鬼に魅入られた男 15
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部隊長としてイルカ先生に会いに行くオレ達。 前に怒られてから、血の一滴だってつけてないヨ?
イルカ先生、こんな場合こんな感じで、正規の忍びをフォローするのが一番いいよネ? とか。
こんな時はこう対処すると、里にとってめちゃくちゃ有利でショ? とかを、それとなく伝える。
ね、これ実行して来たコトだよ? 三代目や上層部に褒められたコトだよ? って知らせに行く。
でもイルカ先生は先生のままで、大正解です、凄いです、と言ってくれる。 嬉しいんだけど淋しい。
オレ達が本来の暗部姿で会いに行っても、イルカ先生の態度は子供の時とナニも変わらなかった。
イルカ先生にとってこの姿でもオレ達は、ワンパク組の子供と同じなの? ちょっと悲しいヨ。
「もう面をとって表に回っても浮かない、素晴らしい忍びになったと、三代目が褒めてましたよ。」
「フフ、イルカ先生の一般常識教育の賜だーネ。」
「俺は、本来の皆さんの姿を思い出す手助けをしただけです。」
「今ではもう、あうんの門が家の玄関だと思えるヨ。」
イルカ先生は、上手に例え話をしてオレ達を変えてくれた。 けど、先生はこれっぽっちも変わらない。
一般常識教育係、そうやってオレ達との接点を持ったから、そこからは逸脱しないんだ、それが淋しい。
でも今日はその淋しさが頂点に達した。 いつもの様に先生に会いに行って質問モドキをしてたら。
もしそれが実行されているなら、俺の役目は終わりですね、卒業ですよ。 イルカ先生がそう言った。
・・・・・え?! 今なんて言ったの?! 卒業・・・・・・・ って・・・・ どういうコト?!
イルカ先生が・・・・ オレ達の家庭教師じゃなくなる、の? なんで?! 先生、なんで?!
子供扱いはして欲しくないけど、イルカ先生が家庭教師じゃ無くなるのは、もっとイヤだヨ!
まだまだ教えて欲しいコトがたくさんある。 先生にこれからだってイッパイ褒めてもらいたい。
部下にも口に出して褒める様にしたのは、イルカ先生にそうされてオレ自身が嬉しかったからだ。
捨てた感情を拾い集めるって、先生が言ったんでショ? 自分じゃナニを捨てたかなんてわかんない!
「そのシールのね、一番いいのはニッコリ笑った“たいへんよくできました”なんです。」
「・・・・・・そんなのいらない。 “もっとがんばりましょう”だけでイイ。」
「このニコチャン、顔が拗ねてるでしょう? どうせなら笑ってるのをつけて欲しいんです。」
「・・・・・・そうしたら、イルカ先生はオレ達の先生じゃなくなるじゃない。」
「そう、先生じゃなく、家族です。 しかも仲の良い家族です、嫌じゃなければ。 くすくす!」
「・・・・・・・・・・・・・・・ぁ。 そうだよネ。 家族だ。 フフフ、うん。 そうだヨ。」
「後は皆さんが“たいへんよくできました”を目指して下さい。 もう楽勝だと思います。」
「うん、皆に伝える。 そしたらサ、あっという間に卒業だヨ? 先生ビックリしないでネ?」
そうだった。 一番始めアカデミーの屋上で過ごした時、イルカ先生は“家族で先生”だと言った。
オレ達は子供扱いして欲しくなかったはずじゃないか。 イルカ先生から卒業すれば良かったんだ。
専属家庭教師と暗部部隊長じゃなく、先生と生徒じゃなく、人と人。 超仲がイイ家族なんだネ?
イルカ先生は、卒業したらお祝いもかねて、皆でパッとやりましょう、と言った。 うん、賛成!
フフ、オレ達卒業したら、先生に祝われちゃうらしいヨ? どんな風に祝ってくれるのかナ? 楽しみ!
オレは淋しさのドン底から一気に浮上したせいもあって、ちょっと冷静さが欠けていた。
暗部の任務干渉を、どうやって表の忍びのイルカ先生に伝えたらいいの? 質問は所詮、質問だもん。
「アタシに任せな! さっき部下を、要請のあった現場に向かわせたんだ。」
「酉部隊に要請、って・・・・ 遺体の処理任務・・・・?」
「・・・・・だが、額当ては持って帰ってこれるぞ。」
「そうだネ。 家族を里に戻してあげれる。」
イルカ先生から卒業しよう、と皆に話していたら、タイミング良く酉部隊に任務が入ってたらしい。
酉部隊は空を飛んで現場にいち早く着けるから、急を要する要請には、必ず酉部隊が動く。
急を要する要請っていっても援護じゃない。 酉部隊が動く時は、仲間の遺体を処理しに行く時、だ。
敵に見つかる前に、情報がイッパイ詰まった木の葉の忍びの遺体を処理しなければならないからネ。
今までなら何も考えずそうしてただろうけど、表の上忍の様に、額当てを戻してやる事も可能だ。
例えまだ敵がチョロチョロしてても、情報が渡る心配はないヨ、酉部隊が必ず敵忍を仕留めるから。
「だからアタシも行ってくる。 正規の忍びだから、と受付に額当てを持って行くよ。」
「ナルホド! 受付ならイルカ先生の耳に入るヨ!! アズサ、頭イイ〜!」
「直接任務干渉のPRをしたら、イルカ先生でも気付くだろ、卒業だ。」
「額当てを回収して来たら“たいへんよくできました”ですよ、絶対!」
ウン、これでアズサが“たいへんよくできました”を貰ったら、オレ達も真似すればいいネ。
動けないから背負って来たヨ、でもちゃんと本人から報告書を受け取ってあげて? とか。
正規の忍びに扮してた間者を殺して来たヨ、元々の忍びは無事かどうか確認して? とか。
任務受付所の忍びを暗部の任務干渉の目撃者にすれば、イルカ先生は必ずシールをくれるはずだヨ!