうのはアズサにおまかせ。 妙に凝り性だからネ。」
「じゃぁ、海野中忍は弥平さんに相談を。 後は打ち合せ通りに。 よろしくね?」
「は、はい。 了解です! では行ってまいります。」
納得できないって顔してたけど、そこはもうすっかり吹っ切れたみたいだ。 ふふふ!
張り切って部屋を出た海野中忍は、これから超生真面目な家臣、弥平小太郎の元へ相談に行く。
ん? ボク達?? ここで待ってればいいだけだから特に何もしないよ、今はね。
自分でつけてもらったスタンプだけど、子ども達に面白半分でつけられた事にするんだよ。
腕のインクが落ちなくて困っている、という感じでね。 忍びに贄の印がついた事を知らせる。
するとあのお家馬鹿は、木の葉の忍びになんたる事を、とかなんとか必死になるだろう。
絵柄をどうしたら消せるのか、それをスタンプだとすり込ませた奴に知らせる、間違いなくね。
木の葉の忍びに贄の印がついた事を知った術者は、今夜闇にまぎれてやってくるよ、きっと。
インクを消すという口実で、チャクラ質の宿った魂を抜く為に、海野中忍が滞在しているこの部屋へ。
あ、戻って来た。 ・・・・・あはは! そんなに謝ってたんだ?! 堅物だからなぁ。
じゃあひょっとして今夜じゃなくて、弥平に急かされてすぐにでも来ちゃうんじゃないの?
そうだね、安全策をとってボク達は姿を消すよ。 うん、結界は大丈夫・・・・・ ん??
忍服に着替えた方がいいでしょうか、って? そうだね、腕をみれば贄だと分かるだろうけど。
奴は木の葉の忍びが贄だと思い込んで来る訳だし。 いや、実際にそうだけど、油断するよね。
海野中忍ってパッとみが忍びにみえないもん、その着物姿だと余計に。 忍服の方がいいかも。
そうこう言ううちに、海野中忍は部屋の押し入れから忍服を取り出して身に着け始めた。
「・・・・よし! これでいつ術者が部屋を訪ねても大丈夫です!」
「完璧な囮だよ。 アンタは書簡配達に来ただけなのにね?」
「・・・・・・ふっ。 遅かれ早かれ事は発覚しただろうがな。」
「行方不明者が多発してる、とかサ。 錦麹 虎丸、奇跡の回復力! とかネ。」
「殿と奥方が潔白でも、そうなってからでは怒れる民衆に罵られるだけ、です。」
「ええ、分かっています。 今ならまだお二人の名誉だけでも守れるんですよね。」
「ハイハイ、そんな淋しげな顔しなーいの! 仕方ないじゃない、要人の後始末は・・・・」
「違います! これは皆さんのお気持ちを考えるとその・・・・ 苦しくてですね・・・・」
「「「「・・・・・。」」」」
うわー。 忍びにしては優しすぎるなって、さっきも思ったけど。 あのね、ボク達は暗部だから。
相手に同情してたら狩る者も狩れない。 そんなの考えたら自分を真っ先に殺したくなるしね。
殺しを生業にしてる部隊なんだ。 それができなくなったら組織が崩壊してしまうじゃないか。
適材適所なんだよ、だからこうやって暗部の各部隊を任されているんだ。 三代目火影からね。
「・・・海野中忍って三代目の前でもそうなんですか?」
「「・・・・・・・・・・・。」」
「ホラ、そういう真摯な感情って慣れてないのヨ、オレ達。」
「すみません! 決して皆さんの技量を疑った訳では・・・・ 俺・・・・」
「あのさ・・・・・・ それ。 その親父様が作らせた帯。 見せておくれよ。」
「・・・・そうだな。 木の葉のマークが浮き出るのはどういう仕組みだ?」
「帯・・・ あ、はい、これです。 どうぞ・・・・・」
「くすくす! アズサさんとカオルさんも照れてる・・・」
「ちょいと! 余計な事を言うんじゃないよ。」
「おれは純粋に帯のチャクラ糸に興味があるだけだ。」
「ま、そーいうコトにしておきまショ? フフフ!」
これは三代目が側に置く訳だよね。 海野中忍の感情はまっすぐで、言葉は直接心に入ってくる。
あのカオルさんもアズサさんも話をそらすのがやっと。 実をいうとボクも。 多分、カカシ先輩も。
本当なら“心配してくれてありがとう”とかを言うべきなんだろうけど。 そんなの口に出せないよ。
今迄何人殺したと思ってるの? どんな事もやって来たんだ、率先して自らの手を汚してきた。
やめてくれるかなあ、そんな目をしてボク達の闇を照らそうとするのは・・・・・ もうっ!
懐きたくなっちゃうじゃないか! ゴロゴロと喉をならして舐めまわしたいよ、今すぐっ!
「わわわっ!! ちょ・・・・・ ちょっと んっ! あはは、くすぐったいですって!!」
「ンー ペロペロ・・・・」
「んー ぺろぺろ・・・・」
「カ、カカシ? テンゾウッ! ちょっとアンタ達っ!」
「・・・・・おい、何やってるんだお前ら、離れろ。」
「 び、吃驚した・・・・・ 」
「「・・・・・・・・・・?!」」
何って、決まってるじゃ・・・・ え?! カカシ先輩も?! 何やってるんだボク達はっ!
アズサさんとカオルさんが、海野中忍に群がっていたボクとカカシ先輩を引っぺがしてくれた。
物足りない・・・・ じゃなくて! なんで急に海野中忍を舐めたいだなんて思ったんだ??
「・・・・・カカシ先輩、ボク達どうしちゃったんでしょう?」
「・・・さっきの海野中忍の感情がちょっと嬉しくてサ・・・・」
「ボクもです。 どう反応したらいいかわからなくて・・・・」
「ウン。 こうやって海野中忍の顔を見返した途端・・・・・」
「ンー ペロペロ・・・・」
「んー ぺろぺろ・・・・」
「っ!! ま・・・・・ またっ?! なんで・・・ んんっ!」
「 アンタ達、いい加減におしっ!! 」
「・・・・・・こら。 余計な手間を増やすな。」
「「 っ!!! ご、ごめん、海野中忍っ! 」」
「 い、いえ・・・・・・・ 」
一体どうしたんだ?! アズサさんとカオルさんが止めてくれなかったら何をしていたか・・・・
おかしい・・・ ボクとカカシ先輩はどういう訳か海野中忍を舐めまわしたくて仕方がない。
まるで吸い寄せられるみたいに・・・・ 無性に舐めたくなった。 ・・・・・なんでだ??
“顔を見返した途端”とカカシ先輩が言った。 ああそうだ、ボクもそうだったと思って顔を見た。
そういやさっきも、この目がボクの闇を照らしそうだと・・・・・ 目? 目を見たからか?
でも門前で出迎えてくれた時も、この部屋に案内してくれた時も、普通に顔をみてる。
ボク達四人はいつもと違って面をつけずに素顔をさらけ出してるんだから、目も合いまくりだ。
落ち着ちついて考えよう。 アズサさんとカオルさんは変化なし、さっきと今では何が違う?
「・・・・単純に考えて海野中忍だな。 着物と忍服の違いだろう。」
「見たまんまじゃないか! そうじゃなくて・・・・ いや。 帯はどうだい?」
「「・・・・・・もしかしてこの刺繍が・・・・」」
「「・・・・・・呪印の封印・・・・ とか?」」
「・・・・あの。 御取込み中すみません、気のせいじゃなかったら、外に誰か・・・・」
「「「「・・・・っ!!」」」」
気のせいなんかじゃない、奴だ。 大丈夫、ボクがこの部屋に張った結界は完璧・・・・・・ なはず。