忍びの里 5   @AB CEF GHI JKL MNO P




「すみません、お待たせしました・・・って、政木さん?! 探したんですよ?」
「イルカ・・・」
「子供たちに、せっかく大口のパトロンを紹介しょうと思ってたのに!」
「それはすまなかった。 今日はお前の仕事ぶりを、見学に来たんだ。」

アカデミーから帰宅したイルカが、やって来た。 どうやらおれを探していたらしい。
今度は違う味の猫餌缶をごっそり寄付してやる、その時に紹介してくれ、と言ったら、
これ以上は頂けませんと、お断りされてしまった・・・ またいちからアピールし直しだ。
イルカは拷問室の中へ入って行った。 これから記録される、六日目が始まる。



「パトロン? 猫餌缶?? 何だそれは。 知ってるか? ヤマト。」
「いーえ。 ボクにも何の事だか見当がつきません。」
「・・・二人だけの話だ、気にするな。」

ヤマトがつけていた面を取り、首にかけた。 その顔には、はっきりと不快感が浮かんでる。
ポーカーフェイスのカカシと違って、ヤマトはずいぶん分かりやすい男だ。
ひょっとすると、こいつもイルカの事が好きなのかもしれないな・・・・
おれは、態と説明してやらなかった。 ちょっとした仕返しだ、他意はない。
イルカになぜ深いりしてはいけないのか、今すぐ話すなら、教えてやらないでもないが。

「・・・・・。」
「・・・・・。」
「あー、火花散らしているとこ悪いんだが、始まったぞ? 見学するんだろ、政木?」

まあいい。ここまで来たんだ、今さら教えないという事はないだろう・・・
暗部拷問室の牢にいるのは、雲隠れの上忍。 イルカの人間らしい情にふれ、何かを話すらしい。

どこの隠れ里も、上忍クラスになると、暗示にはかからないし、拷問も慣れている。
どんな呪印が施されているか分からないから、無理に頭の中を弄れない。
自主的に情報を話してくれるのが、一番。 さあ、イルカのお手並み拝見だ。



「痛みはまだありますか? 今、包帯をお取り替えしますね。」
「・・・・。」
「・・・よかった。これ以上、酷い事されてたら、五代目に話そうかと思ってました。」
「・・・分かってないな、お前は。 ・・・ 昨日・・・指の神経をやられた。」
「!!!」
「お前は奴らに記憶を消されている。 奴らはお前が考えているほど甘くはない。」
「嘘です! ・・・木の葉の忍びが、上忍であるあなたに、まさかそんな!!」

「・・・・お前が心底、俺の事を憐れんでくれるなら・・・・ 早く楽にしてくれ。」
「・・・出来ません。俺は・・・あなたを回復させるのが役目です!」
「殺してくれると約束してくれるなら、この度の取引の裏を教えてやる。」
「・・・・・。」
「おまえも情報を得る事が出来るから、奴らに責められることはない。」
「・・・・・。」

「その後、出来れば・・・お前の火遁で灰にしてほしい。あんな綺麗な炎は見た事がない・・・」
「どうして・・・?」
「知っているかって? さっき言ったろう、お前は奴らに記憶を消されている。」
「では、本当に・・・木の葉の同胞が・・・?」
「仲間の遺体を辱めた。・・・俺の目の前で。」
「!!!!」
「お前は・・・・俺の仲間を綺麗に火葬してくれたんだ・・・」
「・・・・・・・。」

「俺の死体を奴らに渡さないでくれ。 頼む、最後は上忍のまま死なせてくれ。」
「・・・分かりました。 それで本当に・・・あなたが楽になれるのなら。」
「お前なら、そう言ってくれると思った。ありがとう。」
「約束します・・・必ず。」



「木の葉の下忍二人と、木の葉に投獄されている、うちの忍の人質交換だが、
 お前のところの下忍はもう死んでいる。俺たちが発見した時には既にこと切れていた。
 雷の国主がその死体を使って、うちの忍びを取り戻そうと言い出したんだ。
 生きているように見せかければ、木の葉は、消して仲間を見捨てないらしいからな。
 だから取引に応じなくていい。 みすみす脱獄の手伝いをしてやる必要はない・・・」

「そんな・・・ 二人がもう死んでいたなんて・・・ うぅ・・・」
「泣き虫だな・・・ こんな優しい忍びに最後に会えて・・・嬉しかったぞ。」
「・・・上忍・・・ 今度は俺が、約束を守る番ですね・・・・・。」