紅葉の痣 11
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大丈夫ですよ。 そんな事にならない様に、今、ウチの忍びが最上様のお城に向かってます。
実はね? あなたの気持ちに何よりも同調しているのは、三代目火影なんです。 驚きました?
ですから、今動いてくれている忍びと言うのが・・・・ 三代目火影の直轄部隊の長達なんです。
・・・・・・?? そんな忍びを雇うお金がない?? あははは! それは気にしないで下さい。
三代目もあなたと同じ。 我が子の幸せを誰よりも願う父、なんですよ。 過保護なところまで同じ!
昔の事なんて気にしないあなたと違って、三代目は気にしまくりですよ。 そこが唯一、違うかな?
・・・・俺のこの顔の傷、目立つでしょう? 大昔、三代目が誤ってつけた傷なんです、実は。
いたずら小僧のガキにはいい薬になりました。 実の両親もそう言ってたぐらいなのに。
そのせいで三代目は俺に罪悪感があるんです。 桁違いの生活費を振り込んだり・・・・ ね。
そういう時は物に還元してチャラにします。 スンゴイ高価な食材で料理やお弁当を作り食わせます。
それからよく“湯治に付き合ってくれんか、イルカや”と、お誘いを受けたりもするんですが。
これも、俺が温泉大好きだからですよ。 なにかと俺に償いをしたがるんです、もう昔の事なのに。
えー だからですね。 暗部の部隊長と補佐曰く・・・・・ 俺がお願いしたから、らしいですよ?
我里の誇る忍び二人の雇い料は、なんと無料!! 受け付けたのが俺で・・・・ ラッキーでしたよ?
・・・・ぶっ! なんちゃって! あはは! まあ、もう少し待っててください、あの二人なら・・・・
あっという間に娘さんを取り戻して来てくれますから。 信じて待っていましょうね?
「すみません、余計な事を言ってしまったばかりに。」
「???」
「痣があったか、と聞かれた時です。 我が子とはいえ、娘の胸をマジマジ見た事なんてなくて・・・・」
「くす! そりゃそうですよ。 ハッキリと形まで即答したら、キモいです。」
「き・・・・ きもい・・・・ ははは・・・・ でも一瞬でも娘を手放そうなどと・・・・・」
「あー それなんですが。 すみません、俺が勝手に任務を続行してもらったんです。」
「・・・・・・・・。」
「あなたの様な人が育てた娘さんは・・・ 目先の欲に目がくらむ人じゃないと思いましたから。」
「イルカさん・・・・・火影様に感謝を・・・・・ 木の葉に来て・・・ 本当に・・・・ うぅぅ・・・・」
・・・・・・。 調べ上げた末、全部が理想通りの環境だったんだろうな。 姫に似ている子供。
母親がすでに死亡していて、あまり裕福でない家庭。 さらにその女は過去を消した女だった事。
全部が、最上本家の孫娘を作り上げる上で、最高のお膳立てだった訳だ。 それで痣を移植したら完璧。
もし娘を返してくれと言ったとしても、痣を移植した後ではもう遅い、何を言っても無駄。
偽物が本物になるのだから。 痣のなかった娘は存在しない、ならばこの子は正真正銘最上の子、と。
でも拉致されたのは今日。 拉致を実行した忍びの里からの確かな情報も得た。 移植もまだのはず。
娘を予定通り手に入れて安心しきっているだろう。 火の国から民を攫った事などバレてもいないと。
大殿である最上様か、本家の血筋の誰かからか。 あとは紅葉型の皮膚を移植するだけだから。
事故であっても子を亡くした親なら、突然子供がいなくなる苦しみを分かるはずなのに・・・・・
最上の大殿は、そういう心の痛みが分からないみたいだ。 自分の痛みを他で誤魔化そうだなんて。
あの子は最上本家とは何の関係もないんだ。 大名家に残る理由なんてこれっぽっちもない。
「あはははは!! そうか! それって“三日はしか”にかかると出る赤い斑点ですよ。」
「・・・・・・。 お恥ずかしい・・・・ 男手ひとつ、赤子がかかる病気の知識もなくて・・・・」
「特に胸周辺に、斑点が出たんですね? あれは吃驚しますよね、体中・・・・・ ??」
「イルカッ! イルカが・・・・ じゃないかったイルカの式が・・・・ うー ややこしい!!」
「あ、もしかして、式を持ってきてくれたの?」
「・・・・だって、お前脅して行っただろ、思いっきり。」
「あははは! だってこれ、実はオフレコ。 無料奉仕してくれてるんだよね、内緒だぞ?」
「お、おう! じゃぁな! (黄金コンビが・・・ ただ働き?! イルカって・・・・・) 」
・・・・・・・・・・・・・。 ほーら、思った通りだ。 しかし凄いなぁ・・・・・ 桁違い。
二人は大殿の先手を打って、発見された孫娘は偽物かもしれない、という噂をばらまいたそうだ。
人の噂、っていうのはあり得ない速さで広がる。 一人が十人に喋れば、その十人がまた喋る。
あれよあれよと言う間に、真相を確かめろ、傷心の大殿の弱みに付け込むのは許せん! ってなる。
側近の家臣か、分家の者かが押し掛けて、動かぬ証拠だと言われてる紅葉型の痣を確認するだろう。
そして噂の胸にあるという痣はどこにも確認されず、かの少女は真っ赤な偽物であると判明する。
・・・・・大名家の姫の忘れ形見を騙った偽物の孫娘は、その嘘の罪により処刑された・・・とか?
こんな感じになるんじゃないかな。 まあ、これはあくまでも俺の予想。 表向きはそんな感じで。
暗部の二人が全部丸く収めてくると思うよ。 なんてったって、三代目の自慢する二人だもん。
「・・・・・・多分もうそろそろ・・・・ 帰ってきますよ、ウチの黄金コンビが。」
「?! そんな! だって、今さっき・・・・・・」
「はぁ・・・・ ほんと、凄いですよねー。 同じ木の葉の忍びとして、誇りに思います。」
「・・・・・・なんと・・・・ なんとお礼を言えばいいか・・・・・・」
「確かにあの二人の忍びは桁違いで凄いです。 でも娘さんの危機を救ったのはあなたですよ。」
「・・・・・・・そんな・・・・ 私は娘を手放そうと・・・・・」
「木の葉にヘロヘロの雑草を持参したから。 早期対策が取れたのは、全部そのおかげです。」
「・・・・・・・・・くっ。」
「“赤ちゃんを助けて” 今度こそ亡き奥様との約束を守れましたね。 娘さんを守ったんだから。」
「ぅぅ・・・はい、はいっ! ・・・・ぅっっ・・・・」
あなたの思いに打たれた三代目。 自分にも娘がいるからと協力してくれたイノイチさん。
本当に全部・・・・ 人の子の親の思い。 三代目には罪悪感で甘やかしてほしくなかったけど。
そういえば依頼人が最初、混乱していろいろ話してくれてた。 もう自分は後悔したくないと。
そだよな、死んでからじゃ親孝行できない。 後で三代目に・・・・ 素直にお礼を言おう。
忍びなんて職業柄、誰がいつどうなってもおかしくないんだ。 それは三代目も俺も同じ。
本人がこうしたい、と思ったら。 自分が嫌だからと頑なに拒否するのではなく・・・・・
したいようにさせてあげるのだって親孝行かもしれない。 それで三代目の気が済むのなら。