忍びの里 15
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「雷遁! 雷切一閃!!」
少しばかり手こずったが、雷切を喰らわせてやったら、木錠壁が音を立てて裂けた。
あいつは潜入部隊の奴だ。色専門の暗殺ばかり・・・ 騙されやがって、馬鹿が!!
なーにが“好きなんです”だ、正気か?! アレは男だけど、くのいちだ。 それも里の極秘の。
何を聞かされたか知らないけど、そう思わせるのが手腕なんだよ! 間に合ってくれっ!!
「くそっ! 遅かったか・・・・・ な、んだ?・・・ なんだコレ・・・・」
「イルカさん、ごめんなさい、イルカさん・・・・ っ・・・」
「駄目だと・・・ん、言ったのに・・・・ 全部知って・・・ んん、どうして・・・あっ・・」
それはどこかで見た事のある風景だった。 親が子供を見守る、そんな懐かしい風景・・・
他人の情事をこんな風に感じた事なんか一度だってない。 ただのセックスだろ、なのに・・・
突っ込んでいるあいつの方が泣いてるなんて ・・・オレの後輩は、もっと優秀なはずだろ?!
何かおかしい。 前にオレが見た暗殺現場・・・ あの時の氷のような冷たさがない・・・・・
「お前ら、ココでなにしてる!!」
「!!」
「!!」
「ん・・・イビキ、さん・・・」
火影屋敷で、木遁や雷遁を発動させたら、誰か来ない方がおかしい。 オレも冷静ではなかった。
我に返って行動を反復する・・・ 気を取られ過ぎだ・・・ これだからくのいちは怖い。
暗部、拷問部の森野イビキか・・・ 厄介だな、三代目の腹心だ。
コイツは現場を押さえられてるし、オレも汁まみれだし・・・ こりゃ、ゴマかせないね・・・
素直に、抱きました、ゴメンナサイ、と言って謝っても、見逃してもらえないだろう。
何しろ『毒』は里が極秘扱いにしている存在だ・・・ さて、どう出るか・・・
「あのさ、イビキ、!! ぐっ・・・つ!!」
「お前らの話は後だ。 ・・・・くそっ、イルカ、取り込んだのか?!」
「・・・はい。 ・・・カカシさんの方は、一ヶ月前に・・・・・」
「一ヶ月って、お前・・・なんてことだ・・・。 とにかく、すぐに火影様に報告に行け、いいな?」
「・・・・はい。 ・・・済みませんでした ・・・完全に俺の・・・ ミスです・・・」
・・・いてっ、加減なしで殴りやがった・・・イビキのこんな張り詰めた顔は、久しぶりに見た。
「・・・お前らが馬鹿なのは知ってる。 だが、ココまでとは思わなかったぞ?」
「・・・・・。」
「・・・・・。」
「いいか、これは作り話じゃない。よく聞け。」
そしてオレ達は真実を知った。 禁術 『毒』の効果を。 ・・・・暗部の里内での立場も知った。
・・・・そうか、別に驚きはしない。カカシ達の口ぶりで、薄々そうじゃないかと思った。
暗殺戦術特殊部隊の各部隊は、反木の葉に成り得る人物の危険度で、振り分けされている。
実質統括しているのはこの、拷問部。 だから、拷問部以外の暗部隊員は、皆監視対象だ。
いずれ、里に反逆する恐れのある忍びの、集団管理システムそれが暗部だ。
たとえば、戌部隊長のカカシ。 父親を自害に追い込まれ、その当時、かなり里を恨んでいた。
そして、猫部隊長のヤマト。 もともと大蛇丸に作られた人間だ、どう転ぶかわからない。
イルカのマンセル仲間の夕顔は 念のため・・・といったところか。
囮であれだけ子宮を酷使したんだ、彼女はもう、子供は望めないだろう。里を憎むかもしれない。
面と刺青に施された呪印も、後から施された訳ではなく、当初から仕掛けられていた。
誰かが抜けて、どこかで爆発でもしたんだろう、話すしかなかったらしい。
一度はいったら 本当の意味で信用されるまで、表には出さない。
もちろん、引退はない。 生涯、里の危険人物として監視下に置かれる。
里抜けを黙認された忍びは、木の葉に必要ないと判断された者たちばかりだ。
一番最近ではうちはサスケがそうだ。 うちは一族のくせに心が弱すぎる。 あれでは使い物にならない。
うちは一族は写輪眼を保持しているが故に驕り過ぎた。 その結果、三代目に粛清される事になる。
謀反を事前に察知した三代目が、里の平和を守るため、一族排除の決断を下した。
イタチによる“うちはの悲劇”といわれるものは、実際には謀反人どもの公開処刑だ。
自分の不幸を全て周りのせいにする人間は、弱い。 サスケはイタチのドコを見ていたのだろう。
一番信頼していた兄だったはず。 何故、自分だけは信じようと思わなかったのか。
一族皆殺しの命を受けたイタチが、三代目に唯一懇願したのは、弟の生存だ。
この時、監視対象だったうちはイタチが、里への忠誠心をみせたことで、サスケの命は救われた。
やっと表に出られたイタチは、要注意組織『暁』の内部スパイとして、おおいに活躍中だと聞く。
兄の精神力と忠誠心に比べたら弟はいらないと、五代目もそう判断されのだろう。
里に残すうちはの血は、兄のイタチだけで充分だと。 不安定な血を切り捨てただけの事。
綱手様は初代火影柱間様の孫だ。 最高の医療忍者、三代目の愛弟子でもある。 だが・・・・。
その綱手様でさえ、血液恐怖症を克服するまで里に足を踏み入れるなと、里を叩き出された。
全ては木の葉の里の為。 泥水をかぶりながら笑っていられる・・・ 火影の名前は、それ程重い。
今では綱手様は立派に五代目火影として、三代目の後を継いでいらっしゃる。