声にならない依頼 16
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木の葉の暗部が“国内で不審火を出した滝忍を狩りに来た”と言えば。 手の平を返して協力姿勢をとる。
金持ち連中は本当に切り替えが早い。 足止めをしておきます、だって。 “口封じ”の間違いでショ?
滝忍は二人、遊女達と乱交パーティーをお楽しみ。 突然首が飛んで転がった裸体に、廓は阿鼻叫喚だ。
姿を見せるなんてそんな間抜けじゃなーいヨ。 接待でショ? 賠償はたんまりあの金持ちに請求しなネ。
オレ達が滝忍の首を持って城に戻ったら、イルカ先生は言った通り、ちゃんと城の外で待機していた。
先生に目くばせして、一緒においでと伝える。 もうカオルの怒気も静まっているころだろう。
イルカ先生に案内してもらって、側室達の部屋へ行く。 三つの気配しかしないその部屋へ。
奥の部屋にばらまかれているのが、もとユウジロウ。 で、足元に飛び散ってるのが、三人分の破片。
ユウジロウが向かってきて、つい絶対零度を身に纏ったんだって。 余波で隣の部屋の側室も砕けた、と。
・・・・・んで、燃やそうとして体温を元に戻してたんだ? 全く予想通りでさ、笑えるんだケド。
「やっぱりね。 こうなると思ってたーヨ。 火事なんてサ、この城の者が責められるでショ?」
「カオルさん、これ使って下さい。 お土産です。 ユウジロウの命を狙った“侵入者”の首です。」
「ん? ・・・・・滝忍か、なるほど。 ふっ。 ・・・・・・普段はこんなに頭が切れるのにな?」
「ふふ、いいじゃないですか。 俺、そのギャップが好きなんです。」
「「????」」
よく見れば、残りの側室ふたりも、ヒビが入ってる。 ・・・・お前、どんだけ怒ってたの? まあイイや。
・・・・・って、何してんのっ!! カオルが側室のひとりの着物に手をかけてる。 え? その娘が?!
そう、ナギサさんなの。 側室達には共通点がある。 皆、紫色の目を持っていた。 好みなんだろう。
オレが忍び込んだ時、最初に気付いたコトだ。 コレのせいで娘達は、ユウジロウに目をつけられた。
「目の色だけで人生が左右されるなんてな。 この娘達にとってはどうでもいい事だろうに。」
「ナギサさんは特に濃い紫色。 一番気に入ってると言ってたのは、この目の事だったのか・・・」
「カオルさん・・・・ まさかとは思いますが、無理やり奪われたナギサさんを憐れんで??」
「いくらこの娘が望んでいるように見えても、マイルール破る気? どう見ても16〜7才だヨ?」
「お前らがおれの事をどう見ているのか、今度じっくり聞かせてくれ。」
てっきりカオルのコトだから、無料サービスしちゃうのかと思った。 あーー、ビックリした!
本当のセックスを教えてから死なせてやろう、なんて。 いらない気をまわしてるのかと思ったヨ。
ちゃんと着物を着せてやろうとしただけなんだ? ふーん。 自分で作った禁は厳守する、ね。
この娘達がさ、18才以上だったらサービスしてあげた? ナニ、その鼻にかけた笑い! 肯定なの?!
「・・・・・多分な。 生ゴミしか知らない生娘は、可哀想だ。」
「「やっぱりかっっっ!!」」
「サービス精神旺盛ですね、はははは・・・・ はぁ・・・・。」
「「「!!!!!!」」」
「坊主がな、あんたの事をよろしく、と言ったんだ。 ・・・・これはサービスだ。」
さっき自分で作った禁は侵さないと言ったそばからコレかっ!! ・・・・でも、ま。 大目にみまショ?
きちんと着物を着せてから、カオルは彼女達にゆっくりと口づけた。 冷気を流し込み心臓を止めたんだ。
彼女達には感情なんてないはずなのに、微かに微笑んだ気がしたのは・・・ オレだけじゃないよネ。
例えサービスでも、紫色の目をそっと閉じてやるカオルの手は、あの薄汚いゴミより優しいに違いない。
「俺達は事が起こってからしか動けない・・・・ 声にならない依頼が多すぎます・・・・。」
「・・・・でもさ、これで良かったんだよ。 このまま生かされるよりは。」
「芯の強い女性なら、ひと思いに殺してくれてありがとう、と思うでしょうね。」
うん。 あのまま遊郭に引き取られたり、ペットとして売りに出されたり、冗談じゃない、ってネ。
彼女達にかけられた抑心の術は、かけた忍びを探し出し殺せば解ける。 けど、その依頼は誰がする?
この世の中で、一体どれだけの忍びがあの術を使えると思う? 調べるだけでも10年はかかる。
その間、他の依頼を後回しにするの? その間に救える命の多さと比べたら、これは必要悪なんだヨ。
「? イルカ先生、何してるんですか??」
「・・・・ナギサさんの小指をもらっていきます。 一緒に埋めてあげようかな、って。」
「どこまで世話焼きなの?! カラー小判で任務を受けちゃうし! このお人好しっ!」
「ははは、じゃあな。 オレはその首を持って、城の者とユウダイ様に報告してくる。」
「わかった。 オレ達はコッチとソッチの部屋を燃やして、後始末しておくカラ。」
「施設の焼け跡にこの指を埋葬して里に戻ったら、俺が報告しておきますよ、表向きのね。」
「あ、カオルさん、帰ったら隊員に修行つけてあげて下さい、淋しがってましたよ?」
オレ達の休日を狙って演習を希望して来たんだ、お前がいないからって。 なかなか熱心ダーネ。
ウチの連中も、それぐらい気合いが入ってればイイんだけど。 最近、雑なんだよネ。
ホント? お返しに、今度オレ達の部下に修行つけてくれんの? アイツら喜ぶな、きっと。
最近なまってるから、ビシバシやってイイよ? めんどくさかったら、戌猫班まとめてみてやって?
「火遁 煉火の術っっ!!」 「水遁 鎮火流っっ!!」
「おみごと! どこからどう見ても、敵が暴れた感、丸出しです!」
「まあほとんど、カオルさんが砕いてましたからね、この辺り半壊してましたし。」
「そうそう。 オレ達は、燃やして消してかき混ぜれば終わり。 楽でイイよ。」
「・・・・・もう、そんな感動しちゃって。 また惚れ直したんでショ!」
「“カッコいい、大好きですオーラ”丸出しなんですよ、イルカ先生は!」
「くすくすくす! はい、めちゃめちゃ惚れ直しました、カッコいいです!」
やっぱりね! イルカ先生、オレ達のコト好き過ぎ! 抑えなさいヨ、任務中でショ? もう、このエロイルカめ!