忍びの里 10   @AB CDE FGH JKL MNO P




俺の回復を待って三代目から呼び出しがかかった。
九尾襲来の混乱で、里は当分の間、隠れ里連合中忍試験を辞退する。
落ち着くまで何年かかるがわからないが、参加を見送るのが、里の方針として決定したらしい。
けれど、混沌の時間は止まってくれない。 下忍のままそれぞれを各部所へ配属すると言われた。

「夕顔よ、お主はワシ直属の暗部に入れる。」
「・・・はい。」

「ハヤテは月光家に戻り、体調を整えつつ剣の奥義を極めよ。」
「はい。ゴホ、ゴホッ。」

「イルカ・・・ お主は潜入部隊に行け。」
「はい!」

「潜入部隊について大事な話がある。イルカ以外は帰ってよい。」
「「「はい!」」」

おれ達は、それぞれ別の道へ進む。 でも、いつまでも三本の槍だ。 それはずっと変わらない。




「さて、イルカよ・・・此度の事、詳細はイビキより、全て聞いておる。
 お主の精神力の強さが、どうしても欲しい。 ・・・木の葉の為に未来を捨ててくれ。」
「火影様?」
「くのいちはいずれ、木の葉の玉を産んでもらわねばならん。 ・・・くのいちは使えん。」
「・・・・・。」

「イルカ、潜入部隊で、色専門の暗殺任務を請け負ってくれんか。」
「!!!」
「お主の未来を楽しみにしておったワシが、お主の未来を潰す。 ・・・・・許せ。」
「三代目・・・・。」

三代目が下忍のおれに頭を下げた。 俺は三代目に言われたら、何でもやるのに・・・
俺の両親は九尾襲来で戦死した。 三代目はその後、なにかと気遣って下さった。
アカデミーを卒業出来たのも、下忍になれたのも・・・ 全部、三代目のおかげだ。
もとよりおれは断る気なんてない。 平凡なおれが里の為に出来る事があるなら、なんだってやる。

「お主の体に禁術を施す。 お主は一生、好いた者と一緒になる事は出来ん。 子も残せぬ。」
「おれ・・・アカデミー教師になりたいです。そうしたら、たくさんの子供が出来ますよね?」

「伽と暗殺を繰り返すのじゃ。 技を使いこなすまで、毎日訓練せねばならん。」
「お忘れですか、火影様。 おれは根性だけは一番ですよ?」

「イルカよ・・・ ワシと共に・・・ 血の道を歩いてくれ。」
「偉大な三代目、あなたと里の為なら、おれは喜んで血の海を渡ります。」




三代目自らが開発し封印した禁術、そのコード名を『毒』という。

体内に精子・卵子を取りこむことにより、そのDNAから脳内にバーチャルクローンを作り出す。
脳内のクローンと本体の意識をシンクロさせ、クローンが受けたダメージを本体に伝える。

バーチャルクローンを惨殺すれば、本体も同等の死に方をする。
何もないところで水死させたり、凶器も無いのに首が突然切れたり。
死に方をイメージし、本体に伝えるだけで、いつでもその通りに殺す事が出来る。

一度でも性交を持ったら最後。  相手の命はその時点で、頭の中にある。
DNAを盗まれた事も知らないまま、日常生活へ戻す。
何時でも・・・好きな時に・・・どんな方法ででも・・・・殺せる。

幻術ではなく、実際に起きる。 遠隔操作で、証拠も何も残らない殺人が可能だ。
それが・・・・・ 『毒』の暗殺任務成功率100%の秘密。



「『毒』を施されて精神崩壊しなかったのは、俺だけなんだそうです。
 自分の頭の中に他人がいるという事に、皆、耐えられなくなる。 そして自ら死を選ぶ。
 あまりに犠牲を出し過ぎたため、三代目はこの術を禁術として封印なさいました。」

おれはイルカの話を黙って聞いていた。 イビキもその後のイルカを作った一人なんだろう。
そうか・・・・イビキが言っていたのは、この事だったのか・・・。
この心の強さ・・・ 俺が惹かれて、惹かれて、どうしょうもない訳がわかった。

・・・? 木の葉の仲間にはイルカからは絶対近づかないはず。 なのにさっきの二人の言動は・・・


「カカシ、ヤマト、お前達はイルカを力づくで犯したんだな?」
「・・・・あたり。」
「はい。 その通りです。」
「・・・・くっ。」

悲しそうな顔は、見たくない。 こいつは力ずくで犯されたから、辛いと思っている訳じゃない。
暗部の・・・ 部隊長と呼ばれるほどの忍びの命を、自分が握っていることが辛いんだ・・・
ただ悲しいだけじゃない、もっと・・・ 何かべつの・・・苦しみ?  ・・・まさか!!

「イルカ、『毒』は・・・・」
「ええ。 幻術と違い、術者が死んでも効果は消えません。 ・・・だからお二人は・・・ くっ!」
「イルカさんと一緒に死ねるなんて 夢のようです。」
「ネ? オレ達が、イルカ先生のモノ・・・言ったろ?」