鬼達の金棒 17   @AB CDE FGH IJK LMN O




雅家のミイラは戻って来たが、国内の大名家から盗まれたミイラは、もう戻っては来なかった。
我が国の要人のミイラを粉末にして売り払っていたからだ。 万病に効く秘薬と偽って。
雅様が莫大な資金援助や補給物資の支援をし、花巻の里はたった三日で薬湯の里を滅ぼした。
だが。 もしやあの四人なら、ほんの数時間だったかもしれぬ・・・・ そう思わずにはいられない。


なんとも素晴らしい働きだった。 これが大陸一といわれる里の忍び達の影響力なのだなと。
雅様は禁術に関する興味は失せ、むしろ逆に、天津の国の大名として大きく成長された様に思う。
一貫した思想と行動は、主に己が立場を再認識させ、彼らに負けぬよう精進せねばと、感じた様だ。

私はそんな主を誇りに思う。 素朴な自分の疑問のせいで、主が変わってしまったら後悔に嘆いただろう。
ほんの少しの軌道のズレが、行く行くは大きく道を違える事になる。 分度器での始点は同じだが。
それで一℃と二℃を直線で引くとすると、線を伸ばせば伸ばすだけ、幅が大きくなるのが見てとれる。
最初は少しの角度の違いでも、線と線の間が大きく開いて行く。 二本の直線は決して交わる事がない。

小さな子供ならいざ知らず、ある程度の大人になり、しかもそれが身分ある立場の者なら特に。
一度引き間違えたら元へは戻せない。 自分で線を引いたと自覚があるが故に、後戻りできないのだ。
ただの興味から身を滅ぼしでもしたら・・・・。 本当に。 そんな事にならずに済んで良かったと思う。





今日は木の葉の正式な窓口、任務受付所に来た。 普段海野中忍が座っているという任務受付所。
前回は雅様の計らいで隠密に動いたから。 直接火影室で火影様にご質問する様な形になってしまった。

「火影様。 この度は主ともども大変お世話になりました。」
「おお、これはこれは・・・・ ?? はて。 なんぞ任務報告書に不備でもありましたかな?」
「いえ、この受付にも時折座っておられるという忍び、海野中忍の直筆ですので。」
「ではその後何かが起きたと?? 火影室に移動した方がよろしいかな?」


自分は受付忍でもあり、同じモノを里に提出するからと、詳細を記入して下さった任務報告書。
あの場にて海野中忍が私に手渡して下さいました先の任務報告書に、なんの不備もございません。
実はある招待状を主より預かっております・・・・。 本日は正式な国の使者として参りました。

実はあれから皆さまの想定通り、花巻の里を我が国に迎える事が決まりました。 そして雅様もまた。
国主より功労のお言葉も頂き褒美もたいそう・・・・ 城下の者は皆、主を誇らしく思っております。

そんな中、元々様々な事に興味をお持ちの雅様は、死者の祭りを行ってはどうかとご提案されました。
魂が甦るなどは考えられないが、死者への敬意は死してなお称えられるべきものだ、と申されまして。
花巻の里はもとより、国主もそのアイデアを気に入り、国の一大イベントとして盛りたてようと。

復活祭と称する国を上げての催しを決定したのです。 皆が仮装して普段の姿ではなくなるお祭りに。
国外からも観光客を呼び込み、これから国の行事にしようと。 その記念すべき第一回目のご招待に。
火影様と暗部の部隊長四人、それから海野中忍を、ぜひご招待したいと主が申しておりまして・・・・・。



「皆さまお忙しいとは思いますが。 できれば我が雅家にご滞在を・・・・」
「ほほほほ! なんとなんと。 そういう事でしたら喜んでお伺いしましょう。」
「おお! よかった・・・・・ ははは・・・ 今回は結構プレッシャーでして。」
「・・・・ワシは花巻の里と雅様には、特に良い印象を持っておりますからな?」


三代目火影は、やはり自分のネームバリューを良くご存じだ。 大陸でのその名の重みを。
ご自分が動く事によって、天津の国の大名家 とりわけ雅様と親しいと内外に知らしめる事になる。
良い事ばかりではない。 木の葉の火影への当てつけで、雅様が不定の輩に襲われるかもしれない。
それでも。 雅様は火影様をご招待したいし、火影様も来て下さるというのだ、緊張して当然だろう。

三代目火影は、どこまでも私の顔を立てて下さる。 他国の・・・ それも墓守のこの私、朱鷺を。
雅家の要人に仕えるのが我が一族。 だが。 火影様。 私はあなたにも心から仕えようと思います。
あなたに聞いた禁術の話の全てを、忘れると誓いましょう。 花巻の里の忍びにも話しません、決して。

「実はこの祭りの発想もあるキッカケがありまして・・・・・ 暗部の面がですね・・・・・」
「ほう? 雅様はほんに、何にでも興味を示される方なのですな? ほほほほ・・・・」

そう、雅様が死者を祭った催しをしよう、と思いついたのは。 実は暗部の部隊長を見たからなんです。
ミイラの棺をみせてくれと、雅家の霊棟にやって来た男女の暗部を見てて、思いつかれたのですよ。
面をつけ棺に興味を示す様がとても神聖なモノに見えたらしく・・・・ 仮装をしてはどうか、と。

火影様、暗部四天王は雅様の意識を変えただけでなく、我が国を纏めるキッカケを与えて下さいました。
そんな忍び達をご自分の手足だとおっしゃる三代目様。 他国の他里の忍びの長ではありますが。
私はあなたやあなたの治めるこの里に、生涯忠誠を誓うとお約束いたします。 ありがとうございました。




割れ鍋に綴蓋です、まさに!(爆) そして超平和な時代の木の葉を書きたかったんですよ・・・・(淋)   聖