鬼達の金棒 16
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九尾襲来で、それまで当たり前の様に側にいた両親が死んだ。 里の為に散った両親は今でも俺の誇り。
里に住む皆の為に戦ったんだ、次の世代を担う若葉の為に。 両親の生きざまは無駄にしない。
それが後を託された俺の生きる糧で、俺も次の世代に何かを残したい、そう思って教職を選んだ。
これまでたくさんの若葉を育ててきたつもりだったけど。 まさか大人の生徒を受け持つとはね?
まあ、名ばかりの教師だとしても、だ。 こんな短期間に成長を見せつけられた葉っぱはいない。
俺は、自分が彼らの思考の一部になっている事を誇らしく思う。 三代目が手足だと自慢する忍びの。
だからあの機会に感謝した。 あれがなかったら、きっと一生縁がなかったかもしれないから。
・・・・・・で。 今ではすっかりカカシさんとテンゾウさんの情人として、収まりつつある。
元々俺が尊敬していた忍び達だ、欲しいと言われたら喜びこそすれ、拒絶などしようとも思わない。
まあ・・・・・ 度々度を越して喝を入れる時もあるけどな。 基本はウェルカムだ、ほんとだぞ?
ネームバリューというのは、それをもつ本人が意識しなければならないモノの一つ・・・ だと思う。
他人に影響力を及ぼすカリスマ性とリーダーシップは、誰にでも備わっているモノじゃない。
例え力が誰よりも抜きんでていようと、人望がなければ癇癪を起して喚いている子共と変わらない。
誰にも相手にされず、やがて孤立する。 人心を掴むという事は、力ずくでは意味がないものなんだ。
この四人はまさに。 そのカリスマ性が備わっている人物達。 やっと自分でそれを意識してくれた。
今迄はただ、勅命だから。 里の為になっているのだから他の事は気にせずともいい、という姿勢。
それでも隠しきれない人間性が溢れていた。 だから部下が従っていたんだ、それを感じてたから。
火影の直轄という誇りと、自分達は木の葉の武器だという自覚は、無意識で気に混ざっていたはずだ。
でなければあそこまで部下が慕う事はない。 彼らは力で制して来たと思っているが、実は違うんだ。
己が言い訳できないほどの実力の違いを見せられ、心が震える。 これが暗部の部隊長なのかと。
まず何より、感銘を受けた事だろう。 生きた目標がここにいる、という感動を覚えたはずだ。
それはあの四人の人間性による所が大きい。 誰を恨む事なく、率先して血路を切り開いて来たから。
もし少しでも自分の境遇に不満を覚え、木の葉を逆恨みしていたら。 ああはならなかっただろう。
道に迷う暇がなかったんだ。 荒廃した里を元に戻すのに、彼らの様な力がどうしても必要だった。
自分を必要とされるのは子供にとって最上の喜び。 必要とされ、それに応えるだけの力がある子供の。
だから誇りを持ち続けられたんだ、常に三代目や上層部から求められていたから。 でも今は違うんだ。
必要とされていないのではなく、時代が。 昔の様な不安定な時代じゃない、国内外が安定した時代。
三代目は、奪ってしまった子供としての時間を・・・・ 彼らに戻してあげたかったんだろうと思う。
そして今、俺の目の前にいるこの四人は。 その圧倒的なカリスマ性で他国の大名や里を制した。
暗部の長、火影の名代として意識して行動した結果、類を見ない忍び達だと彼らの目に映ったはずだ。
・・・・今の俺の感動が分かるか? 失ったモノをちょこっと足しただけであり得ない成果が・・・・。
はぁ・・・・。 俺が今教えている生徒も、これぐらい飛躍的に・・・・ いや。 違うから。
今でも彼らに先生と呼ばれるから、つい一般常識の家庭教師のつもりになっちゃうけど。 別モノ!
一度打てば100回響く、そんな優秀な忍び達と、留年小僧や名家出身が混ざった忍びの卵達は別!!
一緒にしちゃいかんだろ、これは。 ついね? ははは・・・ 教師が愚痴をこぼしちゃ駄目だ、うん。
「「・・・・ルカ先生! イルカ先生! 聞いてる?」」
「ああ、ごめんなさい、つい考え事を・・・・ ははは・・・・」
「イルカ先生の事だ、三代目への報告を頭で纏めているのかもしれん。」
「そうだね、依頼人の朱鷺さんへの報告書の事も念頭にあるのかもね。」
「「むすっ!! 面白くなーいっっ!!」」
「ねぇねぇ、先生、コッチ向いて? ほら、コッチ! ・・・・・・・・・ンチューv」
「イルカ先生、ボクはここですよ? ここ。 ね? ・・・・・・・・・んちゅーv」
「!! なっ!! カカシさん! テンゾウさん!! んんん・・・・・ ストップ・・・・ んん・・・・」
しまった! 優秀な二人は俺がアカデミーの生徒の事を考えていると、めちゃくちゃ敏感に感じ取る。
それはもう可愛らしい嫉妬心丸出しで襲ってきたり。 情人冥利に尽きるけど、今は不味いだろ、今は!
雅様や朱鷺さんに出国のご挨拶をしなくちゃならないし、カオルさんやアズサさんもいて・・・・・・
ちょっと!! 待って、ってば!! ぁ・・・ ぁ、ちょ・・・・ いや、ほんとに不味いですって!!
「「 先生がその顔してる時は生徒の事を考えた時だもんっ!! 」」
「ぅ・・・ カオルさん、アズサさん! この二人、なんとかして下さい!!」
「「・・・・・・・・・・・・。」」
「・・・・・・・・・・どうやら里への帰還はもう少し送れそうだな。」
「やった! アタシは一度、じっくりこの国のミイラの棺を見てみたかったんだよ!」
「・・・・・・ふっ。 アズサはそういう細工物が好きだからな。」
「カカシ、テンゾウ! 出来るだけ時間稼いでおくれ? じゃぁ!」
「・・・・・・・・ちゃんと結界張れよ? 人様の迷惑だからな?」
「「 任せといてvv 」」
「あ・・・・・ あんたら・・・・ あんたらやっぱり鬼かっっ!! 」
くそうっ! 確かに今すぐ里に戻らなきゃならないという切羽詰まった状況ではないけど! 平和だし!!
依頼人の目の前で任務を遂行していたのだから、あえて報告する必要もないけど! 朱鷺さん感動してたし!
周りの状況も自分達の事も意識して考える様になったら、しっかり余暇も計算に入れているなんて!!
ぅ・・・・・ だめだ、二人を今、拒絶する理由がこれっぽっちもない・・・・・ くそ、優秀すぎる生徒達めっ!
ん。 ごめんなさい、ちょっとね、アカデミー生の事を・・・・ っっ・・・・ はぁ・・・・
ぅう・・・・可愛いか?? 決まってるじゃないですか、そんなの。 お二人の方が可愛いですよ、もう!