声にならない依頼 2   @BC DEF GHI JKL MNO PQ




火影様に言われて火影室へ連れて行く途中、その向こう側の情報分析部の施設に向かって、指笛を吹く。
信憑性を問う依頼や、詳しく話せない人などの場合、その情報の真意を確かめる為に人員を呼ぶ合図だ。
この子から情報を得て、俺が正式な任務依頼として書類に記入しよう。 ・・・・名前は? つばさ君か!

「ほい、甘いホットミルクだ。 飲む?」
「ほっとみるくすき! ナギサねえちゃんもするー すごくおいしいの!」
「あーーー ナギサ姉ちゃんには負けるかもな。 ま、我慢してくれ。」
「・・・・・・にんじゃさんのも おいしい!!」

見れば山中上忍が待機してくれてた。 この人なら情報を得るどころか、真実そのままを知る事ができる。
実はお花が大好きなファンシーな人。 念願かなって、今では趣味の花屋さんを奥さんと経営してる。
相手の深層意識にまで入り込む事の出来る上忍。 情報分析部の施設長で、心潜術を扱う山中一族だ。

「はは、ありがとな。 ・・・・里の忍者さんはすごいから、君の心にも入れるんだよ?」
「そうなの?? カメンのにんじゃコノハ! かっこいいー!!」
「あははは。 だから、思い出してごらん? 姉ちゃんに何があって、どうしてほしいかを。」
「うん! きのうね、コノハのうけつけのトコロきいてね・・・・・」

この子が言う“仮面の忍者木ノ葉”とは、今火の国で一番人気の、子供向けテレビアニメだ。
主人公は三人の忍者。 仮面舞踏会につける様な怪しいマスクで目を隠してる。 赤・白・青のマスクだ。
だから仮面の忍者なんだろう。 顔が隠れてないよバレバレ、っていうのは子供向けアニメだから御愛嬌。
当然、ウチの暗部がモデルだ。 そうか・・・・ 誰かに里の場所を聞いて、頑張って冒険したんだね?





「【・・・・孤児院の事は心配しないで。 私の事も。 大好きなみんなへ】か・・・・。」
「この手紙を・・・・信じろと??」
「思いきって木の葉隠れの里に頼むか? しかし相手は、この国屈指の大名の息子じゃ。」
「ナギサは嫌がってました! むしろあの男を嫌悪してさえいたんです・・・・。」

ん、おしっこ・・・・・ あれ?  おおジジさまと・・・・ シブキねぇちゃん・・・・
ナギサねぇちゃんが、どうしたの??  あ、そうそう、あいつ、ぼくもきらい!

「この孤児院の為に自ら・・・・ のう、シブキ。 もし本人が望んだ事じゃとしたら。」
「ナギサが・・・・ そうですね、あの男の権力を逆手に取ったのかもしれません。」
「実際、地上げの話はなくなった。 それがナギサの意志なら、ワシらは・・・・ くぅっ。」
「孤児院を守りたいから? ナギサ、あんた・・・・ あんた馬鹿よ! うぅ・・・・。」

まもる?? ねえ、なんでふたりともないてるの? かなしいこと?? あのおとこがしたの?
ナギサねぇちゃんに、なんかしたの?? きのうもかえってこなかったし。 つれてっちゃったの??

「実際こうやって、ナギサからの手紙がある以上、里に依頼しても相手にはしてもらえないじゃろう。」
「悔しいけど、木の葉隠れの里だもの。 自国の大名から圧力がかかるかもしれない・・・。」

あ!! コノハかくれのさと!! にんじゃさんはセーギのみかた!! カメンのにんじゃコノハだいすき!!
コノハのさとにいらいすれば、おおジジさまも シブキねぇちゃんもなかないの? ナギサねぇちゃんも。
よし! あのおとこから ナギサねぇちゃんをとりかえすぞ!! しってるもんね いっつもみてる!

「うけつけにいって、おかねわたして、いらいするー! ・・・ホカゲにかわっておしおきだ!!」





つばさ君は目をつぶって、ウンウンと考えていたが、あのキメ台詞を言ってポーズを取った。 回想終了だ。

そう、仮面の忍者木ノ葉の三人が、悪党を倒し終わったら、必ず言う台詞とキメポーズがある。
三人並んで、右手の親指一本を立て画面に向かってクイッと下げてから間をおいて言う。
おいおい、敵は後ろだろ、っていうのもやはり御愛嬌。 子供にとってはかっこいいヒーローだ。

「解!!   ・・・・・・なるほどな。 事情は呑み込めた。」
「ふふふ、そうですか、さすが山中上忍!」
「 だが、相手の名前が不明の上、どうも本人の意思のようだぞ。」
「は?! どういうことですか?! わかるように説明して下さい!」

ハッキリ言って無意識だ。 山中上忍もお子さんがいるし、俺もアカデミーの生徒に合わせて見てるし。
俺も山中上忍も、真ん中のつばさ君にあわせてキメポーズを取りながら、覗いた記憶の一部を確認した。

「「火影に代わってお仕置きだっ!」」
「わーーーい、ぼくあかカメンだーーーっ!」