忍びの里 17
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「お疲れ様でした、お帰りなさい。 政木上忍。」
「コレはマグロ味だ。 持って行け。」
おれは今、擬態の訓練中だ。 任務受付所で今日もイルカに猫餌缶を渡す。
そんなおれを見て、木の葉の狂刀が錆びただの、折れただの言うやつがいるが、好きに言わせておく。
潜入のプロに鍛えてもらってるのだから、そう遠くない未来に、人間らしく振る舞えるはずだ。
「こんなに頂けないと、お断りしたはずですよ?!」
「・・・・抱かずに我慢してやっているんだ、コレぐらいイイだろ。」
「! っそ、そんなことを、表で・・・ ココで言わないで下さい!!」
「本音を言っては駄目なのか。」
「あ・・・ 当たり前ですっ!!」
おれのお手本は手厳しい。 本当の事を正直に言ったら怒られた。 どうしたらいいんだ?
おれがウンウン悩んでいたら、 イルカが笑いだした。
「あははは、そんな、情けない顔・・・しないで下さい・・・くくく。」
「そうか。おれは今、情けない顔をしているんだな?」
「ふふ、降参です、政木上忍。ただし、毎回、一缶だけにして下さいよ?」
「育ち盛りなのに、食わせないのか?」
「アカデミーの仔猫は4匹です。そんなに一杯食べられません!」
・・・・・カカシ、ヤマト・・・痛いぞ? いい加減、睨むのはヤメロ。
イルカとおれが人間らしく会話をしていると、決まって、どこかから殺気を飛ばしてきやがる。
今さらどの面下げてと諦めていないで、お前らもやってみればいい。 なかなか楽しいぞ?
イルカは、お前らがどんな態度で接しても、拒みはしない。人一倍、情に厚い男だ。
もう何年間、頭の中にお前らを飼ってると思ってるんだ。
イルカ自身でさえ、里の為か自分の為か、気が付いていない。
あいつらは、最初が最初だっただけに負い目を感じ過ぎて、今のイルカを見ていない。
お前らの仕出かした事なんて、アイツの中じゃ『若気の至り』でもうとっくに時効を迎えている。
あえておれから、教えてやる義理はない。 だってそうだろ? あいつらは生きてイルカを抱けるんだ。
イルカを抱いた奴は、みんなこの世にいない。 任務成功率100%だから。
いつも見ていたお前達が、一番よくわかっているだろう? それに、イルカは問題児が大好きだ。
男のくせに、母性本能備えまくっている。 馬鹿な子ほど可愛いもんだと言っていた。
「ガキかお前らは。 ・・・痛いと言っている!」
「ま、政木さん?! どこか痛いんですか?!」
「いや? あー、・・・その、頭が痛いな。 ちょっと、なでてみてくれ。 治るかもしれない。」
「何言ってるんですか、そんな訳ないでしょう?! すぐ綱手様に見てもらって下さい!」
誘導は・・・うまくいかなかった。 やっぱりおれは潜入任務にはつくづく向いていない。
ココはおれらしく速攻でいく。 おれはイルカの手を掴み、強制的に頭の上にのせる。
ついでに、手のひらにも口付ける。 格段にに鋭くなったあいつらの殺気が背中に突き刺さる。
やっと出て来たか。 こいつらから見たら、おれは脅威だろう。イルカの苦しみを分かってやれたから。
後から出て来たトンビに油あげをさらわれたくない・・・といったところだ。
おれはお前達のなりたかった姿に、近いのかもしれないな。
けど、おれが惚れたイルカは、お前達がいたから今迄死なずに来た、それは事実だ。
「よし、治った。」
「な、なな・・・政木さん!!」
「お前、上忍が受付業務の邪魔をするもんじゃないデショ?」
「頭は綱手様に見てもらって下さいね? 政木上忍。」
「コレぐらい大目に見ろ。 了見の狭い男は嫌われるぞ? ・・・じゃあな、イルカ。」
アイツらが守って来たから、おれも出会えた。 もっと前に・・・ そうだな・・・・・
三代目がまだ生きている時にイルカの擬態に気付いていたら。 おれは身を引いたりしない。
イルカには悪いが、やっぱり力ずくで犯して・・・ おれは喜んで取り込んでもらっただろう。
お前らに対するイルカの情はとっくに仲間意識を超えている。 それはもう、愛じゃないのか?
お前らが守って来たコイツを直視してみろ。 どんな事も受け止める強さをもっているだろう?
それはイルカ本人にも教えるつもりはない。 形だけでも“心を手に入れた男”という事にしておきたい。
おれは暗部の推薦を蹴った。 面が邪魔で動きにくい、そう思ったからだ。
でもあの時入隊をしていたら・・・・。 もしかしたら『毒』の護衛に付けたかもしれない。
あいつらと、おれの立場は逆だったかもしれないのだ。
アカデミーの仔猫は四匹か・・・・
カカシ・イルカ・ヤマト・リュウガなんて、名付けるのはどうだろう?
だめだ・・・ そんなことをしたら、リュウガだけ、あいつらに殺されてしまう。
イルカの傍では、忘れていた感情がどんどん甦って来る。
猫の名前で悩むなんて、人間らしい感覚じゃないか? 明日イルカに聞いてみよう。
死姦、輪姦など、嫌悪感もたれた方、ゴメンナサイ。 信じて下さい、イビキも好きです! 聖