声にならない依頼 17   @AB CDE FGH IJK LMN OQ




施設があった土地は整えられてて、火事があったなんてもうわからない。 この上にマンションが建つ。
身よりのない者達の遺体。 焼けてしまった数人の灰は、そのまま土の下に埋められただろうから。
よし、これでいい。 つばさ君、ナギサさんを連れて帰って来たよ? これでみんな一緒だな。

いくら国主や火影様が目を光らせていても、例え名実ともに素晴らしい人物が治めている土地でも。
火の国は広すぎる。 いつもどこかで、力のない誰かが死んでる。 木の葉隠れの仕事は尽きない。
間に合わなくても、事が起こってからでも。 何もしないよりマシ、間に合う時だってあるんだから。

火の国と里の為に、誰かが手を汚さなきゃならないなら、それは俺達、力ある忍びの役目だ。




「ボク達は救援に向かったんですが、一歩及ばず、ユウジロウ様は既に殺されていました。」
「ほほほ、なるほどの。 なかなか上手い筋書きじゃな?」
「滝忍の首は、カオルがユウダイ様にプレゼントするって、持って行きましたヨ。」
「証拠も揃えておるし、完璧じゃな。 国主にはワシから説明をしておこう。」

「・・・・つばさ君の任務依頼の報告書です。 側室のナギサは、滝忍侵入の巻き添えで死亡。
 遺体の一部を、孤児院の皆と一緒に埋葬。 依頼人死亡により、依頼人への報告はなし、以上です。」
「うむ。 ・・・・あの子もあの世で会えて、喜んでおるじゃろう。」

「皆、ご苦労。 ・・・・・休息日を返上したお主らには、明日を休息日として与える。」
「「ありがとうございます!」」

「・・・・・・俺は明日も・・・・受付業務ですよ、ね?」
「当然じゃろ? お主が勝手に受けた依頼じゃて。」
「・・・・・・ですよね。 ・・・・・書類整理のお手伝いなんかはいかがです?」
「この前、チビ助がやってくれたのう? スッキリとしておるぞ?」
「・・・・・・・・・ちっ!」

世の中そんなに甘くない。 忍びの世界は特に、だ。 また兵糧丸を飲まなくちゃ・・・・ あ!!
カオルさんにもらった暗部用の栄養ドリンクがまだ残ってる! エライ効き目でビックリした。
さすが暗部用。 少々体を酷使しても、急速復活、元気モリモリ。 これからはあれにすればいい!
医療班に、ふたり用だと言って売ってもらう。 おー なかなかいいアイディアじゃないか、俺!


「・・・・・・・。(あれ、高いのかな? まあいいか、デッカイ財布があるし!)」
「ナニ、そのイヤラシイ顔。 さては今日の夜のコト想像したネ?」
「もう、先生ってば。 三代目の前ですよ? 仕方がない人です。」

「ほほほほ。 幸せそうで何よりじゃの。 結婚式が決まったら知らせるのじゃぞ?」
「「結婚式?!」」
「あ、そうだ、その話するのすっかり忘れてた、あのですね・・・・・・・」

近々、火影様の立ち合いで、結婚式をあげませんか? 形だけだけど、思い出に残りますよね?
・・・・・うわぁ。 火影様の前だけど、猛烈に面をはずしたい。 今どんな顔してるのか気になる!
こう、なんて言うの? よく少女漫画で、バックに小さい花が描き散らされてるだろ? あんな感じ。

「な、な、な、そんなコト考えてたの?! 引退まで待てないの?!」
「くすくす、はい。 待てません。」
「ボク達は暗部ですよ?! 大々的に式を挙げられないじゃないですか!」
「ふふ、身内だけでいいんです。 ね、三代目?」

「うむ。 お主らとワシだけで充分じゃろ。 ・・・・火影の特権じゃ。」

はははは! この嬉しそうな気! 大々的に挙げたかったんですね? ・・・・・きっと明日あたり、
暗部の隊員達にはしゃいでふれ回って、式にはゴッソリ隊員達が来るんだろう。 もう、ほんと可愛い!
旦那さん達の財布の紐は俺が持つんだから、高いかもしれない暗部用栄養ドリンクも買いたい放題だ!
よし、どっからでもかかって来い、絶倫男共っっ! ・・・・・って、人数数えてるし。 ノリ気過ぎ!!

「アズサとカオルは呼ばなきゃね?」
「部隊長仲間としては、当然です。」
「アカデミーの教員は何人ぐらいかな?」
「受付の人達にも声かけなきゃ、ですよ。」
「「あとは・・・・・」」


「イルカや、大イベントになりそうじゃぞ?」
「あははは、ですねー? もう何でも良いです、嬉しそうだから。」
「ほほほほ。 お主とて嬉しいのじゃろ?」
「くすくす、はい。 ベタ惚れですから、俺。」

どうやら今日の夜はこの話でもちきり、栄養ドリンクの残りを飲まなくて済みそうだ。 ・・・・・と、思いたい。