紅葉の痣 5   @AB CEF GHI JKL MNO PQ




今日は学び舎での修業が半日で終わる予定だったらしいです。 でも娘さんの戻りが遅くて心配に。
少し遅れても、それは今日が自分の誕生日だったからだと思い当たって、待っていたらしいんです。
学び舎までの通学路を、家側から辿ってみたりしながら。 そこで道端に散乱した雑草を見て不安に。
もしや娘に何かあったのではないか、なぜだか分からないが胸騒ぎがする、と里を訪ねて来たのです。

俺はその雑草をイノイチさんに見てもらう事にしました。 まだかろうじて枯れてなかったので。
イノイチさんの話だと、娘さんを待ち伏せて拉致したのは、その身のこなしからどこかの忍び。
チラリと見えた額当てのマークは、水雲〈みなぐも〉の里。 今の所、分かってるのは以上です。

「・・・・じゃ、オレ達がまず向かうのは、水雲の里だネ?」
「依頼人の娘をボク達がその里から救出してくれば・・・・・・」
「待って下さい、多分、なにかしらの裏があります。」
「「・・・・・・・どこか不信に思ったの?」」

「火の国の山奥にある小さな村の、たった一人を待ち伏せする必要があるものでしょうか?」
「・・・・・・・水雲の里の忍びは、ただ依頼されて娘を攫っただけ、ってコト?」
「だったら・・・・・ 水雲の里にはもう、その子はいない可能性があるね・・・・・」
「思い切って正面から堂々と任務協力を願い出てはどうでしょうか。」
「「・・・・・・。」」

これはお二人が来て下さったから思いついたんですよ。 木の葉の暗部の部隊長と補佐が動くなら、と。
捜索、交渉、救出。 本当は4マンセルのAランク任務扱いで、上忍待機所へ回そうと思ってました。
でもお二人なら交渉するにしても何かと有利です。 木の葉の追手が暗部、絶対優位に立てますよ。

一人だけを狙って拉致したんです。 しかも、まだ生命力を保っていた雑草のおかげで偶然発覚。
本来なら何も証拠は残らなかったはず、年若い娘が家出しただけ、そうなる予定だったんでしょう。
それは、木の葉の目がある火の国で派手な騒ぎは起こせない、という事を考慮してだと思います。

そうすると導き出される答えは一つ。 人物を特定した拉致を任務依頼で受けた、としか思えません。
任務依頼ならば、その娘さん本人が目当てだから、殺されるような事はないはず・・・・ です。
まさか自分達の行動が雑草によって木の葉に伝えられる事になるなんて、想像もしていないでしょう。

「だから“木の葉は気づいているぞ”という態度で任務協力を強要すれば・・・・。」
「木の葉を敵に回したくない水雲の里は情報提供してくれる、って訳ですか。」
「ま、自慢じゃないケド。 一応オレ達の名は知れ渡ってるしネ?」
「はい。 だから正規の上忍が行って交渉するよりも、効果的だと思いました。」

「ンー。 了解! バッチリ吐かせてくるヨ。」
「そしてその足で娘さんを取り戻してきますね。」
「・・・・・・・ちょっと俺、今感動してます。」

「「あははは! じゃ、何か分かったら式飛ばすから!」」
「はいっ! 行ってらっしゃいっ! 部隊長、補佐・・・ ご武運を!」
「「・・・・・・うん。」」


はぁ・・・・・ 凄い貫禄だったなぁ・・・・・ なんかあの二人の周りだけ、空気が違ったもん。
それにしても、まさかのまさかだ。 三代目がご自分の直轄部隊の長二人を動かしてしてくれたなんて。
あの二人が言ってたけど、本当かな? 俺が、三代目に力になってほしいと頼んだからだ、って。

もしそうなら。 三代目、俺に対して過保護すぎです。 俺は何も特別扱いしてほしい訳じゃない。
どっちかというと、特別扱いしないでほしい、と思う。 ・・・・・・・けど。 今回は素直に感謝だ。
だって暗部の部隊長と補佐だぞ? 暗部の司令塔、他里の忍びが串刺しコンビと恐れる黄金コンビ。

そうか。 ・・・・俺がお願いしたら・・・・・ 三代目は嬉しいのか。 ・・・・・なんだかなぁ。
特別扱いは嫌だって思ってたけど。 三代目がそれで喜ぶならいいか。 甘えてみるかな、たまには。