声にならない依頼 15   @AB CDE FGH IJK LMO PQ




「大変だ、他里の忍びがユウジロウ様を狙って、忍びこんだらしい!!」
「ユウジロウ様が、木の葉の里に救援を求めたそうよ?!」
「城の人間は全員城外に退避させろとのご命令だ、早く皆に伝達を!!」
「木の葉が間に合ってくれれば良いんだけど・・・・ ユウジロウ様、どうかご無事で。」

・・・・ふっ、なるほど。 考えたな、おふくろさん。 この城の中で一番臭う奴を探そうと思ってたが。
城の中からいらない気配が消えたら、探るのは楽で良い。 ・・・・・もう少し待つか。 ん?
何でおふくろさん、あんな遠くにいるんだ? まあいい。 楽が出来るなら、それに越した事はないか。
解散と言ったのに。 ほんとに世話焼きだな、おふくろさんは。 暗殺お節介アシスト、お疲れさん。


おれが肩に乗せてやった時、あの坊主は大喜びだった。 仮面の忍者木ノ葉の主題歌をずっと歌ってた。
知らないと言ったら、おれに一生懸命教えてくれた。 おかげで覚えてしまった、アニメの曲をな。
施設関係者も坊主の依頼が受理されたのを聞いて、これで本心を確かめられる、と心底喜んでいた。
坊主と同じ位の子供がチョロチョロしてたっけな。 本物の仮面の忍者だ、と言って興奮気味に騒いで。


ん? 丸? おふくろさんが、頭の上に両腕で大きなワッカを作ってる。  ああ、退避完了の合図か。
口で言えばいいものを、なんでまたあんなに離れて・・・・。 まあ、こっちに来て話すより迅速だな。
ああやって示してくれた方が早い。 さすが先生だ、気がきく。 よし・・・・ そろそろ狩りに行くか。
城の中の気配は六つ。 同じところから気配がするから、奴は側室と一緒にいる、という事になる。





「はぁ、はぁ、はぁ・・・・ 美しく強い瞳、この滑らかな肌・・・・・ 私のナギサ・・・・
 施設は残念だったね、お兄さんの事も。 彼は持病で余命わずかと宣告されているらしい。
 ほんとうに独りぼっちになってしまったね。 でも君には私がいる。 そうだろう? ナギサ。」


ヘドが出そうだ。 奴は投扇をしている側室達に混ざって、その中の一人を後ろから抱いていた。
揺すられながら、自分の番がくれば扇を投げる。 確かに娘の持つ紫の瞳は美しいが、ガラス玉のようだ。
着物をはだけさせ肌にむしゃぶりつき、自分の胡坐の上に乗せている。 あの娘が坊主の姉ちゃん、か。

・・・・・いのいちさんの様に、おれにも心潜術が扱えたら、坊主の姉ちゃんの頭を覗けたのにな。

「名家 肇家の名を汚す出来そこない。 ユウダイ様に死んで詫びを入れろ。」
「何者?! !!!!!  木の・・・・葉の、暗部? なぜこんなところに・・・・」
「その娘から離れろ、生ゴミ!」
「ひぃっっ!! た、助けてくれ、誤解だ、私は何もしていないっ!」


おれの方を振り返った男は、大きく目を見開き驚いたかと思うと、側室達を突き飛ばして逃げ出した。
自分の守る者の価値を知っているからおれ達忍びは自ら進んで汚れる。 それに協力する大名も、だ。
国主や影はその決断だけで、何千、何万人もの命を左右するプレッシャーに日々耐え続けている。
ああ、確かにお前は何もしていない、それが一番タチが悪い。 肇家の跡継ぎの資質はゼロ以下だ。

「おれは自分自身の手を汚さず、裏で笑ってるだけの奴が大嫌いなんだ。」

あのユウダイ様の息子でありながら、ここまで生きてこられた事に感謝もせず、ペットとお楽しみか。
お前がここまで成長するのに、一体どれだけの人命が犠牲になったか、考えた事があるのか。
先の忍界大戦時、さんざん煮え湯を飲まされた他国の恨みを。 火の国の、しかも国主の信頼厚い肇家。
国内生産中心地を預かるユウダイ様。 たくさんいた子の中で、無事成人できたのはお前達三人だけだ。

「安心しろ、ユウダイ様には心臓麻痺だと報告する。」
「あ、う・・・・・ う、う、 うわぁぁぁっっっ!!!!
「笑止っ!!」
ナ・・・ギ・・・・・・・・


どこまで見苦しい男か。 このおれに刀を抜いて向かって来た。 おかげで死亡原因が変わってしまう。
バラバラと破片が飛び散る。 少しづつ冷気を入れて心臓を止める予定が。 反射的に凍らせてしまった。
ん? さっきの部屋で肉塊が砕け散る音がした。 ・・・・・余波がいってしまったか、しまったな。

側室の三人が砕け、二人がヒビ割れてしまった。 どの道、殺してやる予定だったから手間が省けたが。
殺すにしてもあの娘に着物を着せて死なせてやりたい。 仕方ない、火遁を使う為、体温が上がるのを待つ。
おふくろさんに頼んで火遁を使ってもらうか。 火事という事にして。 何処にいるのか気配を探ろう。


・・・・・いた。 が・・・・・ これはかなり遠いな、城の外だ。 呼びに行くより待つ方が早い。
中途半端なアシストだが・・・ おふくろさんはお節介だから城の者が入って来ない様にしているのかもな。
証拠隠滅には焼くしかない。 これらの破片は時間が経つと肉片に戻る。 木の葉関与の疑いは残せない。
坊主が教えてくれた仮面の忍者・・・・・ ・・・・・・なんて言ったか。 確かそう、こうだ。

「火影に代わって お仕置きだ。」