命の代償 2   @BC DEF GHI JKL MNO P




俺は海野イルカ、木の葉隠れの中忍。 何というか中忍だけど特殊・・・というか特別?? いや。
身体能力なんかは普通・・・ よりも、ちょこっとだけ中忍の中でも上だと思っていたいお年頃だ。
あー 自分で言ってて虚しくなってくるけど中のやや上ぐらい?? まあ、忍びとしては至って普通。

じゃあ何が特殊なのか。 ズバリ呪印もちだ。 ・・・ん? 呪印といっても死ぬとかじゃないぞ?
かといって役立つものでもなく・・・ とにかく、命に関わる様なオドロオドロしい呪印じゃない。
でもまあ、そのせいで三代目の側に置いてもらってるから、木の葉の中忍としては特別待遇だろ?
 
「珍しいですね。 さっきからずっと遠くを眺めてばかりですよ?」
「・・・・・・ふぅ。 もうそろそろだと思おての・・・・」
「・・・・?? 何がですか?」

「錦麹家より悲報が届くはずなんじゃ・・・・ 遅くても明日、明後日には・・・・。」
「悲報って・・・・ くすっ! なんで暗い知らせ決定なんですか。」

なんだかなぁ。 本当にらしくない。 そりゃ三代目は遠見の水晶玉を作れるほどの腕前だよ。
そんじょそこらの忍びじゃ、束になっても敵わないぐらいの知識と経験を持ち合わせている忍者。
俺の呪印も発動したら抑えてくれるし、実際、こうしていつも側に置いてくれているけど。

そんなの分かってるけど万能じゃない。 いくらなんでも未来を予知するなんて無理な話だ。
なのに悲報だと断定して勝手に落ち込んでる。 しかも何? 錦麹?! 大名家の家名まで決定?!
まさか三代目は・・・・ もしかして。 有り得ないけど予知する忍術を開発したとかいう?!



「よいかイルカ。 人間生きてさえいれば大概の事はどうとでもなる。 そうじゃろ?」
「・・・・・・・はい。」
「じゃが変えられん物は・・・・ 確かにあるのじゃ。 受け入れなければならん事も。」
「・・・・・・・ええ。」

「・・・もしや。 予知パワーを兼ね備えた予言忍者だと公言するおつもりで?」
「馬鹿もんっ! 根拠があるのじゃよ! 想定できる根拠がっ!」
「で・・・・ですよねー? や、三代目ならありかなー とか。 はははは・・・・」
「まったく・・・・・・・。」

なーんだ、違うのか、残念。 三代目なら、そんな凄い能力を開発しても不思議じゃない気がした。
俺の呪印が発動しかかった時、俺でさえ気づかないのに真っ先に三代目が抑えてくれる。 だから。

でももし本当に、未来を予知する能力とかが三代目に備わったら、きっと世の中平和になると思うぞ?
大陸の隠れ里の影の中で三代目は、平和主義者で通っているからな。 でも温和と平和は違う。

今、三代目が言った“変えられない物”や“受け入れる事”と同じ。 俺だってその違いは分かる。
温和や変えられない物というのは外からのイメージだ。 傍観したり静観したり、周りからの視点。
平和や受け入れる事は、内面。 意識して実行しないと出来ないもの、行動力の事。 全然違う。



「お主のその何事にも囚われぬ前向きさは、一種の武器じゃな?」
「ぅっ。  それは・・・ 褒められてるのでしょうか、それとも・・・・・」
「おおいに褒めておるのじゃ。 打たれ強いのはよい事じゃぞ?」
「ははは! 呪いにだって負けませんから! 三代目もいるし! へへへ!」
「ほほほ。 錦麹家の者も・・・・ その欠片でも前向きであれば良いのじゃが・・・・のぉ。」
「・・・・・・・・・・・。」


何かしらの根拠があるって事は。 近々・・・ 大名の錦麹家に不幸な出来事が起こるという事なんだ。
そしてそれは・・・・ 変えられない物で、受け入れなければならない事。 ・・・そうなんですね?
三代目、俺。 走って来ましょうか? 大名家の使いの者よりは足が速いと思いますよ?

「三代目もその知らせが来たら・・・・ 多分、嫌な役割を演じなければならないんでしょう?」
「そうじゃな。 ただ待っておっても・・・・ 何も変わらん、時が過ぎるだけじゃしの。」
「やっぱり。 なんか淋しそうだと思ったんですよ、俺。」

「・・・・書簡を書くとしよう。 イルカ、届けてくれるか?」
「はい、もちろんっ!」



なんだか遠くを見つめて淋しそうだった三代目。 聞けば、錦麹家の悲報を待ってたから、だって。
その知らせが来たら。 きっと三代目は何かしらの決断をしなくちゃならないんだと、そう思った。
だって。 いくら温厚で知られている三代目でも、悲報の一つや二つで、あんな辛そうな目はしない。

ひとっ走りしてきますよ。 三代目の・・・ いや、お年寄りの辛そうな顔は見たくないもんな?