紅葉の痣 7   @AB CDE GHI JKL MNO PQ




よし、完璧! 万事上手くいきましたね、カカシ先輩。 取引材料ナシ、木の葉優位の交渉は。
正規の上忍達が交渉を持ちかけたとしたら。 そしたら・・・・ 何かと引き換えだったでしょうね。
まあ、この里の連中が欲しがる情報とか、そんなのはいくらでも用意できますからね、情報部なら。

まず、里長の喜びそうな情報を選別、その中でも特に、木の葉にとって痛くも痒くもないモノ。
水雲の里が喜ぶ木の葉には用無しの情報を、Aランク任務の重要アイテムとして用意する。
任務依頼書を新しく作成して、待機所の上忍数名に声をかけて、今までの経緯を説明して・・・・・
イルカちゃんがボク達ならより迅速に動ける、って喜んだのは、そういう手間が省けたからでしょうね。

お目当ての情報も聞けたし! とっとと娘を奪還して里に帰還しましょう。 で、また感動させるんです。
信じられない、まさかその日の内にだなんて! さすがはパパの自慢の忍び、凄いっ! って思うよ?
こんなに素晴らしい忍び達を動かしてくれて。 パパ、ありがとう! と感動しまくりだね、絶対。


「三代目、絶対メロメロだヨ? こんな仕事がらみのお願いでさえ、アレだもん。」
「そうなんですよね。 イルカちゃんって三代目にご飯作ってあげたりしてるくせに・・・・」
「「何気にツレないお妾さん。」」

そうそう、自宅に三代目を招いて手料理を振る舞ったり、仲良く温泉旅行にでかけたりするけど。
温泉旅行に行っても温泉饅頭を自分で買っちゃう。 職場仲間に配るものだから、かもしれないけど。
よくできた妾だと思うよ? それはパパ側からすると淋しいよね、愛人特権のおねだりが、ほぼ皆無。
三代目からすると、お外で食べた〜い、お土産買って〜、って言われたいと思うよ? パパだもん。

「本当は火影屋敷から通わせたいだろうネ、受付にも。 でもイルカちゃんの立場を考えたら・・・・・」
「そうでしょうね。 自分ちに囲って・・・・ 好きなだけ料理も作らせたいはずですよね。」
「・・・・・男で忍びでお妾さん、なんて。 イルカちゃんって面白いネ。」
「・・・・・なかなかあそこまで自分の境遇を甘受できないと思いますよ?」

「ダネ。 心ないヤツらは、色んなコト言ってくる、大変だーヨ。」
「三代目火影の心を支える、これは立派な事だと思います、ボク。」
「パパはあと何年生きられるか分からないケド、そんなの既に覚悟の上、だろうネ・・・・・」
「・・・・カカシ先輩、ボク改めて思いました。 イルカちゃんって・・・・・ 強いですね。」
「・・・・ウン。 そんな様なそぶりは欠片も見せない。 見上げた根性だヨ、ホント。」

三代目の世話をするのは好きみたいなんだけど、自分が世話されるのは嫌みたいなんだよね。
パパとしては、おねだりされたり、頼りにされたりが嬉しいのに。 欲がなさ過ぎるのも悲しい。
だって三代目は老い先短いお爺ちゃん。 いつコロリと逝ってもおかしくないお年頃な訳だよ。
・・・・・・きっと。 自分の生きている内に、め一杯甘やかしてあげたいんじゃないかな・・・・

なんて。 そんなこんなを語りつつ、水雲の里を出発しようとしたボク達を呼び止める声が。
あれは・・・ ボク達がこの里に到着した時、すっ飛んで来て・・・・ 里長の家に案内してくれた忍びだ。





「はぁはぁ・・・・・ よかった・・・・ 間に合った・・・・」
「?? ナニ? ナンか用? もう交渉は済んだヨ?」
「これからボク達は任務の仕上げに行くところです。」
「お願いです! 私とも取引してくださいっ!」
「「??」」

“木の葉にバレたのだ、血の犠牲は必須。 木の葉の暗部を見たら覚悟を決めてくれるだろう”
と長は私に言いました、でもあなた方が里の誰にも手出ししないと誓ったと聞いて・・・・・
ハアハアと、実に忍びらしくない息の切らせ方をして、案内役の忍びが言った。 彼は下忍だね。

確かにボク達は長に、この情報と引き換えに里の誰にも手出ししない、と誓いましたよ? それが?
・・・・・・・この度の依頼、水雲の里が引き受けた任務依頼は二つ? え? どういう事でしょう。
一つはあの娘の拉致、ですよね? 水の国の大名から頼まれたという・・・・ もう一つあるんですか?

「依頼人は同じく水の国の最上〈もがみ〉様です。 医療忍者による移植、これがもう一つ。」
「「・・・・・・・・・・。」」
「拉致したあの子に・・・・ 他人の皮膚を移植してほしい、というモノです。」
「「顔を変えるつもりか・・・・・」」

「いえ、それはなんとも。 先に城内に招かれてる医療忍者しか、詳細は・・・・。」
「・・・・・という事はサ。 里長は切り捨てたんだネ、その医療忍者を。」
「はい、木の葉の暗部を手ぶらで帰す訳にはいかない、と・・・・・」
「ボク達なら、城でそいつを見つけしだい殺す・・・・・ そう思われてたのか。」

しまった、脅しが効き過ぎた。 里長はもう一つの任務内容をあえて口にしなかった。 ・・・・それは。
他人の皮膚を移植してほしい、という依頼。 この里の者には一切手出ししないと約束をしたけど。
交渉成立以前に里を離れていた別の所にいる忍びに対しては、その約束は無効だ・・・・ という事。

・・・・この里の全員の命を救う為なら、忍びの一人ぐらい犠牲にしてもいい、そう思ったんだ。
先に城内に招かれているというその医療忍者も、ボク達の姿を見たらきっと覚悟を決めただろう。
木の葉に火の国での拉致がバレたと悟るはず。 己が首一つで、木の葉の怒りを鎮められるのならと。

でもその話を聞いても、この下忍はボク達を呼び止めた。 ・・・・・医療忍者も見逃してください。
もう一つ情報を流します、ですからウチの里の医療忍者の命は奪わないでやって下さい、って事だ。
自分とも取引してくれ、か。 木の葉の暗部だと分かっていても、思い切って話しかけてきた下忍。
もしかしたら・・・・ 彼の近しい人物なのかもしれないな、先に潜っているというその医療忍者は。

「「心配しなくていい。 言った通り、水雲の里の者には手出ししない。」」
「・・・・・・ぁ・・・・・ ありがとうございますっ!!」
「「・・・・・・・じゃぁ。」」


城にどこの忍者が何人潜んでいようが、そんなのボク達には関係ない。 迅速かつ確実に、だから。
任務先で他里の忍びを発見したからといって、意味もなく殺したりしないよ。 時間の無駄だし。
・・・・・・ボク達どんだけ極悪非道な忍びだと思われた訳? まあ、大げさに脅したのは事実だけどね。