鬼に魅入られた男 14
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暗部の待機所に、偶然にも四人そろった。 必然的にボク達の話は共通のイルカ先生の話になる。
この前イルカ先生が、アカデミーで新しく子供を受け持った話をした。 ワンパクで可愛いらしい。
イルカ先生はボク達だけが可愛いんじゃない、ワシワシするのもボク達だけじゃないんだ。
その話を聞いてからムカムカする。 イルカ先生の本職はアカデミー教師だからクラスを受け持つ。
そんなのは当たり前の事だと分かってるのに、イルカ先生の口から生徒達の話が出るとムカつく。
里に住む誰もが家族だと言った。 ならアカデミー生もボク達の家族のはずなのに、ムカつく。
親身になって心配してくれるイルカ先生。 ボク達の為に怒って泣いてくれた家庭教師。
先生から、受け持ちのクラスの話をされて面白くなかったのは、ボクだけじゃなかった。
あの時思わず、一緒にしないで! って一斉に言っちゃったんだ。 イルカ先生、ビックリしてたな。
「先生には言えないけどサ、アタシの任務干渉は完璧なんだ。」
「それはボクだってそうです。 感謝されまくってますもん。」
「表の忍びは、暗部の為を思って沈黙を守っているんだろう。」
「暗部の任務の邪魔をした、って思ってるみたいだもんネー。」
凄くがんばったボク達は、絶対アカデミー生なんかと同一視されたくない! てか、子供じゃないし!
確かにイルカ先生はボク達の家庭教師だけど、それ以上の存在だ。 先生に褒められると誇らしい。
イルカ先生からレクチャーされた任務干渉方法で、ボク達は三代目からも上層部からも称賛の嵐だ。
でもボクは誰よりもイルカ先生に褒められたい。 かんばってるな、ってワシワシしてもらいたい。
「一緒にされたくないねぇ、アカデミー生なんかと。」
「でもイルカ先生は同一視してるヨ、教師だもんネ。」
「おれ達が子供に変化してるから、じゃないか?」
「そうか、変化を止めれば子供扱いされないかも!」
「質問という形で、任務干渉の結果を知らせるのはどうだい?」
「イルカ先生、気付いてくれるかな・・・・。」
「暗部の姿のままなら、気付いてくれるでショ。」
「面越しになるが、それが一番いいな。」
そうなんだ。 変化してると素顔のままでイルカ先生と話せる。 でも元に戻ったら面越しなんだよね。
なぜだか分からないけど、イルカ先生とは面越しで話したくない、面が隔てている壁みたいで嫌なんだ。
でも取り合えず、ワンパククラスのヤツらと一緒にされたくないから、面越しは我慢するしかないか。
・・・・あ、でも、ボクの猫面には“もっとがんばりましょう”がついてるんだけど、おかしい?
「オレもあの時のまま。 面につけてるヨ。」
「失くすぞ? おれは鞘につけてる。」
「アタシはプロテクターにつけてるんだ。」
「あはは! みんなつけっぱなしだ。」
「イルカ先生に貰った物だし・・・・ネ?」
「里の家族を意識できるシールだ。」
「拗ねてるトコが可愛いんだよ、なんかさ。」
「・・・・他の表情もあるんでしょうか?」
ボク達のワシワシ記念の評価シール。 イルカ先生の流した涙が、言葉より雄弁に語ってたんだ。
三代目や部下、先生が、ボク達の事をこんなに心配してくれてたんだ、って心が温かくなった。
ごめんなさいなんて。 大人になってから、そんな風に素直に謝った事なんて一度もなかった。
あの時からボクは、イルカ先生に褒めてもらいたくて、笑ってもらいたくて、頑張ったんだよ?
キュっとボク達の小さな手を包み込んだ大きな手。 ワシワシとボク達の頭を撫でた先生の手。
今はその手を繋ぎたい。 子供扱いしないで、ボク達の手、同じ位の大きさでしょう? って。
大人の姿でイルカ先生に会ったら、ボクの何かが変わる気がする。 とにかく、ボクは伝えたいんだ。
イルカ先生はボク達が大切な存在だと教えてくれた。 だからボクも、先生が大切だと伝えたい。
「なあ。 部隊長達にとって、イルカ先生は欠かせないよな、ほんと。」
「うん。 お母さんに褒められたい子・・・・ って感じ。 健気よね。」
「部隊長達の任務干渉、むちゃくちゃ勉強になる。 オレいっつも誇らしいよ。」
「そうそう、おれらの事を信頼してる、って伝わってくるし。 充実するよな。」
「イルカ先生を結婚の魔の手から、人知れず守ってて、よかったなぁ!」
「今日の持ち回りは誰? 最近浸透してきてるから、楽でイイでしょ?」
「あ、おれ! 今日非番だから。 任せといてちょ、誘惑はさせんぞ!」
「「まだまだ甘えたい部隊長の為に!」」
「「俺たちなりの恩返しを!!」」
「「イルカ先生を誘惑する輩に災いをっ!!」」