忍びの里 7   @AB CDE GHI JKL MNO P




「政木、俺が教えてやろうと思ってたんだがな・・・カカシも帰って来たし、本人たちに聞くといい。」
「アンタはただ、ヤリたいだけでしょ?」
「ははは、そうとも言う。 さて、仕事して来るか。俺は牢に行って来る。じゃあな。」
「相変わらずだな。」
「「・・・・・・・。」」

昔イビキには女がいた。 心底惚れて、大切にして、抱いてもいなかった。 イビキの目の前で殺られた。
アイツは・・・女の息が止まるその瞬間まで抱き続けた。 それ以来、死体じゃないとイケない。



「政木・・・ やっぱりお前も、・・・オレ達と同類だネ・・・」
「ここのイルカさんを見ても、動じませんでしたからね・・・」
「政木さん? まさか・・・!!  俺は駄目です! 駄目なんです!!」
「イルカお前・・・。 おれ一人蚊帳の外か、いい加減説明しろ。イルカに惚れて何が悪い!!」

イルカ自身もこの反応だ。 おれがイルカに惚れている事が、わかったのだろう。
こんな風に告白するとは・・・ おれ自身、驚いた。 これが、キレるというやつか・・・初体験だ。
今、カカシは“オレ達と同類か”と言った。 ということは、コイツらも惚れてるのか・・・。
まあ、分かる気がするな。 暗部生活の長いあいつらじゃ、喉から手が出るくらい欲しいだろう。

「イルカ先生に夢見てるヤツって、実際、結構いるんだよねー。」
「拷問室の記録を読ませるか、実物を見せるかすれば、ほとんどの人は目が覚めます。」
「そんな奴らと、一緒にするな。」
「・・・・。」



「もうわかったと思うけど、イルカ先生はオレ達の・・・・ 違うな、オレ達がイルカ先生のモノ。」
「ボク達は・・・ イルカさんがいないと、生きていけないんです。」
「なら、おれもだ。 イルカがどうしても欲しい。」
「どうして・・・ あなたほどの忍びまで・・・・」

そう宣戦布告をしたところで、こいつら二人が相手じゃ、分が悪いのは明らかだ。
せめてどちらか一人なら、おれにも勝機があったかもしれない。
まいったな・・・ せっかく本気で欲しいと思う気持ちが芽生えたのに・・・
かといって、おれはこいつらみたいに、イルカを共有することは出来ないだろう。
どうしても・・・どうしても、おれだけのものにしたい。 こんな激しい気持ちも初めてだ・・・

「政木上忍、あなたはイルカさんを抱かずに、愛する事が出来ますか?」
「お前さ・・・・ ずーと肉欲なしで、イルカ先生と一緒にいられる?」
「無理だな。 おれはイルカ、お前を抱き殺したいくらいだ。」
「っ!!」

「ははは、そう言うと思ったヨ。 お前も、オレと・・・・ オレ達と一緒。」
「駄目です! 俺は『毒』なんです! 木の葉の仲間を殺める為にあるのじゃないっ!!」
「・・・毒? ・・・てっきりくのいちの誰かだと思っていた。 お前なのか・・・・ イルカ。」
「ボク達は皆、同じ穴のむじなです。 でも選ぶのは政木さん、あなた自身だ。」

オレの心に刺さっていた棘が・・・今やっと、抜けた。


コードネーム『毒』・・・ 存在は極秘扱いだ。 色の暗殺任務だけを請け負う忍び。
そいつの抱き心地は最高らしい。 だがそれを証明出来る者はいない。 任務成功率100%だからだ。
体を使うという事はリスクを伴う。 うまく退却できればいいが、下手すれば返り討に合い即死だ。
木の葉のくのいちは優秀なのが多い。 だが、成功率100%を誇るのはそいつだけだと聞く。

そんな話は、くのいちを守るための作り話だ、と言う奴もいたし、
毒は一人ではなく、複数のチームなのかもしれない、と言う奴もいた。
おれは、最高のくのいちに与えられ、引き継がれていく代名詞、栄誉のコードネームだと思っていた。
実在していたのか・・・。  イルカが言うなら・・・ おそらく真実だろう。

「政木さんが、冷静でよかった・・・ あの・・・ 好きになって頂いて、ありがとうございます。
 俺はあなたを尊敬しています。 イビキさんも。 もちろんカカシさんも。 それからヤマトさんも。
 少し長い話になりますが、俺が下忍の頃の話をします。 聞いていただけますか?」

「ああ。 お前の真実を知りたい。」
「「・・・・・・・・。」」

『毒』の誕生秘話を静かに語り始めるイルカは、おれに真実を教えてくれた。 封印した己の過去も。