忍びの里 13
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ボクは、三日もかからずに回復したから、彼の役目はこれで終わり。
だけど、イルカさんと、このままサヨナラするのは嫌だった。
三代目が言っていた・・・イルカさんの次の任務まで、三日あるって。
もう一日、彼に来てもらうように言ってみよう。ボクはまだ回復していない事にして。
「いるかさん、明日も来てくれませんか? まだ本調子じゃないみたいです・・・」
「もちろんです。 俺、明日までオフなんですよ。 明後日から任務が入ってるんですけどね。」
意識があった事は、内緒にしている。知ってます、聞いてました・・・と、今さら言えないよ。
彼ともっと話がしたい。イルカさんの事を知りたい。これじゃ、恋する乙女みたいだ・・・
「知ってる気配がすると思ったら・・・ お前、いつまで油売ってんの?
回復したら、すぐに知らせなさいヨ。 ひとりだけ休んでんじゃないっつーの。」
「先輩・・・。すみません、明日まで待って下さい・・・そしたらすぐに復帰します!」
「めずらしーネ、お前が口答えするなんて。 こいつのせい? こいつ抱いてみた?」
「な! 先輩!! 何言ってるんですか?!イルカさんに・・・・・・・ イル、カさん??」
「カカシさん、まだこの方のチャクラは完全に回復していません。復帰予定は明後日です。」
「ふ〜ん・・・。まぁイイや。ねえ、あんた腕なまってない? オレ、まだ生きてるんだけど。」
「・・・・。」
「?! イルカさんと、先輩は・・・・どういう・・・?」
「あらー、知らなかった? こいつに夢見てたら痛い目見るよ? ・・・・『毒』だもん。」
「!!!」
「・・・・・・。」
『毒』・・・ 最近よく耳にする・・・ 色専門で暗殺任務を請け負い、失敗をした事がないらしい。
もの凄い寝技を持った、くのいちの事かと思っていた。 まさか、イルカさんが・・・・・?
それに、さっきの台詞はまるで・・・ イルカさんが、先輩の暗殺に失敗したような口ぶりだ・・・
ボクの中にまた違う何かが湧きおこる、それはまるでマグマのようにボクを襲った。
「・・・イルカさんが『毒』だったら、何だというんですか! イルカさんはイルカさんだ!
ボクは・・・・ ボクは、この人が好きだ!! そう、好きだ・・・ 好きなんだ・・・・」
昨日会ったばかりだ。 まだほとんどイルカさんの事を知らない。 でもこの気持ちは温かい。
ボクが一番欲しかった言葉をくれた。 ボクの為に泣いてくれた。
燕の巣の話をしてくれた・・・ 好きになるきっかけなんて、それで充分だ!
ボクは先輩に逆らった事なんてなかった。 でも・・・ でももし先輩が・・・
「へー そう。 んじゃ、お前も混ざってみる? コイツほんとに最高だよ?」
「!!!」
「カカシさん! 駄目です!!」
そこからは悪夢だった。 先輩はそういうと、駄目だと叫ぶイルカさんを犯し始めた。
先輩を止めなければならないのに、ボクは動けない。 ・・・目が・・・・・ 離せなかった。
柔らかい関節、動きに合わせて洩らす息、力を抜くコツ。 これは・・・誰だ?
滑らかな肌、無駄のない筋肉、肩をながれる黒髪、震える唇に見え隠れする赤い舌・・・
さっきまでのイルカさんからは想像できない、恐ろしいまでの艶があった。 まるで別人の様に。
とぎれとぎれに吐き出す声が、耳をなでる。潤んだ瞳とぶつかった。 それは強い光を保ったままだ。
ボクは・・・・ イルカさん!! ボクはっ・・・・
「木遁! 木錠壁!!」
「・・・クソッ!」
「!!!!」
ボクはイルカさんを、自分の木遁の中に閉じ込めた。 ここには先輩は入ってこれない。
ありがとうございましたと、お礼を言うイルカさんの肩に触れた。 もう、だめだ・・・。
イルカさん、ボクにお礼を言うのは間違いだよ。 だって、ボクは・・・。
「・・・? どうしたん・・・ あっ! んっん・・・っ・・・・」
砂漠で獲物を待ち構えるアリ地獄へ、知らずに足を踏み入れた動物のようだ。
抜けだそうともがけばもがくほど、砂の中へと引きずり込まれる・・・・
ボクはイルカさんの肩に吸い付いた。 きっとそういうふうに訓練されているのかもしれない。
彼の肌は、吸っても鬱血しない。 まるで体に吸収されるようにスーッと消えていく。
首に強く噛みついてみたが、同じだ。 イルカさんはイチイチ反応してくれる。
彼の全てを、喰い荒したい感情に駆られる。 まさに『毒』だ。