声にならない依頼 4
@AB
DEF
GHI
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PQ
助っ人がいて助かったなぁ、つばさ君が手伝ってくれたなんて。 これは立派な奉仕活動だよな。
ご褒美をあげないと可哀想かな、頑張ってやってくれたしなぁ、と三代目に聞こえるように独りごと。
書類整理は完了です、猿部隊長がお待ちですよ、と伝えた。 チラリと俺を見て、三代目が火影室へ。
「まったく・・・・ 褒美の催促なんぞしおってからに。 まあ、仕事にはそれ相応の報酬じゃな。」
はい、ココに親指のっけて? ・・・・・よし。 コレで依頼書完成だ。 俺が受けるから問題ない。
調べてくるけど、もし姉ちゃんが幸せになってたら取りかえせないぞ? と心構えをさせる。
つばさ君は俺の顔を見てしっかりと頷いた。 よし、強いぞ! 頭をくちゃくちゃに撫でまわす。
これは君の依頼だからな。 このカラフルな小判はもらっておくよ? これで足りるから大丈夫だ。
「おおおおお! あたまグルグルー!」
「あはははは!! 受付忍法 くちゃくちゃの術だ!! うりゃっ!」
「きゃぁ〜っっ!! にげろ〜!! ・・・・・ぅわあ!」
バタバタと受付で追いかけっこ。 見ると、小さい体は報告を済ませたカオルさんの肩の上に。
火影様に言われて、施設までつばさ君を送って行ってくれるそうだ。 ふふふ 三代目イイとこある!
無言になっただろうカオルさんを想像すると、ちょっと楽しい。 しかしナニやってもサマになってるな。
本人は意識してないけど、カオルさんって、いちいちカッコいいんだよね、しぐさが。 悔しいけど。
「坊主、猿仮面が送って行ってやる。 おれは速いぞ?」
「きゃ〜〜〜!! やったー!!」
「何日かしたら、俺が施設まで報告に行くから! 待ってろ?」
「うんっ! バイバイ! ありがとう、ウケツケにんじゃさんっ!!」
はははは、嬉しそうだ。 良かったな? けど、もし本当にナギサさんの意志が強く、城に残るのなら。
俺は何も出来ない。 彼女はその身を餌として使ったのだから。 ソレは俺達、忍びの覚悟と似てる。
木の葉の里の為なら、自分が愛してる全てを守る為なら。 俺が彼女の立場なら、そうしたかもしれない。
切り札は自分にあって、それしか方法がないと追い詰められたら。 もう、迷いはなくなる。
「・・・・兵糧丸。 ・・・多めに飲んどこうかな・・・・・。」
ずっと待っていたよ? 君から私の胸に飛び込んでくれる日を。 今どんなに幸せかわかるかい?
この紫の瞳も、ふっくらとした唇も。 まだ男を知らぬ穢れない体も。 何もかもが愛らしい。
始めて君を見つけた日、私の為に存在する生き物だと思ったよ。 強く、これが欲しいとね。
君はなかなか受け入れてはくれなかったね。 でも無理やりは、君から輝きを奪ってしまう。
強い意志と視線。 あんな薄汚い場所にあってなお、気高い気質。 この瞳をどうしても欲しかった。
だからね、私は考えたんだよ。 どうしたらそんな君が、自分から私の所へ来てくれるかをね。
下請けに使っている建設業者に、マンションの話を持ちかけたんだ。 あそこは一等地だからね。
喜んでいたよ? 完成予定図を何枚も持ってきて、これでいいでしょうか、どうですか、って。
でもね、彼らには悪いけど、中止してもらったんだ。 君が・・・・ 私にお願いしたからね?
君は私に手を引けと言っただろう? 約束通りそうしたよ、君の言う通りに中止して、手を引いた。
諦めたように、けれど、その心は思う通りにはいかないと言っている、強い視線を投げかける瞳。
そう、これは立派な取引だ。 これで君は私のもの。 君との約束は守るよ、私はね。 嬉しいかい?
もともと私は、あんな場所になんの興味もない。 この強い光を放つ紫の瞳を、私に向けさせたかった。
君のこの口から、私が必要だと言わせたかった。 全部が君の意志で。 強くて浅はかな可愛いナギサ。
私は君が手に入ったらそれでいい。 けれど・・・・ 一度構想を練った計画を、彼らが諦めるかな?
「・・・・・・・・。」
「ああ、ナギサ。 これから君はずっと私のものだ。 ふふふふ・・・・ あはははは!!」
彼らにも生活があるからね。 その予定で雇った何人もの従業員に、給金を支払う義務がある。
君と同じように彼らもまた、その従業員を守る為に必死であの計画の次の出資者を探すだろう。
今は動いてないだろうけど、ひょっとしたら新しい出資者を募って、計画を再開させるかもしれない。
君との約束は守ったよ? その後の事までは頼まれなかったからね。 私は手を引いた、そうだろ?