忍びの里 8
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今から13年前、木の葉に厄災が起こった。 尾獣の中でも最悪と称される妖孤、九尾の襲来。
四代目火影夫妻の尊い犠牲により、その脅威は退けられたが、里は壊滅的なダメージを受けた。
引退していた三代目が火影再任となり、木の葉の里はまた、力強く立ち上がる。
三代目火影再任の情報を受け、四大隠れ里は手を引いたが、その国主らは裏工作をやめなかった。
トカゲのシッポは何度でも切れるとばかりに、無名の隠れ里を使い、金で動く忍びを雇う。
隙あらば火の国の領土を奪おうとしている国主ばかりだ。この隙を見過ごすはずはない。
九尾襲来後の混乱に乗じ、火の国の国境は次々と侵され、他国の侵略を受けていた。
木の葉の忍び達は皆、国境の死守に徹する毎日だった。 日々、一進一退を繰り返す。
ココは前線、国境の一つ。 配属の医療忍者がやられた為、前線部隊は退却を余儀なくされた。
この敵は、強力な毒液を使う。 解毒役の医療忍者がいないと、太刀打ちできない。
今攻めてこられたら、戦線部隊は全滅してしまうだろう。
まだ医療忍者の不在は知られていないが、情報が漏れるのは時間の問題だ。
生死を分かつ状況に長く置かれると、人間は性的衝動を抑えられない。
動物の本能が、種を残そうとする・・・ 敵は、まさにその状況といえる。
「馬鹿なこと言うな!! 殿は上忍がやる! 当たり前だろう?!」
「上忍が捕縛されたら、生きて帰ることはできません。 でも、私たちならまだ可能性はあります。」
「ぼくらは下忍になったばかりで、情報もほぼ皆無です。 頭を覗かれても大したことはありません。」
「前線での駐屯生活が長いので相手は欲求不満です・・・ 1〜2日位なら確実に生き残れます。」
「『白い牙の過ち』はもう繰り返さない。 木の葉の忍び全員が誓った。・・・そうだろ?」
「だからです、隊長。 昨日三人で、話しあいました。 3人もいれば、十分です。」
「私たちは、待っていますから。 ・・・必ず助けに来て下さい。」
「足手まといのぼくたちが、この部隊の為に出来る唯一の事なんです。」
そう、敵は性的欲望が膨れ上がっているだろう。 選り好みはしていられない状況だ。
もし慰安娼婦や、くのいちの援護が来たら、この策は使えない。 部隊全員が退却出来るのは、今しかない。
案を出したのはくのいちの夕顔。 夕顔が一人で囮をやると言いだした。
俺は夕顔を殴った。女だろうが関係ない。 だってそうだろ? おれ達はスリーマンセルだ。
『もう一度言ってみろ、もう一発入れるからな!!』
『それに夕顔、一人で敵忍50人弱を相手に出来ると本気で思ってる?』
『イルカ・・・・ ハヤテ・・・・』
『ぼく達は先生に言われたじゃないか。 三本の槍のようだって。 一人でやるなら反対だよ?』
『一本の槍はすぐ折れてしまうけど、三本まとめるとなかなか折れない。 そうだろ?』
『・・・ごめん・・・ そうだったね・・・ 明日一緒に・・・ 囮に・・・なってくれる?』
『最初から、そう言えばいいんだよ!! ・・・ごめんな、殴っちゃって・・・』
『・・・大丈夫。 ・・・それにイルカのパンチは、ヘナチョコだから効かないし。』
『ははは。明日、隊長に直訴しよう。 ぼく達三人で。 いいね?』
足手まといの下忍の使い道なんて、たかが知れてる。 少しでも有利に、有効に時間を稼ぐ方法。
夕顔は破瓜を済ませてたんだろう、こんな策はくのいちしか思いつかなかったと思う。
おれ達は、互いの手を取って額を突き合わせ誓った。 何があっても生き残ろう、と。
前線部隊は一時退却するが、医療忍者を補充したら必ず救出に来てくれると信じている。
「お前たちの上忍師は・・・」
「四日前、私たちをかばって爆死しました。」
「・・・そうか。」
「おれ達はいつも誰かに守られてばかりです・・・ おれ達にも守らせて下さい。 お願いします!」
「・・・白い牙を自害させた奴らと同じ、仲間を犠牲にするクズになれと、俺に言うのか?」
「隊長、ぼく達は信じています。 生きてるうちに・・・ 戻って来てくれますよね?」
「こんな強い忍びを後世に残してくれた、お前たちの上忍師に。 心から感謝する。」
隊長が全員に号令をかける。 一時撤退し、医療忍者を何人か補充したのち、国境を取り戻す、と。
そしておれ達に、“何があっても生き残れ、絶対戻って来るから待っていろ”と言った。
本隊と合流できずに、はぐれてしまった実戦経験の乏しい下忍・・・と思わせる。
前線部隊が退却し始めると同時に、おれ達は敵陣のなるべく後方へ回り、わざと捕まるのだ。
「おれ達は・・・三本の槍だ。」
「私達は・・・絶対に折れない。」
「ぼくらは、ぼくらの戦いを。」
額を突き合わせ、手を取り合い、誓う。 見てて下さい、先生・・・
最初にやってくれた先生はもういないけど、おれ達の班の誓いの儀は、これからもずっとコレだ。