鬼達の金棒 11
@AB
CDE
FGH
IKL
MNO
P
・・・・・ふぅ。 一番の劣等生? 暗部四天王の中で?? それなら俺達正規の忍びの立場は?
どれもちゃんと説明してあげれば、完璧にこなすんだぞ? そんな言葉とは無縁の忍び達だよ。
長としてのプライドが邪魔をして、聞けなかっただけなんだ。 でも俺には子供で接してたから。
俺は皆の先生で、どんなくだらない事を質問しても大丈夫・・・・ それだけなんだよ、ほんと。
その証拠に今でも家を訪ねて来る時は子供の姿だ。 カオルさんもアズサさんも、子供で質問にくる。
子供の姿でなら何を言っても、どんなヘンテコな質問をしても平気だ、って思ってるんだろうな。
それと、根本的に変わらなくても別にいい。 俺の言った事を思い出して実行出来ちゃうんだから。
成功の秘訣は真似する事から、ってよく言うだろ? 形だけでもそうしていれば、いつか身につく。
いちいち過去の例え話を思い出して置きかえなくても、自分の行動は自然と蓄積されて行くもんだ。
いつの間にかそれが当たり前の様になっていて、俺のレクチャーなんか忘れちゃうかもしれない。
うん、それでいいんだ生徒は。 俺は教師、四人に卒業記念シールを渡した時もこう思ったよな。
いつか生徒は自分の手元を離れていく、俺自身が一番知っている事だ、淋しくはない・・・・って。
そう思ってるけど、毎回毎回淋しいのは仕方がない。 まあ・・・ あの四人は特別な元生徒だけど。
だいたい、思い出して置きかえるだけの余裕なんて、普通ないだろ。 先生より優秀な生徒ってどうよ?
今回の任務は解説係兼、仲介係だと思っていたら。 俺にも中忍として、重要な役割が出来た。
この話が纏まれば、木の葉とその里は友好関係を築けるし、行く行くは国同士の交流も見込まれる。
そう、この巻物に封印してある忍びを、今から証拠として引き渡す役目だ。 密約、ってヤツ。
すっかり雅様は正義の味方よろしく動いて下さっている。 気分は悪を正すヒーローなんだろうな。
その雅様に言って、お抱えの里候補の中で一番秀でてる里の忍びを、この城に呼んでもらってある。
ちょっと緊張してき・・・・ いや。 自信を持とう、暗部四天王が先生と呼んでくれてるんだから。
ウチの四天王がパーフェクトに任務をこなして来るのに、俺が交渉に失敗する訳にはいかない。
「国内の警備の最中、お呼び立てして申し訳ありません。 俺は木の葉隠れの忍びです。」
「我らは花巻〈はなまき〉の里の忍びだ。 雅様の使いの者より重要な話があると聞いたのだが。」
「そう言って来てもらいましたのは、国主への報告は皆さまからの方がよろしいかと思いまして。」
「?? 国主への報告・・・・ それは一体どういう・・・・??」
「まずは。 なぜ木の葉がこの国に来て雅家に滞在しているのか、その理由をご説明いたします。」
「「「・・・・・・・・・・・。」」」
他里の、それも忍び五大国の中のひとつ、火の国の木の葉隠れがなぜここに? それが一番の疑問だ。
交渉でまず最初にしなければならないのは、興味を持たせる事と、木の葉に戦意はないと伝える事。
“国主への報告は”と言った事で、花巻の忍びは興味を持った。 後は入国の理由を話すだけ。
木の葉隠れだけじゃない、忍び五大国の各隠れ里が動く時は、それだけで他里が警戒するんだ。
大が小を吸収したがるのは世の常。 大陸にあるたくさんの忍びの里も、そういう意味で警戒する。
密約する時に一番大事なのは、まずこちらの手の内を見せる事。 この場合は木の葉隠れの行動だ。
「なるほど、話は分かった。 我が里にとって、この上なく旨い話ではあるが。 確証がない。」
「当然です、そう言われると思いました。 生き証人を捕縛しております。」
「生き証人・・・・ 薬湯〈やくとう〉の里の忍び・・・・ を?」
「はい、この国で皆さまと同じく警備中の忍びを。 お引き渡し致しますのでお確かめ下さい。」
見たところ花巻の里の忍びは上忍。 この封印の巻物の中に入っている忍びの頭ぐらい覗けるだろう。
そうすればウチの言っている事が嘘ではない、と分かってもらえる。 幾多の推論より確実な証拠を。
そう、先ほどカオルさんが殺しかけた薬湯の里の忍びの事だ、こうして生かしておくから証拠になる。
「これは・・・・ なんだコイツら! 国の警備をするフリをして・・・・ ミイラを?!」
「薬湯の里は、最初から天津の国の隠れ里になるつもりなどなかったのか・・・・」
「我らが国を見回っている間に・・・・ コイツらは・・・・ これでは忍びの信用を無くす・・・」
「一忍びの里が馬鹿げた事をしてくれたおかげで・・・・。 里長にどう報告すればいいのだ・・・」
「我らがこんな事を国主に報告しても・・・・ 忍びの里への不信感は払拭できぬ・・・・・」
「まさか。 この事実だけを国主に報告するおつもりですか? 何の為の密約でありましょう。」
「「「?!?!」」」
「これは大名 雅様だけがご存知の話。 各大名にも国主にも伝えられておりませんよ?」
「いやしかし・・・・ ミイラが紛失したと各大名が騒ぎ出すのは・・・ 時間の問題では・・・・」
「各大名家の墓守が、それぞれ内密で調べてくれたのです。 要人は皆、まだ誰も知りません。」
「「「?!?!」」」
「ちなみに国内を警護している里の情報を国主から頂いたのは雅様です。 木の葉では御座いません。」
「「???」」
「自国の大名が国の隠れ里候補の仕事ぶりを気にしても、何の不思議もありません。 でしょう?」
「それでは・・・・・ 国主は木の葉の存在をまだご存じでない・・・・ と?」
ええ、そうです。 国主への報告というのは、皆さまがミイラ泥棒に気付き、薬湯の里を潰す事。
その為の生き証人でもあります。 忍びの里同士がただ争ったのではない、という確たる証拠です。
この国の要人のミイラを人知れず盗み出す為だけに、隠れ里候補への名乗りを上げた不届きな里。
とてもじゃありませんが。 見過ごせませんよね? 皆さまは一生懸命その座を争っていたのに。
先ほどご説明しました通り、木の葉が雅家の墓守に受けた任務依頼は、ミイラの捜索と奪還です。
実は木の葉隠れも少々不機嫌に思うところがありまして。 里長の首だけはこちらに頂きますが。
ミイラを霊棟の棺の中に戻せば任務は完了です。 後は皆さまと大名 雅様とで、どうぞよしなに。
「「おお・・・・ なんと感謝して良いか・・・・」」
「「さすがは忍び五大国の隠れ里・・・・ 我ら忍び里の目標でありますな・・・・・」」
「「この場にて。 確実に我が花巻の里が薬湯の里を叩くと、お約束いたしましょう。」」
「皆さまが誇り高き忍びであると思えばこそ、お声かけを致しました。 ほっとしております。」
「「何を申される、木の葉が動いてくれていなければ、この度の事は・・・・・」」
「いえ。 本来なら貴重な証拠である里長の首をお渡し出来ずに・・・ 申し訳ありません。」
「「そんなこと! 生き証人と大名 雅様の証言があれば、それでもう十分です。」」
・・・・・・もうそろそろ。 ウチの忍びが戻って来ると思います。 ミイラで何を目論んでいたのか。
彼ら四人に聞くとしましょう。 ・・・・?? 早すぎる?? いえいえ。 そんな事は御座いません。
なにしろミイラ奪還と長の首を狩りに行ったのは・・・・ 火影直属 暗殺戦術特殊部隊の各部隊長ですから。