忍びの里 16   @AB CDE FGH IJK LMN P




「お前らが、表をウロチョロ出来るのは、イルカのおかげだな。」
「はい、そうです。 その気になれば、イルカさんは何時でもボクらを殺せますから。」

「俺は、尊敬するあなた方を殺したりしません! ただ、オレが誰かに殺されたり、
 無意識で憎んでしまうかもしれない可能性があります。 そうしたら、おふたりは・・・」

「・・・分かっている。 それ以上自分を責めるな・・・ 間違ったのはこいつらだ。」
「政木、どこまでも理解力がある奴だよ、お前は。」

カカシとヤマトの目が、やり直せるのなら・・・と。 後悔の懺悔を物語っていた。
確かに潜入の暗殺任務にかけては、イルカは最適だ。 だが中忍だ、他で命を落とすかもしれない。

イルカの暗殺任務に影の護衛がいたら、それこそ最強だ。 だからこそ、今も成功率100%なのだ。
『毒』に取り込ませた、より強い者に・・・・ イルカを守らせればいいだけだ。
取り込まれた者は、自分達の命にかかわることだから、死に物狂いで守るだろう。


どこまでが、三代目の計算だったのか・・・ 亡くなった今となっては、確かめるスベはない。
三代目の一番は里だが、ヤマトもカカシもイルカも、本当に愛されていたのは間違いない。
死にたがりのカカシ。 存在を自己否定するヤマト。 犠牲心の塊のイルカ。
三つ巴にする事により、互いを必要とさせた。 いずれそこに情が生まれるのを見越して・・・。

里の深層の秘密を知っても、おれの木の葉への忠誠心は変わらない。
目には目を。 歯には歯を。 きれいごとを語るには、それ以上に汚れなければならない。
忠誠心をみせればそれに見合う何かを、必ずくれる。 逆に里に害をなす者には、とことん容赦がない。
忍びが、人間らしく擬態出来るのは、この里だけだ。

「カカシ・・・一年前のあの言い争いは、人柱力ナルトを・・・ ガキを利用したのか?」
「ほんと、お前、ムカつく!! ズケズケ言いすぎ!」
「カカシさん?」
「政木上忍にかかったら、先輩もかたなしですね。」

やっぱりそうか。ココまでの経緯を考えると、当然そう思うだろう。
ナルトはイルカの愛情を一身にあびて、本当の心の強さを身に付けた。
イルカがカカシに腹を立て無意識でもクローンを攻撃すれば、カカシは無事では済まない。

イルカは木の葉の暗部の命としか思っていない。 それはどんなに苦しいだろう・・・
カカシは試したんだ。 イルカの脳内にある、自分のクローンが攻撃されるかどうかを。

誰よりも傍にいて、長年、イルカを間近で見続けて来た。
カカシやヤマトは、おそらくイルカの色暗殺任務を、常に影から護衛していたはず。
木の葉の忍びや、里に対しての、菩薩のような柔らかな愛情・・・
敵やターゲットに対しての、冷徹極まりない氷のような激情・・・

たまらなく惹かれたに違いない。 蜜の味は知っているから、抵抗は出来ないだろう・・・
これで死んでもいいと、イルカを抱くたびに生き残り・・・・ そして思い知る。
自分達が生きているのは愛などではなく、木の葉の為に生かされているんだと。
オレももっと早くに出会っていたら、こいつらと同じ間違いを犯していたに違いない。



イルカの愛情が少しでも自分にあるのか・・・ よっぽど思いつめていたんだろう。
だからその当時、なによりもイルカが大切にしていたナルトを使って、試した・・・
三代目もヒヤリとしただろう。 だが、あの時カカシが無傷なのが、何よりの証拠。
里の人柱力は最終兵器だ。 イルカの中で、自分の命は最終兵器より上だと、証明してみせた。

カカシほどの男が、いつまでも気にする事ではないと思っていたが、極めて重要な事だった。
命をかけたあの言い争いがあって、奴は多少なりとも安心できたのだろう・・・
もしずっと思いつめたままだとしたら、この先いつか、無理心中を強行したかもしれない。
まあ、ヤマトがそれだけは、させないと思うが。 今ならもちろんおれも、止めに入る。



死にたがりだったカカシ。 今迄、何度イルカを殺して自分も死のうと思ったのだろうか。
先に肉欲に溺れて正解だったかもしれない。 温かい肉は、少なくともカカシに生を実感させた。

自分の存在を恐れていたヤマト。 イルカに木の葉の忍びだと肯定してもらえて救われただろう。
もし自分が里に害をなしたら、イルカならためらわずに殺してくれる。 奴は死を甘受しているんだ。

亡き三代目に聞いてみたかった。 ここまでの未来をあなたは予想していたんですか、と・・・