声にならない依頼 3   @AC DEF GHI JKL MNO PQ




この事を、どうつばさ君に説明すればいいのか。 この子が居る所は孤児院で、地上げの対象になっていた。
壊したあと、何かを建てる予定だった土地らしい。 その孤児院で子供達の世話をしている女性がナギサ。
ある大名の息子に望まれて、城に入ったそうだ。 その財力で地上げを中止させる為に、だろう。
その後地上げされ孤児院が潰されたなら、里は介入出来る。 が、建物建設の話は取り下げになった。


「力のない人間がとれる、最大の武器なんですよね、取引は成立してるし・・・・・。」
「そうなんだ。 だから、その娘は割り切って城へ行ったのかもしれない。」
「でも俺、この子を信じたいです。 こんな小さい子が意味もなく“嫌い”なんておかしい。」
「我が国屈指の大名の息子・・・・ そう言ってたな。 圧力がかかり里は動けないだろう、とも。」


トントンして角をそろえてね? つばさ君に書類整理を手伝ってもらってる。 遊びの一環みたいなもんだ。
もちろん俺も仕分けているよ? ふふふ、大きさごとに固まりを作って重ねていくのは、結構楽しいらしい。
こんな素直で思いやりのある子が、何回か見ただけの男を嫌うなんて・・・・ 絶対おかしい。
それに、俺にはデッカイ財布があるらしいし! うん、明日頼んでみよう、これも力ない者の取引だろ?

「俺がその大名の息子の身辺を洗います。 費用は・・・・ 俺の婚約者持ちで。」
「・・・・依頼人はいないぞ? 誰も望んでないかもしれない。 それでもか?」
「少なくとも、この子は・・・・ つばさ君は望んでいますよ、彼女の真実をね。」

「ウケツケにんじゃさん!! みてみて、ゼンブつんだよ?!」
「お、凄いな、もう積んじゃったのか! さすが赤仮面だな!」
「えへへへ! あかカメン、いちばんすきー!」

「子供の扱いも・・・・ もはや保父さんの域だ・・・・・ よ、里のおふくろさん!」
「・・・・・山中上忍。 確かさっき一緒に、キメポーズ取ってましたよね?」
「ん? そうだったか?」

なにが、そうだったか、ですか。 キリッとすればカッコいいのに、花柄のエプロン着けて花売ってるし!
きっと娘と一緒に、仮面の忍者木ノ葉を見てるんでしょ? 俺よか、よっぽどお母さんじゃないですか!
だいたいカオルさんがいけない! あんなアダ名を暗部の隊員の前で呼ぶから、皆面白がって・・・・。
今では暗部のほとんどの隊員から“おふくろ”なんぞと呼ばれている俺。 22歳の成人男性なのに!



「・・・・。 三代目は・・・・・ 受付か。」
「あ、カオルさん、お帰りなさい、お疲れ様でした!」
「おお、名付け親がご帰還だ。 猿班部隊長殿、お疲れさん!」

「所帯じみてると思ったが・・・・・ おふくろさんの子か?」
「な・・・・ なんですって?!」
「はははは!! こりゃいい!!」

「くっ・・・・ 山中上忍、暗部の部隊長クラスに、一発はいると思いますか?」
「やめとけ、やめとけ、返り討に合うのがおちだ、くくくっ! カオル、この子は仮の依頼人だ。」
「・・・・ふっ、てっきり隠し子かと思った。」

くそう、言いたい放題か! ああ、俺は子供が大好きだよ! だからアカデミー教師やってんだっ!
ちょっとカッコいいからってムカツク! 依頼人落としの噂の真相を俺はこの目で見たんだぞ?!
口の上手いホストの方が、まだマシだ。 奴らは夢を見せてナンボ、それで食ってるし、立派な仕事だ。
この前この人は“ん? 無料サービスだ、これも里の為だろ”とか、本気で言ってた。


「なあ、禁術で孕めるとしたら・・・・ 子が欲しいか?」
「は?   いや、まあ、その・・・・ そんな事・・・ あの・・・・ 出来るんですか?」
「いや、聞いてみたかっただけだ。 今の賭けが、男が出産に耐えられるか、なんだ。」
「男は耐えられないだろうなぁ。 イノちゃんの時は見てるだけで、死にそうになった。」

「・・・・・おさるさんの カメン・・・・ カメンのにんじゃさん?!」
「ははは、木の葉で仮面の忍者って言えば、暗部の事だ。 坊主、覚えておけよ?」
「うん! あんぶ!! おさるカメン!  かっこいいっ!」

本物の仮面の忍者を見て、つばさ君が目をキラキラさせてる。 だろ? 本物はめちゃカッコいいだろ?
ふふふ、山中上忍がつばさ君の目の前までかがんで、頭をグリグリしてる。 死にそうになるんだ・・・・。
こんなお母さんで子煩悩な山中上忍でも、耐えられないのか。 でも俺は根性で頑張ろうと思う! かな?

「おふくろさんは・・・・ 耐えられそうか? 欲しいか?」
「俺は・・・・・ はい、欲しいです。 耐えて見せますよ。」
「・・・・・ふっ、そうか。 覚えておく。」

「失礼します! 部隊長、さっきの任務で確認した・・・・ いぃっ!?
「ん?  ・・・・・・・・早く言え。」
「あ、お帰りなさ・・・・」
な、何でもありませんっ!! オ、オレは何にも見てないし、聞いてません!

賭け・・・・ 暗部って、実は暇なのか?? イヤ違う、そんだけ余裕かまして任務してるんだ。
ほんと桁が違うって言うかなんて言うか・・・・。 仮面の忍者木ノ葉じゃないけど、裏の立役者だよ。
しいて言うなら“実録 裏 仮面の忍者木ノ葉”みたいな感じ。 火影様が選りぬいた、一騎当千の忍び。
この人達がそうなんだよな。 皆、強さを偉さと勘違いしない、立派な人達なんだよな・・・・ うん。

し、失礼しましたっ!! お先に失礼しますっっっ!!!
「お、お疲れ様でした・・・・。」
「なんだ、アイツ・・・・。」


「・・・・カオル、イルカ。 なんか誤解したぞ、アレ。 マズイんじゃないか?」
「「・・・・誤解??」」