鬼達の金棒 9
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昨日謁見で雅様に言った事は全部適当。 ミイラが復活の儀式に使われてるだの、研究されてるだの。
あれは穢土転生の術のような忍術、死者を甦らせる事に関心を持たせない為に、ボク達が作った話。
実際は、盗まれたミイラが何に使われているか、なんてのは分かってない。 全くの謎なんだ。
まあ、盗んだのが忍びだという事だけは分かっていたからね。 ここぞとばかりの警告を込めて。
もしそんな考えに賛同して資金援助でもしたならどうなるか。 あれで分かってくれただろう。
事実、雅様は“墓荒らしは国賊も同然”だと思ってくれた。 見事にすり込まれてくれたよ、ふふふ!
元々この国のミイラ葬は、死者がその体に戻る事を前提にしたモノだから、ミイラは神聖なモノ。
それを盗むは大罪、国に尽くした生前の要人への侮辱は死者への冒涜だと、すんなり結びつく。
普通なら墓荒らしは、墓に埋葬されている金銀財宝の物品が目的。 ミイラだけを盗むなんて。
火影様も一体何に使うのかさっぱりじゃ、と言ってたけど。 とにかく罰当たりな里だよね。
雅様の集めてくれた情報から全てが分かる。 どこの里が一歩リードしてるのか、とか。
ここの里は次に落とされるかもな、とか。 だからボク達はそんなに悩まなくてもいいんだ。
もちろんそれには、的確に解説してくれたイルカ先生の意見が反映されているんだけどね。
ボク達は自他共に認める優等生、イルカ先生がこれが正解、と言ってくれたらすぐに取り入れる。
「専属候補の忍びの里は、全部で五つ、その中から順に落とされていくのか。」
「じゃぁ当たりをつけるとすると・・・・・ ブービー賞の里だね。」
「・・・・・・そうだな。 ケツから二番目の里が怪しいだろう。」
「お払い箱にならない程度に報告だもんネ・・・・ ウン、ソコだヨ。」
「・・・・・・・・・・。」
・・・・?? イルカ先生? どうしたの? 突然ウルウルしちゃって。 あ、さては感動してるね?
ふふふ、そうだよね。 一年と少し前までのボク達ならこうじゃなかった。 基準は自分達だし。
三代目の名代だという自覚はなく、一つの任務として迅速かつ確実に、だけで遂行しただろうね。
今回も“ボク達が行かなくてもいい”なんて思わなかったよ、微塵も。 ただ勅命として動いた。
「昨日も思いましたが。 少しの解説でこんなに・・・・。 やっぱり皆さんは里の誉です。」
「「・・・くすっ! やっぱり。」」
「・・・・・・なんだい、なんだい、イルカ先生!」
「・・・・・・っふ。 ・・・忍びが泣くな、恥だぞ?」
「・・・こういうのは。 嬉し泣きっていうんです。 俺は恥だなんて思いません!!」
「「「「・・・・・・・・・・イルカ先生らしい。」」」」
「今、以前の様に皆さんが子供の姿なら・・・・ 全員を抱きしめて号泣してます、俺。 ははは!」
一年と少し前までのボク達が、三代目に今回のこの任務を振られたとして。 少し想像してみた。
任務内容はミイラの捜索と奪還、穢土転生の術への興味を持たせるな、と言われたとしたら・・・・・
ミイラを盗んだ里を潰す事。 どの里が疑わしいか・・・・ なんて、いちいち情報を集めなかったよ。
この国に出入りしている忍び全員を捕まえて吐かせ、情報を奪う。 で、ミイラを盗んだその里を潰す。
禁術の事を口にしようものなら依頼人も殺す、術に興味を示したら雅様だけじゃなく雅家を滅ぼした。
関係者全員が死ねば取り戻したミイラも必要ない。 適当にそこらへんにブン投げて帰還しただろう。
・・・・そうするとどうなるか。 捕まって拷問を受けた無実の里の忍びは、ボク達を恨む。
雅様や朱鷺さんを殺した場合は足がつく。 木の葉に行った事を少なからず誰かに話しているだろう。
そしてミイラをブン投げたとしたら、やっぱり木の葉は恨まれる。 それこそこの国の民全員から。
国に尽くした要人のミイラを辱めた忍びとして烙印を押され、目の敵にされただろうね。
そうしてまた以前の様に三代目に言われるんだ。 “今度はもうちょっと上手くやるのじゃぞ”って。
ため息交じりに、済んだ事は仕方がないな・・・ みたいな態度でね。 今思うと・・・・・。
今迄ボク達のとって来た行動は、本当の意味での里の為ではなかったかもしれないんだ。
それでも問題が起こらなかったのは、ボク達に力があるから。 木の葉は大陸一の忍びの里だから。
皆、その力の前に屈していただけなんだ。 木の葉に逆らうなんて馬鹿だと、力で制していた。
長いモノには巻かれろ、出る杭になって打たれるな。 そう思われてても仕方がない行動だった。
でも木の葉は他里より民に慕われている。 それはなんでか。 正規の忍び達の努力の賜物なんだよ。
先生はボク達の事を誉だ、と言ったけど。 里のイメージを良くしてくれてるのは正規の忍び達だ。
忍びだから力で制する事も必要。 でも先生も言った通り、それは暗黙の最終手段・・・・・ なんだね。
「・・・すみません、感動してる場合じゃなかった。 盗んだ目的も分かってないのに。」
「ウン、今からこの里へ行って調べてくるよ。 で、ミイラも奪還してくるネ。」
「・・・・・イルカ先生、このお抱え候補最有力の里に・・・・ 恩を売れますよ?」
「? ・・・・・・・!! そうですね! そうしましょう!!」
「?? なんだい? どういう事だい??」
「・・・・・・・・・・・おれに聞くな。」
「くすくす! さすがです。 もう何も解説しなくていいんじゃないでしょうか。」
「「・・・・・・・・・・。」」
「ふふふ! では今も無言のアズサさんとカオルさんの為に、解説をしますか!」
ボクとカカシ先輩はイルカ先生とずっと一緒に居て、たくさんの“今更”を教えてもらっている。
だからこうやって差がついちゃうのかな? アズサさん、カオルさん、本当に気付きませんか??
この国のお抱えの隠れ里になりたい里。 ここぞとばかり、忍びの里のPRが出来るじゃないですか。
「「!!! そうか、手柄を譲ってやれば・・・・」」
「はい、大正解!! 木の葉に来た依頼は“ミイラを取り戻してくれ”ですから。」
「同じ様に国に出入りしていたのにサ、国を欺いていた里があったら?」
「忍びの里はやはり信用ならん、と国主が思う前に潰せるんですよ。」
「そうだね、その里は自分達の威信にかけて欺いてた里を潰すだろうし!」
「・・・・・・・・木の葉は痛くも痒くもない、高みの見物、か。」
「素晴らしい!! さすがです!! それにもう、三代目の真の目的は果たしてますしね。」
「「「「????」」」」
「三代目は、禁術に関する興味を持たせない事と、朱鷺さんに念を押したかっただけですから。」
「ウン、それならもう完了してるネ?」
「里長の首だけ狩って来て、雅様に駄目押ししておく、ってのは・・・・ どうだい?」
「“頭を狩る、後は他の忍びに任せる”・・・・・正規の忍びへの任務干渉と同じだな。」
はは、やっぱりカオルさんとアズサさんは・・・・ イルカ先生のレクチャーを丸暗記してたのか。
まあ、ボク達も前は似たり寄ったりだったけどね。 二人より先生と居る時間が長い事に感謝だ。
こうやって、その時にとる行動をレクチャーに当てはめていくと、ちゃんと気付くでしょう?
どうやったら相手と意思の疎通を量れるのか。 この場合は他里の忍びと、って事になるけどね。
ウチに良い印象をもっている忍びの里がお抱えの隠れ里になれば、天津の国と火の国は交流が深まる。
お抱えの隠れ里同士も仲がいい、いがみ合い争う事がないんだ、両国の民の生活の安定に繋がるよ。