忍びの里 3
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おれは上忍待機所で、男を探した。 暗部のくせに有名すぎる奴、はたけカカシ。
部隊長クラスなら、昨日の猫面の男を知っているかもしれない。 奴は戌班の部隊長だ。
暗部は面をつけているが、ほとんどが他国のビンゴブックに載っている為、あまり意味がない。
おれに言わせれば、あんな邪魔なもの、よく着けて動けるなと、ある意味関心する。
だがこの男に、その理由を聞かれたら、もう済んだ過去の事で、不快感を与えるかもしれない。
先の中忍試験の時、イルカは推薦に反対の意を申し立て、カカシを怒らせた。
まあ、イルカに傾倒している今じゃ、イルカの気持ちが分からないでもないが、
オレはどちらかと言えば、カカシよりの意見だった。
三代目の前で、上忍師の決めた推薦事項に中忍が反対したんだ、大問題に発展すると誰もが思った。
あの後、木の葉崩しが起こり、それどころではなかったから、そのままうやむやになった。
大蛇丸の仕掛けた木の葉崩しで、誰もが尊敬する偉大な父親、三代目火影を失い、
五代目火影に綱手様を迎えるまで、里は忍界大戦時に戻ったかのように、混乱を極めた。
今では五代目を中心として、里は本来の姿に戻り、落ち着きを取り戻している。
あれから一年。不快にさせたとしても、カカシの怒りも、おさまっている事だろう。
カカシとは年も同じで、一緒にいくつかの戦場を駆けまわった。知らない仲じゃない。
イルカの事を打ち明け、おれの顔をたてて、あの出来事を水に流してもらってもいい。
“お前が恋してるだって? 何の冗談?” ・・・・脳内にあの男の呆れ顔が浮かぶ。
「よ!政木、・・・しばらく見ないうちに、雰囲気まるくなった?」
「それはお前もだ、カカシ。 ・・・やっと里が落ち着いた証拠だな。」
カカシの方から声をかけてきた。 これは、話を切り出しやすい。
おれはカカシに猫面の男を知っているかと尋ね、その男に言われたことも、それとなく伝える。
“とある男”・・・そう言ったはずが、カカシには誰のことか、もうわかったようだった。
あごに手をやり、少し地面を睨むようにして、何かを思案しているようだ。
仕方がない、イルカのことを打ち明け、もう、あいつを許してやれと、なだめてみるか。
「・・・だからな、今、恋なんてのをしている。 ・・・笑いたければ、笑え。」
「・・・・笑えない。」
「天下の写輪眼が、一年前の口論を根に持っているのか? 戦友が頼んでるんだ、忘れてやってくれ。」
「・・・そうじゃない。 そうか・・・ なら、お前には、真実を知る権利がある。」
そう言ってゆっくりと地面から視線を上げた、そのカカシの目を見た時。
おれは一瞬、自分がまだ戦場にいるのかと錯覚した。 それぐらい、隙のない目をしていた。
カカシはついて来いと、おれの前を歩く。 言われるままカカシに続く。 胸の棘はまだ抜けない。
道すがら、猫面の男は自分と同じく、猫班の部隊長だと教えてくれた。
この先のエリアは、暗殺戦術特殊部隊の拷問部だ。 ココに何があるというのか・・・
おれは、イルカと拷問部の接点を見つけられないまま、ある牢屋の前まで来ていた。
そこに入れられていたのは雲隠れの忍び・・・・ おそらく上忍だ。
カカシが“ヤマト”と一声かけると、昨日の猫面の暗部が瞬身でやって来た。
「こいつ今、綱手様に表もやらされてるから。 表で会ったら可愛がってやってネ。」
「表のコードネームは ヤマトです。こんなに早くお会いすることになるなんて、思いませんでした。」
「・・・・すまん、まだイルカと結び付かない。話してくれ。」
「ボク達が話すより、ご自分の目で見た方がいいと思います。」
「あ、まだ間があるから、これ読んでなヨ。」
そう言って渡されたそれは、この牢屋の記録だった。
本来はもっと分厚いはずの観察調書記録。 不思議な事に中身が七ページしかない。
ペラペラとめくってみると、後ろの二ページ以外は、全部文字で埋まっていた。
「オレ、これから任務だから。 まぁ、ゆっくりしていってチョーダイ。」
「ボクは待機ですから、政木上忍と、ご一緒させていただきます。」
「・・・・・わかった。」
しばらくすると、拷問部室長、森野イビキが、数人の部下を引き連れてやって来た。
奴とも、幾多の戦場を共にした。 そういや、こいつは死体を辱めるのが趣味だった。
イビキが言うには、死姦は最高だそうだ。 奴にとって、拷問部はさぞ居心地がいいだろう。
おれはさっきから気になっている事を、直接聞いてみることにした。
「お疲れ様です、イビキさん。」
「おう、ヤマト! ・・・おっと、珍しい顔がいるな、政木?」
「久しぶり。 なあ、イビキ。 イルカは拷問部所属なのか? 潜入部じゃなかったか?」
「んあ? 今もあいつは潜入部だぞ? こっちはヘルプだ。 しいていえば『飴と鞭』の『飴』担当だ。」
「そうか。 今日は、イルカの『飴』ぶりを見学させてもらいに来た。」
「・・・・・・・。」