紅葉の痣 4
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部下達がそう呼んでるから、すっかり暗部内での呼び名が“イルカちゃん”で定着してるけど、雄。
三代目の妾は全員がボク達暗部の護衛対象。 花街の稼ぎ頭の雌だろうが、同じ忍びで雄だろうが。
まあ、他のお妾さん達の様に昼夜の警護は必要ない。 就寝中に家の外で待機してればいいから楽。
ボク達はいわば、三代目の持ってる最高の武器な訳だ。 それを気前よく、ポンと出しただけの話。
めったにない愛人のおねだりに全力投球で対処する、という姿勢を見せたいんだよ、イルカちゃんに。
そう、彼はあんまりお願いをしないらしいよ? 立場を利用しないという点も、なかなかの人格者だね。
ボク達暗部は護衛対象とは話さない。 今回は三代目のお許しも出たから、更に彼の人となりが分かる。
任務受付所に配属になってるらしいけど・・・・ えっと・・・・ あ、いたいた、イルカちゃんだ。
さすがに肝が据わってる。 ボク達二人を見ても委縮しないとは。 そうでないと火影の妾は務まらない。
どうも、はじめまして。 この面を見てご存知かと思いますが。 暗殺戦術特殊部隊の部隊長と補佐です。
今回の任務はボク達二人が請け負います、異存は有りませんね? あ、そうそうこれは言っとかないと。
「ボク達への報酬は気にしないでいいよ。 三代目の勅命だからね。」
「三代目は我が身に置き換えたみたいでサ、かなり力が入ってるの。」
「我が身に・・・・ 三代目なら絶対・・・・ うん、共感してくれると思った・・・・・」
「暗部の長二人が任務受付所に顔を出すと多少悪目立ちしますが、そこは勘弁してください。」
「海野中忍に力になってやってくれと言われて、三代目は奮起してるのヨ、察してあげてネ?」
「そ・・・ そんな、異存なんて!! 暗部の司令塔が任務に就いて下さるとは思いもせず・・・・・」
おー イルカちゃんが感動してる。 三代目、パパ株の上昇は間違いないですよ、よかったですね。
自分は任務受付所勤務の中忍、海野イルカです! と自己紹介してくれたけど、そんな事は知ってるよ?
・・・・なんて決して言わない。 暗部による三代目の愛人警護任務は、本人達には内緒だから。
どうぞよろしく、とキリリとご挨拶。 ボク達は“そこらの忍びじゃないのよ”な感じで手を出す。
「・・・・・はっ! すみません、こちらこそよろしくお願いします!」
「「迅速に対応しますので、ご安心を。」」
「 ・・・・・・か・・・・ かっこいいー ・・・・・ 」
「「・・・・・・・くすっ!」」
ボク達の差し出された手を慌てて握り返したイルカちゃん。 いい感じで挨拶ができた。 うん、上出来!
ふふ、ちゃんときまってた? 三代目、イルカちゃんって、めちゃくちゃ表情が豊かな忍びですね。
そういえば部下達も言ってたな・・・・ 困ってる人をほおっておけないような、いい子です! って。
これだけ素直に反応されれば、確かに年は離れてても楽しめるかも。 なんてちょっと、思っちゃった。
依頼人はショックが大きく、木の葉病院で心身ともに落ち着かせている最中だそうだ。
詳細はイルカちゃんが全部知っているから問題はない。 まあ、主にイノイチさんの情報だけどね。
イノイチさんがイルカちゃんに個人的に頼まれて、依頼人が持参した雑草の記憶を覗いてみたら・・・・・
忍びに待ち伏せされて拉致される娘さんのビジョンが見えたそうだ。 で、今回の救出依頼に繋がった。
きっとイルカちゃんお得意の“ほっとけない病”が出たんだろうね。 なんて気心の優しい忍び。
ボク達は花街で遊びまくってるし、それこそ色んな花を摘まんで味見してるけど。 男は経験ないな。
人の内面なんて気にもしてなかった。 イルカちゃんは、内面が目に見えてにじみ出てる様な人物だ。
う〜ん・・・・・ やっぱり三代目のお妾さんは、人間が出来ている・・・・・ さすが海千山千の爺だ。
別に? 羨ましくはないよ? だってボク達は若いんだし、これからだって出会いはたくさんある。
・・・・・とか、誰に対してか言い訳をしたくなる。 素直な感情はボク達忍びにとって気持ちがいい。
騙し合うのが忍び、お互いの腹を探り合い、裏読み合戦をするのが仲間であっても普通だから。
じゃぁ、イルカちゃん・・・・・ じゃなかった、海野中忍。 山中イノイチ情報を詳しく教えてくれる?