命の代償 4   @AB DEF GHI JKL MNO P




つまり、三代目からボク達への“頼み”とは、表向きの事件を作り上げて錦麹家を取り潰す事。
自国の大名を狩るんだ、民と国主が納得する様な理由がいる。 それが名家であれば余計にね。

なぜ一通の書簡だけでそう決断したのか。 実は錦麹家に潜っている中忍がいたからなんだ。
三代目の手元にあった書簡は情報部所属の伝書鷹が運んだもので、その中忍からの報告書。
別に錦麹家に問題があった訳じゃなく、中忍の当初の任務は三代目の書簡を届けるだけだったらしい。

錦麹家に潜っていて内情を把握している海野中忍と合流すれば、最善の対策が立てられるな。

 
半年ほど前、里に依頼をしに来た錦麹家の使者がいたんだって。 神の手を持つ医療忍者に頼みがあると。
神の手を持つ医療忍者とは、血液恐怖症克服の為、里を出てから音沙汰のない三代目の弟子 綱手姫の事。
里と連絡を絶って十数年の人間の居所を調べてたとして、本人と接触するだけでも半年はかかる。

更に綱手姫は血液恐怖症、最高峰の医療忍術も使えなければ意味がない。 求めには応じないだろう。
というか、応じたくても出来ないんだ。 本当なら火影を、三代目を支えているはずなのに出来ない。
まだなんだ、まだ克服出来ないでいる。 彼女は里に帰って来たくても帰ってこれないんだよ。



三代目は、錦麹家の要望“神の手を持つ医療忍者の往診”には応えられない旨を伝えたんだって。
何もしなかった訳じゃないよ? 里の医療班の中で最高の医療忍者チームを代わりに行かせた。
でも現実は厳しいよね、そんな優秀なチームでさえ、錦麹家の任務依頼は果たせなかったんだ。

早老病〈そうろうびょう〉という不治の病で、通常の人の6倍の速さで細胞分裂が起こるらしい。
おおよそ4〜8倍の速さで年をとる、という病。 とてもじゃないが20年も生きられないだろう。
やっと錦麹家待望の跡取りが生まれたというのに、その子は不治の病を持病として抱えていたんだ。

ほんの幼少の頃は病気だとは誰も思わなかった。 見た目も子供、行動も子供そのものだったから。
けれど子供のかからない成人病を多発する様になり、ウチの医療チームの往診で始めて病名が判明。
医療忍術で細胞そのものを取り出し本人を複製しても同じ細胞だ、その子もまた同じ病にかかる。

大名家の跡取りとして何不自由なく生まれた若殿様の未来は、延ばす事の出来ない短いものだった。
“死”はどこの誰にも平等に訪れる、身分が高かろうが低かろうがね。 ボク達忍びだって同じだ。

 

「・・・・ふん。 なかなかのお手柄じゃないのさ、潜ってる中忍とやらは。」
「何かしらの異変を感じたんだろう。 ・・・・正規の忍びにしては上出来だ。」
「現場じゃ、言われたコトしかデキないヤツは使えないもんネ? 柔軟だーヨ。」
「表の中忍のモットーは【任務を遂行後は速やかに帰還する】ですからね。」

「・・・・なあ。 ・・・一つ疑問なんだが。 どうやって合流するんだ?」
「海野中忍・・・・ でショ? ・・・・・テンゾウ、知ってる?」
「へ? いや、てっきりボク以外は皆知っている中忍なのかと・・・・」
「な、なんだい、なんだいっ! 額当てぐらいしてんだろ? ウチの中忍なら!」

しまった、初歩的ミスだ。 三代目が“お主らといい、あ奴といい・・・” なんて言うからてっきり。
ボクより暗部歴の長い他の誰かが、中忍の顔を知っているものだとばかり・・・。 非常にまずい。
迅速に潜ってる海野中忍と合流して情報を収集、確実に錦麹家の面々を狩るつもりが・・・・。

「それはないだろ。 奴は潜ってるんだぞ?」
「情報部の伝書鷹を使ったってコトは・・・・」
「気配を抑えてる、って事ですよね?」
「ちっ! なんなんだい、まったく!」

そうなんだ。 カオルさんの言う様に、チャクラを抑えてただ潜ってるだけの忍びは感知出来ない。
言い方は悪いけど、未熟な下忍なら抑えきれないチャクラ質が漏れていて、感知は容易にできる。
でも中忍クラスになると意識的に気配の漏れを防ぐから、ほぼ一般人と区別がつかないんだよ。

三代目の意を汲んで書簡配達に行った中忍。 そこそこデキるじゃないかと話していたばかりだ。
城の人間と区別がつかなくて一緒に狩っちゃった、なんて報告を三代目に出来る訳がない。
ボク達暗部のモットー“迅速かつ確実に”を、それこそ確実に実行できないよ、これじゃ・・・・

「三代目が式で知らせてくれてるといいんだが・・・・ な。」
「ウン、余計な手間はかけたくないもんネ、ただでさえ・・・ ネ?」
「そうさ、ただでさえ自国の大名が絡む時は面倒なんだからさ。」
「まあまあ。 もしかして向こうが気づいてくれるかも、ですよ?」

「「「・・・・・・・・・・・・・・。」」」

・・・・とは言ってみたものの。 多分、いや。 絶対にボク達を感知する事は中忍には無理だろう。
自慢じゃないけど、火影直属の部隊を任されてる長なんだよボク達は。 だからとる道は一つ。
変装するか変化をするかして、気配を消さずに堂々と正面から錦麹家を訪ねる事だ。

・・・・・あ! 綱手様のふりして往診に来た事にすればどうですか? どうせ本人は行方不明だし。
ボク達は綱手様の護衛兼、千手医療チームという事で! ボク木遁使えますし、信憑性はありますよ?