声にならない依頼 14   @AB CDE FGH IJK LNO PQ




暗殺戦術特殊部隊のボク達には、暗殺に向いている特技がある。 そしてその生い立ちも個性的だ。
でも自分の過去を引きずるような弱虫は、ボク達のいる所では死ぬと決まっている。 これホント。

カカシ先輩は瞳術。 一族以外は制御不可能とよばれる写輪眼で、千以上の術をコピーした天才だ。
ボクは木遁秘術。 初代火影の細胞融合に成功した唯一の実験体。 ただひとり現存する木遁保持者。
アズサさんは暗器。 体中至る所に暗殺専門の武器が仕込まれてる。 その数と種類は誰も知らない。
そしてカオルさんは氷遁術。 あらゆるモノを砕く絶対零度を作り出す。 −273℃の世界だ。

「イルカ先生、約束して。 城に入ったら、絶対カオルに近寄んないでネ?」
「全員一緒に行動しない方がいいんですか? 俺は別行動ですね、わかりました。」
「いえ、カオルさんだけ別行動してもらいます。 ボク達は一緒。」

「アイツ珍しく結構怒ってる。 暗殺前後は、しばらく温度が上がんないカモ。 念の為。」
「温度が? えっと・・・ 熱を下げるんじゃなくて・・・・・ 上げるんですか??」
「カオルさんの氷遁術 絶対零度は、怒気に混ざって漏れるんですよ。 はた迷惑な人です。」
「絶対零度?! ・・・・・漏れるって・・・・・・・・。  怖っっ!!

あんまり怒らない人だけど、静かに怒るんだよね。 だからカオルさんが怒ってる時は近寄らない。
これは暗部の裏常識。 −273℃の怒気。 勝手に漏れ出てくる怒気に触れようものなら、大変だ。
とばっちりくって、砕けたヤツらもいる。 バカな新人が気に入られようと近寄って砕けたり、ね。
怒気の度合いにも寄るけど、今回はカカシ先輩の言う通り、結構怒ってる。 だから危ないんだ。




「・・・・・・先生、残念。 あの娘達はもうダメだーヨ。」
「先輩がそう言うって事は、暗示ではなかったんでしょうか?」
「え?! 暗示じゃないんですか?!」
「・・・・カカシ、どういう事だ、説明しろ。」

城潜入に先駆けて確実な情報を。 不本意に捕らわれた娘達が他にいないかを、カカシ先輩が探って来た。
側室達は先生が見た5人だけだそうだ。 それを聞いた時、イルカ先生はホッと肩の力を抜いた。
でもその安心は、後に続く言葉を聞いて絶望に変わった。 “ダメだ”それは元に戻せない、という事。
イルカ先生の偵察情報から、強力な暗示だろうと踏んでいたんだけど。 どうも違ったみたいだ。


「抑心〈よくしん〉の術がかかってた。 オレもコピーして持ってるけど、文字通り心を抑える術なんだヨ。」
「ではあの娘達は、感覚が無くなってしまったんですね? 命令をただ聞くだけの傀儡に。」
「そう。 泣くコトも怒るコトもない、痛みも感じない、手のかからないペット。 そう言うコト。」
「そんな・・・・ つばさ君の・・・ 故人の依頼希望さえ叶えられない・・・・ こんな事ってっ!!」

抑心の術、ボクも知ってる。 使えないけどね。 廓で足抜けした遊女達が連れ戻された時など。
見せしめのために使われる事が多い。 元は敵の捕虜をおとなしくさせる為に開発されたんだけど。
だから一応、目的は安楽死。 拷問にかけなくても頭から情報だけを引き出せるからね。 でも・・・
忍びはサディストが多いから実用は過少。 ウチの拷問部の連中も、情報搾取がてら拷問を楽しんでいるし。

「・・・・・おれは単独で任務を遂行してくる。 ここで解散だ。 ・・・・じゃあな。」



「勘弁してヨ、秘密裏に暗殺出来なくなるじゃない、ナニが解散だ、もう!」
「冷気を流して心臓麻痺を起こす・・・・ どころじゃないですね、アレ。」
「砕いちゃったら、後始末は火つけるしかないでショ? 怒ってたら火遁使えないじゃない!」
「他の人間が火遁を使うしかないんですよね・・・・ ホントはた迷惑な人ですよ、もう!」

「はははは・・・・・ 俺、幻術かけて城の中の人間を避難させますね・・・・・・」
「うん、お願い。 大名家で火事なんて不審すぎるでショ? まったく!」
「ボク達は証拠をねつ造しなきゃならなくなっ・・・・ あっ!!」
「「そうだ!! それがいい!!」」
「???」


先輩もボクも、ほぼ同時に良い事を思いついた。 イルカ先生に話し、幻術の内容を指示する。
ボク達の説明を聞き終わったイルカ先生は、我慢できなくなったみたいで、飛びついて来た。
もう、スキンシップが好きなんだから! 仕方ない、婚約者として、キスのひとつもしてあげますよ。
痛いってば。 嬉しいからって背中を叩き過ぎです、あと先輩の髪の毛はひっぱっちゃいけません。

「じゃあ、イルカ先生。 オレ達が戻るまで、カオルに近付かないでネ?」
「た、頼まれても近付きませんよっ! 城の人間と一緒に城外にいます!」
「速攻で狩ってきますから。 それまでに避難をさせておいて下さい。」
「了解です。 そっちは任せて下さい。 相手は一般人ですから俺の幻術で十分。」

「「行って来るねー!」」
「はい、行ってらっしゃい!」



何しに行くかって? 昨日の余韻に浸ってる馬鹿共を狩りに行くんだ。 孤児院を燃やした滝忍共を。
あの建設業者の話では、マンション計画の出資者に接待されているらしい。 馬鹿共を有効利用だ。
“ユウジロウ様の屋敷を襲った侵入者”になってもらう。 その首を木の葉が狩った証拠にする。
イルカ先生に指示した幻術は【滝忍が襲って来たから木の葉に救援を依頼、城の者は城外に退避】だ。

残念ながら、あの焼け跡の上に新しいマンションが建ってしまう事は・・・・ 止められないけどね。