忍びの里 12
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ボクは・・・ 敵に突っ込んで行って・・・それから・・・どうしたんだっけ??
チャクラ切れかな・・・ 体が重いや・・・ 意識はあるのに目が開けられない・・・
声が聞こえる・・・ ボクの事を話しているのか・・・ 三代目と、もう一人は分からない・・・
「暗部での、こ奴の活躍は、目覚ましい。 行く行くは、部下を持たせようと思おておる。」
ボクは大蛇丸の実験体。 里抜けをした大蛇丸によって、ボクは人工的につくられた・・・
初代様の血を人工的に受け継がせる・・・ あの人体実験で生き残ったのはボク一人だ。
他の子供は腐ったり、溶けたり、みた事もない異生物になったりして、みんな死んだ。
その事実はどうやっても覆せない。 この体にいつ何が起きるか誰にもわからない。
「ちと無理し過ぎての、チャクラ切れを起してへばっておる。
ワシがずっと付いとる訳にも行かん。 お主ならば安心して世話を任せられる。」
いくら初代様の血が大事でも、本当なら、そんな危ない生き物の命を助けたりしない。
ボクは存在するだけで、里の脅威。 里の為を思うなら処分するのが長の務めだ。
屋敷で保護なんてしない。 忍びの訓練なんかさせないし、ましてや火影直属部隊になんて・・・
ボクを認めてくれる三代目の信頼を裏切らない為に、ただがむしゃらに働いただけだ。
「・・・こ奴は大蛇丸の実験体なのじゃ。信用できる奴で無いと、任せられん。
お主の次の任務までは三日。それだけあれば充分じゃ、こ奴の事を頼めるか?」
ボクの面が外されている。 この人が三代目にかなり信頼を置かれている証拠だ。
暗部の面は呪印。 肩の刺青と連動している。 木の葉を裏切らない様に細工されている。
三代目の許可なく里内外で面を体から離すと、肩の刺青が反応して、肩から上が吹き飛ぶ。
もちろんボクは、盲目的に三代目を慕っているから、そんなもんなくても裏切らない。
「うみのイルカ、中忍です。これから三日間、お世話させていただきます。」
ボクの目は開かない。 声も出せない・・・ なのに彼は、ただ寝ているだけのボクに挨拶をした。
何かする時には必ず声をかけてくる。 下の世話、体を拭く時、点滴を打つ前後、髪をとかす時・・・
声から判断すると男性。 年は・・・そう離れていなさそうな感じがする。
チャクラ切れを起しても、ココまで体が動かない事はなかった・・・ ボクは一体どうしたんだろう?
「そこの屋根の下に、燕の巣があるんですよ。ピーピー聞こえるでしょ?
むちゃくちゃ可愛いですよ。早く目が覚めて、見て下さいね?」
二日目も体が動かなかった。 けれどやっぱり、彼は話しかけてくる。
燕の巣、そんなことイチイチ気にしてなかった。 耳を澄ますせばピイピイと、か細い鳴き声がする。
こんなにリラックス出来た事あったかな・・・ 昨日もぐっすり熟睡できた。 彼の傍は心地いい・・・
彼・・・イルカさんが、ボクの体を拭きながら静かに話しかけて来る。
「こんなになるまで・・・あなたは、里の為に頑張っているんですね・・・
初代様の血が混ざった、大蛇丸の実験体の生き残り・・・ だから? そんなこと関係ないですよ。
あなたは立派な木の葉の忍びです。他の誰が何を言っても、火影様はあなたをそう思っていますよ?
あと、もちろん俺もそうです。早く元気になって下さいね・・・」
ボクが一番欲しかった言葉を、イルカさんはくれた。 大蛇丸の実験体じゃない、木の葉の忍びだと。
何かが僕の中にじわじわと溢れて来る。これは・・・涙だ・・・今ボクは泣いている・・・
それに気付いたイルカさんは、そっとタオルで涙をぬぐってくれた。
「怖い夢を見ているのかな・・・実験の夢?・・・かな・・・もうあんなこと忘れましょう、
今のあなたには、これっぽちも必要ありません。大丈夫、ただの夢ですよ、大丈夫・・・・。」
そういって、何度も何度も涙を拭いてくれた。 ピクリと指が動く。 目にも光が入って来た。
チャクラの流れが体中を駆け巡る。 徐々に体が動いてきた。 ボクの目に一番に飛び込んできたのは、
泣きながらボクの涙を拭いてくれていた、イルカさんの嬉しそうな顔だった。
「よかった、回復したんですね? はじめまして、俺は・・・・」
知ってる。うみのイルカ、中忍。 火影様の信頼厚い、心地いい忍び。
なんだ、この人、自分も泣いて・・・ もっと感情を抑えなきゃダメだろ、忍びなら・・・
そう彼を批判している心とウラハラに、ボクはイルカさんを抱きしめていた。
彼は黙って、子供にするように、ポンポンと、ボクの背中を叩いた。
「泣く子も黙る暗部が・・・ こんな泣き虫だったなんて知りませんでしたよ?」
「くす! あなたには負けます。 ボクは・・・ 他人の為に泣いたりはしませんから。」
どちらともなく、笑った。 ヤローふたりが・・・・ 泣きながら、笑い出した。